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平成16年広審第88号
件名

漁船聖丸転覆事件(簡易)

事件区分
沈没事件
言渡年月日
平成16年12月14日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(黒田 均)

副理事官
鎌倉保男

受審人
A 職名:聖丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
水没

原因
気象・海象に対する配慮不十分(帰航を一時見合わせなかったこと)

裁決主文

 本件転覆は、帰航を一時見合わせなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年1月23日02時30分
 山口県端島南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船聖丸
総トン数 1.1トン
登録長 8.16メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 40

3 事実の経過
 聖丸は、船体後部に操舵室を有するFRP製漁船で、A受審人(昭和60年7月四級小型船舶操縦士免許取得)ほか1人が乗り組み、刺し網漁の目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成16年1月23日01時30分山口県屋代島北岸を発し、北北東方約8海里にある同県端島東岸沖合の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、発航に先立ち、テレビで天気予報を確認し、山口県東部に警報は発表されていなかったものの、風雪注意報を強風波浪注意報と勘違いして認識していたところ、広島湾南部を北上して目的地まで2海里に接近したとき、風向が次第に南から西に変わったうえ、風速が毎分7ないし8メートルに増勢し、波高も約1メートルに高まってきていることを認めたものの、漁場が間近になっていたことから、そのまま北上を続けた。
 02時00分A受審人は、端島の島陰で風波の影響が少ない漁場に到着して直ちに投網し、同時05分から約20分かけて揚網を行い、約1,000キログラムの漁獲物と網を前部甲板に積み、操業を終えて同漁場から帰航することとしたが、強風でもなんとか航行できるものと思い、島陰を離れて横波を受けることとならないよう、風波が収まるまで島陰で待機するなど、帰航を一時見合わせることなく、帰途に就いた。
 02時28分A受審人は、甲板員を操舵室右舷前部で待機させて1人で操舵と見張りに当たり、山口県柱島島頂(290メートル)(以下「柱島島頂」という。)から298度(真方位、以下同じ。)1.3海里の地点において、針路を207度に定め、機関を回転数毎分1,000にかけて8.0ノットの対地速力とし、手動操舵により進行した。
 A受審人は、端島の南端をかわして西寄りの強い風波を直接船体に受けるようになった直後、02時30分柱島島頂から287度1.3海里の地点において、聖丸は、高起した横波を右舷に受けて左舷側に大傾斜し復原力を喪失して転覆した。
 当時、天候は晴で風力7の西寄りの風が吹き、潮候は下げ潮の末期にあたり、波高は2.5メートルで、山口県東部には風雪・低温注意報が発表されていた。
 A受審人は、甲板員とともに海中に投げ出され、転覆した聖丸の船底にはい上がっていたところ、同日早朝、付近航行中の旅客船に救助された。
 転覆の結果、08時15分聖丸は、柱島島頂から282度1.6海里の地点で水没した。

(原因)
 本件転覆は、夜間、山口県端島南方沖合において、西寄りの季節風が強吹する状況下、島陰で風波の影響が少ない漁場での操業を終えて同漁場から帰航するにあたり、帰航を一時見合わせず、高起した横波を右舷に受けて左舷側に大傾斜し復原力を喪失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、山口県端島南方沖合において、同島の島陰で風波の影響が少ない漁場での操業を終えて同漁場から帰航することとした場合、西寄りの季節風が強吹していることを知っていたのであるから、島陰を離れて横波を受けることとならないよう、風波が収まるまで島陰で待機するなど、帰航を一時見合わせるべき注意義務があった。しかるに、同人は、強風でもなんとか航行できるものと思い、帰航を一時見合わせなかった職務上の過失により、強風下を帰航中、高起した横波を右舷に受けて左舷側に大傾斜し復原力を喪失して転覆する事態を招き、聖丸を水没させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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