(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年3月19日01時15分
瀬戸内海東部 香川県牛島
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第三丸住丸 |
総トン数 |
199トン |
全長 |
55.46メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
588キロワット |
3 事実の経過
第三丸住丸は、船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、新聞古紙約400トンを載せ、船首1.90メートル船尾3.00メートルの喫水をもって、平成16年3月18日17時20分和歌山県和歌山下津港を発し、愛媛県三島川之江港に向かった。
ところで、A受審人は、少ない乗組員数で荷役と三島川之江港を基地とした短い航海が昼夜連続する状況の下で、船橋当直を機関長を除く2人で1航海単位毎の所要航海時間を二分した単独当直体制によって維持し、当直の合間の自由時間を利用して睡眠を取るようにしていた。しかし、自らは高年者ゆえに短時間の就寝の癖や夜間などの当直を前にして例え休憩時間が相当あっても睡眠を容易に取り得ないこともあったものの、居眠り運航の危険性等に対する認識不足から、当直中に眠気を催した際などに当直枠外の機関長を当直補助に活用することや当直を前にしての飲酒を控えること等の居眠り運航の防止措置を十分に講じていなかった。
こうして、A受審人は、出航当日に日中の荷役監督を行い、その後出航してから夕食時に少量とはいえ飲酒しながら食事をとり、さらに予定の夜間当直までの自由時間内に睡眠を取ろうとしたものの、気分の高まりなどの理由で容易に寝付けなかった。そして同日22時30分香川県地蔵埼付近で気怠い体調のまま単独当直に就き、備讃瀬戸東航路を西行した。翌19日00時40分瀬戸大橋の手前にあたる小瀬居島灯台から040度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点で、針路を備讃瀬戸東航路に沿う244度に定めて自動操舵とし、機関を全速力にかけたまま8.5ノットの速力で香川県牛島に向首する態勢で進行した。その後眠気を催すようになったものの、当直枠外の機関長を当直補助に活用するなどの居眠り運航の防止措置が取られないまま、単独で当直を続けているうちに居眠りに陥ってしまった。その結果、瀬戸大橋通過後も備讃瀬戸北航路に向けての転針が行われず、引き続き牛島に向首したまま続航し、01時15分牛島灯標から120度680メートルの地点において、第三丸住丸は、同じ針路速力のまま牛島東岸に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、第三丸住丸は、船首部船底外板に凹損等を生じ、引船の来援を得て離礁して修理された。
なお、その後、単独当直中に眠気を催した際には非番の当直者を遠慮なく起こすことなどの居眠り運航防止の措置が取られた。
(原因)
本件乗揚は、夜間、少ない乗組員数で荷役と短い航海が昼夜連続する運航の下で単独船橋当直体制によって備讃瀬戸を西行する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、備讃瀬戸東航路から同北航路に沿って転針が行われず、牛島に向首したまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独で船橋当直に就いて備讃瀬戸を西行する場合、少ない乗組員数で荷役と短い航海が昼夜連続する運航状況のうえ自らは高年者ゆえに短時間の就寝の癖や当直を前にして睡眠を容易に取り得ないこともあり休息不足や疲労等から、居眠り運航に陥ることのないよう、当直中に眠気を催した際などに当直枠外の機関長を当直補助に活用することや食事時等でも当直を前にしての飲酒を控えることなどの居眠り運航の防止措置を十分に講ずべき注意義務があった。しかし、同人は、単独当直での居眠り運航の危険性等に対する認識不足もあって、当直中に眠気を催した際などに当直枠外の機関長を当直補助に活用することや食事時等でも当直を前にしての飲酒を控えることなどの居眠り運航の防止措置を十分に講じなかった職務上の過失により、出航後の夕食時に飲酒及び当直前の睡眠不足等で、夜間当直を眠気を催したまま単独で続けて居眠りに陥り、備讃瀬戸東航路から同北航路に向かう転針地点に達したことに気付かず、牛島に向首したまま進行して、同島東岸への乗揚を招き、船首部船底外板に凹損等を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。