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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成16年横審第84号
件名

モーターボートケンヨー3乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年12月15日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(小寺俊秋)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:ケンヨー3船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
右舷船尾船底に破口と右舷推進器軸に曲損、右舷推進器を脱落

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年7月24日06時50分
 静岡県伊豆半島南西岸沖合

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートケンヨー3
総トン数 16トン
全長 14.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 441キロワット

3 事実の経過
 ケンヨー3(以下「ケ号」という。)は、2機2軸の推進装置を装備したFRP製プレジャーモーターボートで、A受審人ほか1人が乗り組み、知人3人を乗せ、クルージングの目的で、船首0.5メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成16年7月24日05時20分静岡県静浦港のマリーナを発し、同県熱海港に向かった。
 ところで、A受審人は、平成元年6月に取得した一級小型船舶操縦士免許を同16年5月一級小型船舶操縦士と特殊小型船舶操縦士の免許に更新しており、プレジャーモーターボートの船長として伊豆半島沿岸の航行経験が何度もあり、同半島南西岸には洗岩や暗岩等の険礁が点在することを知っていたが、険礁の正確な位置や水深までは知らなかった。
 A受審人は、同乗者の1人が初めてのクルージングであったので、景勝地が良く見えるよう陸岸に接近して航行することとし、そのため航行予定海域の険礁について正確な位置を確認しておく必要があったが、これまで何度も同海域を支障なく航行し、険礁があれば目視で確認できるから大丈夫と思い、発航に先立ち、マリーナに備付けの海図を精査のうえ陸岸から険礁までの距離を確認するなど、水路調査を十分に行わず、キャビン屋根の暴露部に設置された操縦席で立って操船に当たり、同乗者を同操縦席前方の長椅子に座らせ、伊豆半島南西岸沖の陸岸近くを南下した。
 A受審人は、06時33分半少し過ぎ石廊埼灯台から315度(真方位、以下同じ。)8.3海里の地点に達したとき、針路を147度に定め、機関を回転数毎分2,100にかけ、21.0ノットの対地速力で手動操舵により進行したところ、三ツ石埼南西方約500メートル沖合の水面下に没していた洗岩に向首する状況となったが、水路調査を十分に行っていなかったので、このことに気付かず、原針路、原速力で続航中、06時50分石廊埼灯台から291度2.9海里の地点において、ケ号は、同洗岩に乗り揚げ、これを乗り切った。
 当時、天候は晴で風力2の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、視界は良好であった。
 乗揚の結果、右舷船尾船底に破口と右舷推進器軸に曲損を生じ、右舷推進器を脱落したが、左舷推進装置によって自力で付近の海岸に任意座礁し、マリーナ手配の漁船によって発航地へ引き付けられた。

(原因)
 本件乗揚は、険礁が点在する伊豆半島南西岸沖の陸岸近くを南下する際、水路調査不十分で、三ツ石埼南西方の洗岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、険礁が点在する伊豆半島南西岸沖の陸岸近くを南下する場合、険礁の正確な位置を知らなかったのだから、険礁に接近し過ぎることのないよう、発航に先立ち、マリーナに備付けの海図を精査のうえ陸岸から険礁までの距離を確認するなど、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、険礁があれば目視で確認できるから大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、三ツ石埼南西方の水面下に没していた洗岩に向首していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、右舷船尾船底に破口と右舷推進器軸に曲損を生じさせ、右舷推進器を脱落する事態を招くに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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