(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年3月21日04時40分
沖縄県瀬底島西岸沖
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第七海宝丸 |
総トン数 |
915トン |
全長 |
77.12メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,471キロワット |
3 事実の経過
第七海宝丸(以下「海宝丸」という。)は、海砂採取装置と同揚荷用ジブクレーンを有する鋼製砂利採取運搬船で、船長B及びA受審人ほか4人が乗り組み、平成16年3月20日19時15分沖縄県宜野湾港を発し、同時35分同港の1海里ばかり沖に錨泊したのち、空倉で海水バラスト約1,000トンを積載し、船首2.4メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、翌21日02時30分同錨地を発進し、本部半島と伊江島にはさまれた伊江水道を経由する予定で同県国頭村にある佐手川河口沖合の海砂採取場所に向かった。
ところで、A受審人は、8年ばかり沖縄県周辺での海砂採取及びその輸送に従事しており、ここ4年ほどは、一等航海士として海宝丸に乗船していたものの、B船長の休暇中には船長職を執っていた。
02時35分A受審人は、出航操船を行っていたB船長から引継いで単独の船橋当直に当たり、沖縄島西岸に沿って北上し、03時19分残波岬灯台から265度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点で、針路を瀬底島に向く035度に定め、機関を全速力前進にかけて11.3ノットの対地速力(以下「速力」という。)で自動操舵により進行した。
A受審人は、操舵室内を移動しながら船橋当直を続けていたところ、04時16分瀬底島灯台から215度4.7海里の地点に達し、伊江水道に向けるために針路を015度に転じる予定地点まで約3海里となったとき、周囲に他船を見かけなかった安心感から、短時間のつもりで操舵室右舷後部に設置されたソファに腰を下ろし、その後、ラジオに耳を傾けているうちに眠気を催したが、間もなく転針地点であり、錨泊中に5時間ほど休息をとって疲れを感じていなかったので、居眠りすることはないものと思い、立ち上がって身体を移動させるなど居眠り運航の防止措置をとることなくソファに腰を下ろした姿勢のままでいるうち、いつしか居眠りに陥った。
04時32分海宝丸は、瀬底島灯台から217度1.7海里の地点に至り、針路を015度に転じる予定地点となったが、当直者が居眠りに陥っていて転針が行われず、04時40分瀬底島灯台から230度340メートルの地点において、同一針路、速力のまま瀬底島西岸沖の浅礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船首船底部に破口を伴う凹損を生じたが、バラストを排出しながら満潮に合わせて離礁し、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、沖縄県瀬底島南西方を伊江水道南口に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同島西岸沖の浅礁に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、沖縄県瀬底島南西方を伊江水道南口に向けて航行中、操舵室内のソファに腰を下ろしていて眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、立ち上がって身体を移動させるなど居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は間もなく転針地点であり、錨泊中に休息をとって疲れを感じていなかったので、居眠りすることはないものと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、瀬底島西岸沖の浅礁に向首したまま進行して乗揚を招き、船首船底部に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。