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平成16年門審第101号
件名

漁船明福丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年10月22日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(清重隆彦)

理事官
黒田敏幸

受審人
A 職名:明福丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首船底外板に擦過傷を伴う破口

原因
見張り不十分

裁決主文

 本件乗揚は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年12月3日03時30分
 山口県萩漁港越ケ浜A防波堤灯台南東至近

2 船舶の要目
船種船名 漁船明福丸
総トン数 19.21トン
登録長 16.42メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 404キロワット

3 事実の経過
 明福丸は、ふぐはえなわ漁業に従事する、FRP製漁船で、昭和50年7月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人ほか3人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成15年12月3日03時27分山口県萩(越ケ浜)漁港の嫁泣地区を発し、同漁港北方の漁場に向かった。
 ところで、同地区は、越ケ浜半島の基部北側にあって、陸岸から東方に延びる長さ約250メートルの嫁泣A防波堤(以下、防波堤名については「嫁泣」を省略する。)と陸岸から北方に延びる長さ約185メートルのD防波堤及び陸岸とに囲まれ、防波堤の入口は東方に面してその可航幅は約60メートルであった。そして、A防波堤の東端近くに赤色毎6秒に2閃光の萩漁港越ケ浜A防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)が、D防波堤北端に緑色不動光の標識灯がそれぞれ設置されていた。また、A防波堤の外側及び東端周りには20メートルばかりの幅で消波ブロックが置かれていた。
 A受審人は、土曜日を除くほぼ毎日、操業に従事し、同地区を03時ごろ出港し、17時ごろ入港することを繰り返していたので、同地区周辺の水路事情には精通しており、出航する際は、D防波堤北端の標識灯の灯光を右舷船尾方に見て左舵5度をとり、防波堤灯台の灯光を左舷船首方に望みながら、ゆっくり左回頭してA防波堤の東端を30メートルばかり離して付け回し、港外に出ていた。
 発航後、A受審人は、操舵室右舷側に立ち、機関を適宜使用するとともに、ダイヤル式の遠隔操舵装置を右手で操作し、03時27分少し過ぎ防波堤灯台から227度(真方位、以下同じ。)270メートルの地点に至り、機関回転数を毎分650として3.0ノットの対地速力とし、A防波堤とD防波堤との間に向け、針路を051度に定めて進行した。
 03時29分半少し過ぎA受審人は、防波堤灯台から196度35メートルの地点に達したとき、右舷船尾45度のところにD防波堤北端の標識灯の灯光を見ていつものとおり左舵5度をとって左転を始めた。
 A受審人は、その後、A防波堤東端に著しく接近する態勢で回頭していたが、いつもよりD防波堤北端側に寄り過ぎていたことから、同北端との離れ具合が気になり、右後方の標識灯の灯光を見ていて、左舷船首方の防波堤灯台の灯光を目視するなど、前方の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かなかった。
 明福丸は、同じ速力でゆっくり左転中、03時30分防波堤灯台から135度17メートルの地点において、023度を向首したとき、A防波堤東端周りの消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船首船底外板に擦過傷を伴う破口を生じたが、のち、修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、萩(越ケ浜)漁港の嫁泣地区において、同漁港北方の漁場に向け出航中、防波堤入口付近で回頭する際、前方の見張りが不十分で、防波堤灯台基部に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、萩(越ケ浜)漁港の嫁泣地区において、同漁港北方の漁場に向け出航中、防波堤入口付近で回頭する場合、防波堤灯台基部に著しく接近することのないよう、左前方の同灯台の灯光を目視するなどの、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、いつもよりD防波堤北端側に寄り過ぎていたことから、同北端との離れ具合が気になり、常時点灯している右後方の標識灯の灯光を見ていて、前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、防波堤灯台に著しく接近していることに気付かず進行して防波堤灯台基部の消波ブロックに乗り揚げる事態を招き、船首船底外板に擦過傷を伴う破口を生じさせるに至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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