(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年2月11日15時32分37秒
宮崎県宮崎港
2 船舶の要目
船種船名 |
水上オートバイトレーディング号 |
登録長 |
2.7メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
出力 |
106キロワット |
3 事実の経過
トレーディング号(以下「ト号」という。)は、定員3人のFRP製水上オートバイで、昭和61年11月に四級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が船長として1人で乗り組み、遊走の目的で、遊び友達のB指定海難関係人及びCをそれぞれ後部座席に乗せ、船首尾とも0.3メートルの喫水をもって、平成16年2月11日15時ごろ宮崎港北防波堤西側の砂浜の波打ち際を発進した。
A受審人は、遊走を終え、15時15分ごろ発進地点にト号を止めて便所に行くこととしたとき、操縦に興味を持った同乗者が無断操縦するおそれがあったが、直ぐに戻るつもりで、緊急エンジン停止スイッチに差し込まれたロックプレイトを抜いて機関の始動をできなくするなどして停船時の管理を適切に行うことなく、同号から離れた。
一方、B指定海難関係人は、砂浜に上がり、焚き火で暖をとっているうち、自ら操縦してみたいと思い、周囲を見回してA受審人が見当たらなかったので、同受審人に無断で、C同乗者を誘って後部座席に座らせ、遊走の目的で、15時25分ごろ波打ち際を発進した。
ところで、B指定海難関係人は、水上オートバイの後部座席に乗せてもらったことが過去十数回あり、有資格者と同乗して操縦席に座り、自ら操縦ハンドルを握って操縦したこともあったが、操縦免許を取得していなかったので、単独で操縦した経験はなかった。
B指定海難関係人は、しばらく防波堤の内側水域で遊走した後、宮崎港水門を通過して大淀川に向かうこととし、15時31分47秒宮崎港北防波堤灯台から221度(真方位、以下同じ)1.35海里の地点で、針路を190度に定め、毎時40キロメートルの対地速力で、可航幅100メートルの同水門につながる水路を進行した。
15時32分19秒B指定海難関係人は、宮崎港水門まで170メートルとなる地点に達したものの、操縦がし易いように減速せずに続航し、同時32分34秒同水門の長さ約40メートル可航幅約8メートルで水路方線190度の東側水路の入口中央部に向け、針路を176度に転じた。
B指定海難関係は、同じ針路及び速力で進行中、目前に迫った東側水路側壁防護材を認め、操縦ハンドルを右にとったが、効なく、ト号は、15時32分37秒宮埼港北防波堤灯台から215度1.62海里の地点において、原針路、原速力のまま、その左側前部が同防護材に14度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
衝突の結果、船体に亀裂などを生じ、C同乗者が脳挫傷などを負った。
(原因)
本件水門衝突は、宮崎港において、停船時の管理が不適切で、無資格で操縦されたことによって発生したものである。
無資格で操縦されたのは、船長が、停船時の管理を適切に行わなかったことと、無資格の操縦者が、無断で操縦したこととによるものである。
(受審人の所為)
A受審人は、宮崎港において、遊走後、ト号を波打ち際に止めて同号から離れる場合、無資格者が無断で操縦しないよう、ロックプレイトを抜いて持ち歩き、機関の始動をできなくするなどして、停船時の管理を適切に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、直ぐに戻るつもりで、停船時の管理を適切に行わなかった職務上の過失により、無資格者が無断で操縦する事態を招き、水門と衝突して船体に亀裂などを生じさせ、同乗者が脳挫傷などを負うに至らしめた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。
B指定海難関係人が、無断で操縦したことは本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、本件発生後、小型船舶操縦士免許を取得したこと及び深く反省していることに徴し、勧告しない。