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平成16年広審第61号
件名

モーターボート一心丸かき養殖施設衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年11月1日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(黒田 均)

副理事官
鎌倉保男

受審人
A 職名:一心丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板に擦過傷、ドライブユニット脱落

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件かき養殖施設衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 A受審人を戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年11月25日02時00分
 広島県宮島南西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 モーターボート一心丸
総トン数 1.9トン
登録長 6.74メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 88キロワット

3 事実の経過
 一心丸は、FRP製プレジャーモーターボートで、レーダーはなかったものの、舵輪の左方にGPSプロッタを装備し、A受審人(平成3年6月四級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み、知人2人を同乗させ、採貝藻の目的で、船首0.4メートル船尾0.9メートルの喫水をもって、平成15年11月25日01時50分広島県玖波漁港を発し、同県宮島南岸に向かった。
 ところで、宮島南西方沖合には、玖波港防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から114度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点(以下「基点」という。)、そこから148度480メートルの地点、そこから218度300メートルの地点、及びそこから328度480メートルの地点を順に結んだ区域内に、かき養殖施設が設置され、基点には、同区域の北端を示す灯浮標が設備されており、同区域の南東側、南側及び南西側にも同種区域が設定され、南東側の区域東端などには同様に灯浮標が設備されていた。
 かき養殖施設は、長さ約22メートル幅約9メートル水面上高さ約0.8メートルの養殖いかだが、3メートル間隔で5台ワイヤロープに連結されて1連となり、前示区域内には、4連が南北方向に2列になって設置されていた。
 A受審人は、免許を取得したのち、釣りなどのため、同人の父が所有する一心丸に船長として乗船し、年間20回ばかりの乗船経験を有していたので、宮島付近の水路状況に精通していた。
 A受審人は、操縦席に腰掛けて操舵と見張りにあたり、漁港内を低速力で進行し、同漁港東方のかき養殖施設をかわしたのち、01時57分防波堤灯台から126度1,100メートルの地点において、針路を090度に定め、機関を回転数毎分2,000にかけ16.2ノットの速力とし、前示区域の北端を示す灯浮標を目標に接近し、かき養殖施設と宮島西岸との間を通航する予定で進行した。
 01時58分A受審人は、防波堤灯台から114度1,600メートルの地点に達したとき、右舷前方にかき養殖施設を示す灯浮標の灯火を認めたが、一見しただけで目標に間違いないものと思い、目標の灯浮標かどうか判断できるよう、GPSプロッタに表示された地形を見るなど、船位の確認を十分に行うことなく、針路を同灯火に向け130度に転じて続航した。
 A受審人は、灯浮標を見誤っていることに気付かなかったので、かき養殖施設に向首したまま進行し、02時00分少し前いつものとおり13.5ノットに減速したとき、船首方至近のところに養殖いかだを視認し、とっさに左舵をとったが及ばず、02時00分防波堤灯台から121度1.4海里の地点において、一心丸は、100度に向首したとき、ほぼ原速力のまま、その船首部が養殖いかだに衝突し、連結用ワイヤロープを乗り切った。
 当時、天候は曇で風力1の南西風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、視界は良好であった。
 その結果、養殖いかだに損傷はなかったものの、船底外板に擦過傷を生じ、ドライブユニットを脱落させて航行不能に陥り、巡視艇により付近のマリーナまで曳航され、のち修理された。

(原因)
 本件かき養殖施設衝突は、夜間、広島県宮島南西方沖合において、船位の確認が不十分で、同沖合に設置されたかき養殖施設に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、広島県宮島南西方沖合において、同沖合に設置されたかき養殖施設と同島西岸との間を通航する予定で南下中、右舷前方に同施設を示す灯浮標の灯火を認めた場合、付近には同様の灯火が多数設置されていたから、目標の灯浮標かどうか判断できるよう、GPSプロッタに表示された地形を見るなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、一見しただけで目標に間違いないものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、灯浮標を見誤っていることに気付かず、かき養殖施設に向首進行して同施設に衝突する事態を招き、船底外板に擦過傷を生じ、ドライブユニットを脱落させて航行不能に陥り、マリーナまで曳航されるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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