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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  衝突事件一覧 >  事件





平成16年仙審第48号
件名

押船第二寳榮丸被押台船第一寶榮号被引作業船宝栄7号灯浮標衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年11月18日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(勝又三郎)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:第二寳榮丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第二寳榮丸・・・損傷ない
灯浮標・・・やぐらの傾斜及び太陽電池等

原因
気象・海象(強風の影響)に対する配慮不十分、操船不適切

裁決主文

 本件灯浮標衝突は、強風により風下へ圧流される状況下、両側に養殖施設が設けられた航路内を航行する際、操船が不適切であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年12月4日12時10分
 宮城県石巻港沖合

2 船舶の要目
船種船名 押船第二寳榮丸 台船第一寶榮号
総トン数 19トン 741.60トン
全長   53.50メートル
登録長 11.95メートル  
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 1,204キロワット  
船種船名 作業船宝栄7号  
全長 11.50メートル  
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 180キロワット  

3 事実の経過
 第二寳榮丸(以下「寳榮丸」という。)は、2機2軸を装備した鋼製押船で、昭和52年12月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人ほか6人が乗り組み、作業員2人と魚礁設置位置等を確認するB社社員2人を乗せ、船首部にスラスターとクレーンをそれぞれ備えた鋼製台船第一寶榮号(以下「台船」という。)の船尾凹部に船首部を嵌合して一体とし、魚礁沈設の目的で、台船に魚礁10基120トンを載せ、船首1.5メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、タイヤフェンダーを船首部に取付けた鋼製作業船宝栄7号(以下「作業船」という。)を台船の右舷船尾から曳航し、平成15年12月4日06時30分宮城県石巻港を発した。
 07時45分A受審人は、陸前網地港西防波堤灯台(以下「陸前網地港灯台」という。)から245度(真方位、以下同じ。)2.6海里の地点に設置されている作業用浮標の間近に至り、魚礁沈設地点から移動しないよう、台船の前後左右から作業船を使用して投錨し、クレーンで魚礁10基の沈設作業を行ったのち、10時30分同作業を終えて抜錨し、石巻港に向けて帰途についた。
 ところで、A受審人は、帰航の際、台船の右舷船尾のウインドラスドラムに巻いた直径65ミリメートルの合成繊維製索13メートルを右舷側から繰り出し、同索先端を作業船のタツに取り、同船を曳航していた。
 また、石巻港東部には石巻漁港が設けられ、同漁港東方500メートルの陸岸に石巻漁港導灯(以下「導灯」という。)を設置して入航針路を示し、導灯南南西方1,350メートル沖合に高潮時に没することがある防波堤(以下「外防波堤」という。)があって、その東端付近に石巻漁港第3号灯浮標(以下、灯浮標については「石巻漁港」を省略する。)及び第4号灯浮標(以下「第3・4号灯浮標」という。)を、更にそれらの南方1,780メートルのところに沖第1号灯浮標及び沖第2号灯浮標(以下「第1・2号灯浮標」という。)をそれぞれ敷設して航路(以下「航路」という。)を成し、第3・4号灯浮標と第1・2号灯浮標の中間に航路幅315メートルを示すやぐら形緑色灯浮標とやぐら形赤色の石巻漁港西防波堤II区周囲灯浮標(以下「やぐら形赤色灯浮標」という。)が設置され、これらの灯浮標で示す航路両側近傍に周年の養殖施設が設けられていた。
 発航後、A受審人は、進路を北西に向けて航行し、10時50分陸前網地港灯台から275度4.3海里の地点に達したとき、針路を第1・2号灯浮標間に向く351度に定め、機関回転数毎分1,450の全速力前進にかけ、6.2ノットの対地速力(以下「速力」という。)として自動操舵によって進行していたところ、徐々に西北西風が強くなって右方に圧流され始めたので左方に当て舵を取り、船首を石巻港内の埋立地に向く334度にして保針に努めながら北上した。
 11時31分半A受審人は、手動操舵に切替え、同時50分石巻漁港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から167度1.3海里の地点に達したとき、当て舵を取りつつ船首を330度方向に向け、実効針路を導灯に向く000度に転じて続航した。
 11時52分少し前A受審人は、西防波堤灯台から165度1.1海里の地点に達したとき、右舷船首17度1,750メートルの、外防波堤北側に出航態勢の貨物船を認め、同船が航路内を南下すると予測し、台船が当て舵のため北北西方向に向首して航路を横切る態勢になっていることに不安を抱いたが、バウスラスターと舵を使用すれば右方に圧流されるのを防ぐことができるものと思い、速やかに反転して航路外に至り、沖合で待機するなどの適切な操船を行うことなく、曳航中の作業船も圧流されていることを考慮せず、船首を000度に戻して圧流されながら進行した。
 こうして、A受審人は、同一針路及び速力を保持して北上し、右方に14度ばかり圧流されながら続航中、作業船は、12時10分西防波堤灯台から151度1,500メートルの地点において、やぐら形赤色灯浮標に、その船首が衝突した。
 当時、天候は晴で風力7の西北西風が吹き、潮候は高潮時で、宮城県東部に強風注意報が発表されていた。
 衝突の結果、作業船は、損傷がなく、やぐら形赤色灯浮標は、やぐらの傾斜及び太陽電池等が損傷した。

(原因)
 本件灯浮標衝突は、石巻港沖合において、西北西の強風が吹いて圧流される状況下、両側に養殖施設が設けられた航路内で当て舵を取って北上中、出航船を認め、同船が航路内を南下すると予測し、自船が当て舵のため北北西に向首して航路を横切るような態勢になっていることに不安を抱いた際、操船が不適切で、速やかに反転して航路外に至り沖合で待機しなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、石巻港沖合において、西北西の強風が吹いて圧流されながら航行する状況下、両側に養殖施設が設けられた航路内で当て舵を取って北上中、出航船を認め、同船が航路を南下すると予測し、自船が当て舵のため北北西に向首して航路を横切るような態勢になっていることに不安を抱いた場合、作業船を曳航していたのであるから、同船も圧流されていることを考慮し、速やかに反転して航路外に至り、沖合で待機するなどの適切な操船を行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、バウスラスターと舵を使用すれば右方に圧流されるのを防ぐことができるものと思い、適切な操船を行わなかった職務上の過失により、やぐら形赤色灯浮標を避けきれずに進行して同灯浮標との衝突を招き、作業船に損傷がなかったものの、同灯浮標のやぐらの傾斜及び太陽電池等を損傷させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図1
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参考図2
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