(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年12月11日09時15分
広島県尾道糸崎港
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船清澄丸 |
貨物船第三晃山丸 |
総トン数 |
3,429.89トン |
198トン |
全長 |
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58.957メートル |
登録長 |
97.83メートル |
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機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
2,427キロワット |
735キロワット |
3 事実の経過
清澄丸は、船尾船橋型鋼製セメント運搬船で、広島県尾道糸崎港第4区の、尾道灯台から238.5度(真方位、以下同じ。)610メートルの地点に設置された係船浮標に船首部を、同灯台から236度510メートルの地点に設置された同浮標に船尾部をそれぞれ係留し、248度に向首して無人のまま係船されていたところ、平成15年12月11日09時15分同灯台から238度580メートルの地点において、その左舷船首部に、第三晃山丸(以下「晃山丸」という。)の左舷船尾部が、後方から80度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、付近には約2ノットの東流があった。
また、晃山丸は、船尾船橋型鋼製貨物船で、A受審人ほか1人が乗り組み、空倉のまま、入渠地に回航する目的で、船首1.20メートル船尾2.70メートルの喫水をもって、同日08時50分尾道糸崎港の新浜岸壁を発し、対岸にある造船所の浮桟橋に向かった。
発航に先立ち、A受審人は、清澄丸が前示の状態で係船浮標に係留されていることを知り、その南方約80メートルのところに浮桟橋の北端が延び、入渠地付近の操船水域が狭められていることを認め、また、造船所から浮桟橋付近の水深が浅いので、上げ潮の時期に回航するよう要請があり、尾道水道に東流があることを知ったが、潮流の影響はたいしたことがないものと思い、造船所に対し、引船の支援を要請するなど、潮流に対する配慮を十分に行わなかった。
こうして、A受審人は、右舷係留の状態から機関とスラスタを使用して離岸したのち左回頭し、09時07分尾道灯台から252度1,200メートルの地点において、針路を浮桟橋と清澄丸のほぼ中間に向く088度に定め、機関を微速力前進にかけ、増速しながら手動操舵により進行した。
09時11分A受審人は、西側の係船浮標まで300メートルにあたる、尾道灯台から246度880メートルの地点に達し、潮流に乗じて7.0ノットの対地速力となっていたとき、機関を停止して前進惰力で浮桟橋に接近し、同浮標まで50メートルになったところで同桟橋に向け右舵10度をとったものの、舵効が現れないまま東方に圧流され始めた。
A受審人は、浮桟橋に急接近するので機関を後進にかけ、同桟橋から離れたところで右舵一杯として前進を試みたが及ばず、晃山丸は、148度に向首し、行きあしがなくなっていたとき、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、清澄丸は、左舷船首部外板に破口を生じたが、のち修理され、晃山丸は、左舷船尾部外板に擦過傷を生じた。
(原因)
本件衝突は、広島県尾道糸崎港において、晃山丸が、操船水域の狭められた入渠地に回航するにあたり、潮流に対する配慮が不十分で、浮標係留中の清澄丸に向け圧流されたことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、広島県尾道糸崎港において、操船水域の狭められた入渠地に回航するにあたり、折から上げ潮で、尾道水道に東流があることを知った場合、圧流されて他船に接近することとならないよう、引船の支援を要請するなど、潮流に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、潮流の影響はたいしたことがないものと思い、潮流に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、浮標係留中の清澄丸に向け圧流されて同船との衝突を招き、清澄丸の左舷船首部外板に破口を生じさせ、晃山丸の左舷船尾部外板に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。