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平成16年神審第46号
件名

漁船第二俊丸手漕ぎボート(船名なし)衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年10月27日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(田邉行夫)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:第二俊丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:手漕ぎボート(船名なし)乗組員

損害
第二俊丸・・・右舷船首に擦過傷
手漕ぎボート(船名なし)・・・左舷側が大破して全損

原因
第二俊丸・・・見張り不十分、港則法の航法不遵守、船員の常務(衝突回避措置)不遵守
手漕ぎボート(船名なし)・・・船員の常務(衝突回避措置)不遵守

裁決主文

 本件衝突は、雑種船以外の船舶である第二俊丸が、航路を航行しなかったばかりか、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、停留中の雑種船である手漕ぎボート(船名なし)が、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年11月2日15時40分
 高知港内
 (北緯33度30.6分 東経133度33.7分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二俊丸 手漕ぎボート(船名なし)
総トン数 3.95トン  
全長   5.30メートル
登録長 9.20メートル  
機関の種類 ディーゼル機関  
漁船法馬力数 65  

3 事実の経過
 第二俊丸(以下「俊丸」という。)は、FRP製漁船で、昭和50年11月に二級小型船舶操縦士(5トン限定)の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み、一本釣り漁の目的で、船首0.20メートル船尾1.30メートルの喫水をもって、平成15年11月2日07時00分高知港新築南側の係留地を発し、同港の港界付近の漁場に至って操業し、15時20分漁場を発して帰途についた。
 A受審人は、15時37分少し過ぎ高知港内の種崎を替わった、高知港御畳瀬灯台から153度(真方位、以下同じ。)500メートルの地点で、針路を006度に定め、機関を半速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で航路の外側を進行した。
 定針したとき、A受審人は、ほぼ正船首670メートルに、停留状態の手漕ぎボート(船名なし)(以下「手漕ぎボート」という。)を視認することができる状況であったが、前路を一瞥しただけで他船はいないものと思い、楽な姿勢になるように、操舵室のいすを右舷向きに据えてこれに腰掛け、右舷側を向いて船側の手すりに足をかけて、前路の見張りを十分に行わなかったので、手漕ぎボートの存在に気付かなかった。
 その後、A受審人は、手漕ぎボートに向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近したが、この状況に気付かず、左転して航路内を航行するなど衝突を避けるための措置をとらないで続航した。
 A受審人は、手漕ぎボートに気付かないまま、15時40分高知港御畳瀬灯台から054度360メートルの、航路の外側の地点において、俊丸の右舷船首が、原針路、原速力のまま、手漕ぎボートの左舷船尾部に、後方から20度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風はほとんど無く、潮候は下げ潮の末期であった。
 また、手漕ぎボートは、貸し船業を営む、Cが所有し、検査及び登録を要しない、船尾の櫓をもって操船する木製和船型の船で、B指定海難関係人が単独で乗り組み、同15年11月2日08時30分船首尾とも0.20メートルの喫水をもって、高知港種崎の貸し船業者の船着き場を発し、新築南側で釣りを行い、15時02分航路の外側である高知港御畳瀬灯台から042度430メートルの地点に移動し、停留状態で釣りを再開した。
 15時37分B指定海難関係人は、南の方向に0.1ノットの対地速力で漂流中、種崎南西端付近に俊丸を初認した。
 15時37分少し過ぎB指定海難関係人は、船首を北に向けているとき、ほぼ正船尾670メートルとなった俊丸を視認し、その後、同船が自船に向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近するのを認めたが、いずれ俊丸が停留中の自船を避けるものと思い、速やかに東方の水深の浅い側に移動するなど衝突を避けるための措置をとることなく釣りを続けた。
 15時39分半わずか過ぎB指定海難関係人は、至近に迫った俊丸に対して立ち上がって手を振り、同船がさらに接近するので、櫓をもって船首を14度ほど左方に向けたが避けきれず、海中に飛び込んだ直後、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、俊丸は右舷船首に擦過傷を生じたのみであったが、手漕ぎボートは左舷側が大破して全損となった。

(原因)
 本件衝突は、高知港において、雑種船以外の船舶である俊丸が、航路を航行しなかったばかりか、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、停留中の雑種船である手漕ぎボートが、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、高知港を航行する場合、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、前路を一瞥しただけで他船はいないものと思い、操舵室のいすを右舷向きに据えてこれに腰掛け、右舷側を向いていて、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、手漕ぎボートに気付かず、左転して航路内を航行するなど同ボートとの衝突を避けるための措置をとらないまま進行して衝突を招き、自船は擦過傷を生じたのみであったが、手漕ぎボートを大破して全損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人が、高知港において、釣りをして停留中、衝突のおそれがある態勢で接近する俊丸を認めた際、速やかに東方の水深の浅い側に移動するなど衝突を避けるための措置をとらなかったことは、本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては、勧告しない。


参考図
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