(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年11月25日05時10分
大阪港
(北緯34度37.4分 東経135度20.6分)
2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 |
貨物船第二十八住若丸 |
総トン数 |
499トン |
全長 |
68.78メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,471キロワット |
(2)設備及び性能等
第二十八住若丸(以下「住若丸」という。)は、平成8年11月に進水した船尾船橋型の鋼製砂利運搬船で、操舵室前壁中央にマグネットコンパスを配置し、その後方のコンソールスタンドには、操舵輪、ジャイロコンパスを中央として、左側にGPSプロッター、レーダー2台、右側に機関操作レバーなどを配置していた。
当時の喫水で、眼高が約9.5メートルとなり、船橋前面から船首端まで約50メートルであった。
3 事実の経過
住若丸は、A受審人ほか4人が乗り組み、海砂1,650トンを積載し、船首4.0メートル船尾4.8メートルの喫水をもって、平成15年11月25日01時05分徳島県亀浦港を発し、淡路島西岸沖合を北上して明石海峡経由で、大阪港大阪区に向かった。
また、A受審人は、23日徳山下松港で前示貨物の荷役を行い同港を夕刻に出航し、3時間の単独当直を2回行い、24日09時頃に亀浦港に到着し、午前中に船用品や潤滑油などの積込みを済ませ、午後からは、翌日の夜間航海に備えて在船して休息すべきところ、自らの用事で外出して22時頃帰船し、25日の出航まで3時間ばかり自室で休息していたが、睡眠をとらなかったので、24日の睡眠時間は3時間程度であった。
出航操船後A受審人は、01時30分頃亀浦港沖合0.5海里で当直者と交替して自室で休息し、ベッドに横になっていたが寝付きが悪く、眠り込んだのが03時50分頃であった。
04時40分A受審人は、神戸沖第2号灯浮標の北方約0.8海里の地点において、前当直者に起こされて04時45分に昇橋し、前当直者から前路の神戸港沖の錨泊船を避けるため、予定針路から5度右転し、現在は針路080度(真方位、以下同じ。)11.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行中であるとの引継ぎを受けた。
04時50分A受審人は、大阪灯台から250度6.4海里の地点において、前当直者が降橋し、前方4海里には大阪新島埋立区域を示す多数の埋立造成用鋼製杭や平成14年2月から設置されている光達距離5海里の灯標を確認し、これが近くなってから針路を戻して同埋立区域沖合を北上するつもりで、080度に定め、機関を全速力前進として11.0ノットで、自動操舵とし、これより着岸操船までの約2時間の当直の予定で続航した。
A受審人は、当直交替直後からいすに腰掛け、睡眠不足で眠気を催していたが、コーヒーを飲んだことから、間もなく目が覚めるものと思い、いすから立ち上がるなど居眠り運航防止の措置をとることなく、進行した。
その後A受審人は、たばこを立て続けに3本吸ったが、眠気がとれず、いすに腰掛けたままいつしか居眠りに陥り、05時10分大阪灯台から235度2.18海里の地点において、住若丸は、原針路、原速力のまま、大阪新島埋立区域B灯標に左舷側外板をこすりつけるようにして衝突し、鋼製杭間に設けられた汚濁防止膜を突き破った。
当時、天候は小雨で風力1の北北東風が吹き、潮侯は上げ潮の中央期であった。
A受審人は、衝突の衝撃でようやく目覚めて行きあしを停止した。
衝突の結果、住若丸は、左舷外板に船首から船尾までの擦過傷を生じ、大阪新島埋立区域B
灯標は海底近くの根元から折れ曲がり、全損となった。また長さ約20メートルの汚濁防止膜は分断されて全損となった。
(本件発生に至る事由)
1 連日の航海と昼夜関わりなく繰り返す出入港及び荷役が行われ、不規則な就労であったこと
2 A受審人が亀浦港においての午後から休息時間に外出して出航までほとんど睡眠をとらず、睡眠不足気味の状態で当直に就いていたこと
3 A受審人がいすに腰掛けていたこと
(原因の考察)
本件灯標衝突は、夜間、大阪港大阪区に向けて航行中、単独で船橋当直に就いていた当直者が、居眠りに陥り、大阪港新島埋立区域の灯標に向かって進行したことによって発生したものである。
A受審人が、不規則な就労で睡眠不足気味であったが、夜間当直に備えて睡眠をとらずに外出し、いすに腰掛けたまま当直にあたって居眠りに陥ったことは、本件発生の原因となる。
(海難の原因)
本件灯標衝突は、夜間、神戸港沖合から大阪港大阪区に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、大阪港新島埋立区域の灯標に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、神戸港沖合から大阪港大阪区に向けて単独当直により航行中、睡眠不足で眠気を催した場合、いすから立ち上がるなど居眠り運航防止の措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、コーヒーを飲んだから目が覚めるものと思い、いすから立ち上がるなど居眠り運航防止の措置をとらなかった職務上の過失により、当直交替後間もなく居眠りに陥って大阪新島埋立区域B灯標との衝突を招き、住若丸の左舷外板に擦過傷を生じさせ、同灯標を曲損及び同区域の汚濁防止膜を損傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。
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