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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  衝突事件一覧 >  事件





平成16年横審第53号
件名

押船第三十一若栄丸被押起重機船第3若栄丸灯浮標衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年10月21日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(小寺俊秋)

理事官
亀井龍雄

受審人
A 職名:第三十一若栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第三十一若栄丸・・・左舷船首部に亀裂
灯浮標・・・頂部に凹損、太陽電池モジュール及び光ファイバー文字表示板に損傷

原因
見張り不十分

裁決主文

 本件灯浮標衝突は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月15日11時55分
 京浜港東京区東京西航路

2 船舶の要目
船種船名 押船第三十一若栄丸 起重機船第3若栄丸
総トン数 19トン 約934トン
全長 13.50メートル 49.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 956キロワット  

3 事実の経過
 第三十一若栄丸(以下「若栄丸」という。)は、船体中央部に船橋を有する2機2軸の鋼製押船で、平成13年6月交付の一級小型船舶操縦士免許を有するA受審人が1人で乗り組み、第3若栄丸(以下「起重機船」という。)に作業員4人を乗せ、空倉で船首尾とも1.4メートルの喫水となった同船の船尾凹部に船首部をかん合し、全長約60メートルの押船列(以下「若栄丸押船列」という。)を構成し、船首1.2メートル船尾2.3メートルの喫水をもって、同15年7月15日11時30分京浜港東京区の大井コンテナふ頭北端を発し、千葉港葛南区に向かった。
 ところで、A受審人は、起重機船の船首部に設置された旋回式クレーンによって、若栄丸押船列の船首両舷にわたって約6度の死角が生じていたことから、平素、船首を左右に振るなど して船首死角を補う見張りを行っていた。
 発航後A受審人は、東京西航路の西側境界を示す各灯浮標を視認しながら同航路を南下し、11時00分東京西第9号灯浮標を右舷側に見て航過したころ、後方約1海里から大型コンテナ船が同航路中央部を南下接近してくるのに気付き、出航時起重機船の船首に見張り要員として配置した作業員を若栄丸の船橋に移動させ、後方の見張りに当たらせた。
 A受審人は、自船がコンテナ船の被追越し船であったので東京西航路右側をほぼこれに沿っ て航行し、11時45分東京中央防波堤西灯台(以下「西灯台」という。)から263度(真方位、 以下同じ。)570メートルの地点で、針路を137度に定め、機関を回転数毎分1,800にかけ6.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 定針したときA受審人は、船首を片舷3度程度振ることが支障のない状況で、東京西航路南 西端を示す東京西第3号灯浮標(以下「3号灯浮標」という。)が正船首1.0海里に存在し、船首死角に入っていたが、同航路右側をほぼこれに沿って航行しているので3号灯浮標を右舷側に見て無難に航過できるものと思い、船首を左右に振るなどの船首死角を補う見張りを十分に行わなかったので、3号灯浮標に向首していることに気付かないまま続航中、11時55分西灯台から154度1,580メートルの地点において、若栄丸押船列は、原針路、原速力のまま、起重機船の船首が3号灯浮標に衝突し乗り切った。
 当時、天候は曇で風力2の南風が吹き、視界は良好で潮候はほぼ低潮時であった。
 衝突の結果、若栄丸の左舷船首部に亀裂を、3号灯浮標の頂部に凹損と、太陽電池モジュール及び光ファイバー文字表示板に損傷をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件灯浮標衝突は、京浜港東京区東京西航路において、同航路右側をこれに沿って南下する際、船首死角を補う見張りが不十分で、3号灯浮標に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、京浜港東京区東京西航路において、若栄丸押船列を構成し同航路右側をこれに沿って南下する場合、被押起重機船のクレーンによって船首死角が生じていたのだから、同航路の南西端を示す3号灯浮標を見落とすことのないよう、船首を左右に振るなど、船首死角を補う見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、東京西航路右側をほぼこれに沿って航行しているので3号灯浮標を右舷側に見て無難に航過できるものと思い、船首死角を補う見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、3号灯浮標に向首したまま進行して衝突を招き、若栄丸の左舷船首部に亀裂を、3号灯浮標の頂部に凹損と、太陽電池モジュール及び光ファイバー文字表示板に損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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