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平成16年横審第51号
件名

油送船第拾幸徳丸灯浮標衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年10月5日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(中谷啓二)

理事官
亀井龍雄

受審人
A 職名:第拾幸徳丸船長 海技免許:五級海技士(航海)

損害
第拾幸徳丸・・・左舷後部ボートデッキのハンドレールに擦過傷
灯浮標・・・防護枠、マーキング装置などを損傷

原因
同航船を追い越す際、追越し舷の選択が不適切

裁決主文

 本件灯浮標衝突は、航路において同航船を追い越す際、追越し舷の選択が不適切で、航路に設置されている灯浮標に著しく接近したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年5月18日11時45分
 東京湾浦賀水道

2 船舶の要目
船種船名 油送船第拾幸徳丸
総トン数 498トン
全長 64.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第拾幸徳丸(以下「幸徳丸」という。)は、船尾船橋型油送船で、A受審人ほか4人が乗り組み、A重油700キロリットルを積載し、船首2.8メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、平成15年5月18日10時15分京浜港川崎区を発し、福島県小名浜港に向かった。
 A受審人は、出航操船に引き続き1人で船橋当直に就き、11時25分浦賀水道航路北口の、第2海堡灯台から306度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点に達したとき、針路をほぼ同航路に沿う144度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの南東流に乗じて12.6ノットの対地速力で、操舵室に立って手動操舵により航路の中央寄りを進行した。
 定針したころA受審人は、船首方0.6海里ばかりに、自船より小形で速力の遅い同航船(以下「小形同航船」という。)を、また右舷後方に大形で速力の速い同航船(以下「大形同航船」という。)をそれぞれ認めて続航し、11時39分少し過ぎ浦賀水道航路中央第4号灯浮標(以下、灯浮標の名称については「浦賀水道航路」の冠称を省略する。)を左舷側約70メートルの間隔で航過した。
 11時40分A受審人は、観音埼灯台から006度1.83海里の地点に達し、正船首200メートルばかりに小形同航船の船尾を認めるようになったとき、約1海里前方の中央第3号灯浮標付近で同船を追い越す状況で、同船の左舷側を追い越すと中央第3号灯浮標に著しく接近するおそれがあったが、そのころ自船及び小形同航船を追い越す態勢で右舷側に接近していた大形同航船を気にかけ、一時減速し同船に後続して小形同航船の右舷側に向かうなど、追越し舷を適切に選択せず、徐々に左転して小形同航船と中央第3号灯浮標の間に向け、11時42分原針路に戻した。
 A受審人は、航路中央から約35メートル離れ進行していた小形同航船の左舷側に並航し、中央第3号灯浮標に著しく接近する態勢になり続航中、11時45分少し前船尾が、小形同航船の船首部にかかるころ、同船の方に引き寄せられるのを認めて10度ばかり右転し、その直後、左舷中央部至近に中央第3号灯浮標を認め、キックにより衝突を避けようと左舵をとったが効なく、11時45分観音埼灯台から040.5度2,400メートルの地点において、幸徳丸は、154度に向首し、その左舷後部が中央第3号灯浮標の頂部に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、付近には強い南東流があった。
 衝突の結果、幸徳丸は、左舷後部ボートデッキのハンドレールに擦過傷を生じ、中央第3号灯浮標は防護枠、マーキング装置などを損傷したが、のち修理された。

(原因)
 本件灯浮標衝突は、浦賀水道航路を航路中央に寄って南下中、同航船を追い越す際、追越し舷の選択が不適切で、航路中央に設置されている中央第3号灯浮標に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、浦賀水道航路を航路中央に寄って南下中、正船首方向の同航船を追い越す場合、航路中央に設置されている中央第3号灯浮標に著しく接近することのないよう、追越し舷を適切に選択すべき注意義務があった。しかるに、同人は、接近していた他船を気にかけ、追越し舷を適切に選択しなかった職務上の過失により、中央第3号灯浮標に著しく接近して同灯浮標との衝突を招き、幸徳丸のボートデッキハンドレールに擦過傷を、中央第3号灯浮標の防護枠、マーキング装置などに損傷を与えるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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