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平成16年函審第44号
件名

漁船第二十七大杉丸浸水事件(簡易)

事件区分
浸水事件
言渡年月日
平成16年9月9日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第二十七大杉丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
集魚灯安定器、機関室ビルジポンプを濡損

原因
主機空気冷却器海水入口管ゴムホースの点検不十分

裁決主文

 本件浸水は、主機空気冷却器海水入口管ゴムホースの取付状態の点検が不十分で、硬化したゴムホースが外れたことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年8月25日08時30分
 北海道積丹半島東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十七大杉丸
総トン数 16トン
全長 22.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 433キロワット
回転数 毎分2,000

3 事実の経過
 第二十七大杉丸(以下「大杉丸」という。)は、平成7年9月に進水したいか一本つり漁業に従事するFRP製漁船で、船体中央部に操舵室、上甲板下に前方から順に魚倉、機関室、舵機室が配置されており、主機として、B社が製造したS6B3F-MTK2型と呼称する間接冷却方式のディーゼル機関を備えていた。
 主機の冷却海水系統は、機関室船底の海水吸入弁から直結冷却海水ポンプで吸引された海水が、空気冷却器、逆転減速機潤滑油冷却器、清水冷却器を順次通過して船外に導かれており、主機の冷却清水温度が摂氏98度に上昇すると操舵室で警報を発するようになっていた。
 そして、空気冷却器の海水入口管には、長さ200ミリメートル(以下「ミリ」という。)外径70ミリ厚さ10ミリの布入り耐圧性のゴムホースが装着され、その両端が各2個のステンレス鋼製ホースバンドで取り付けられていた。
 A受審人は、昭和50年ごろ甲板員としていかつり漁船に乗船し、平成3年9月に一級小型船舶操縦士の免許を取得してから船長職を執り、大杉丸に新造以来船長として乗り組んで操船や主機の運転保守等を行い、例年1月初めに長崎県対馬沖合でいか漁を始めて5月まで操業したのち日本海の漁場を移動して北上を続け、6月末には北海道小樽港に至り12月中旬まで同港を基地に出漁しており、操業の合間を縫って整備作業を対馬や同港で行い、年末には出漁を終えて対馬の大船越漁港に帰港していた。
 ところで、主機冷却海水系統の空気冷却器海水入口管のゴムホースは、新造以来使用されているうち、ホースバンド付近が経年により硬化して緩みを生じ、これが次第に進行していった。
 しかし、A受審人は、ゴムホースからの漏水がないので大丈夫と思い、同ホースの取付状態を点検したことがなかったので、ホースバンドが緩んでいることに気付かないまま操業を続けた。
 平成15年6月中旬大杉丸は、空気冷却器の冷却管がごみ等で閉塞して冷却海水の船外排出量が通常より少なくなり、冷却海水ポンプの出口圧力が上昇気味となってゴムホースが外れやすい状況となった。
 こうして大杉丸は、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、平成15年8月24日08時00分小樽港高島漁港区を発し、同港西方沖合の漁場に向かい、17時00分到着して操業を行ったもののほとんど漁獲がないままこれを打ち切り、翌25日01時00分漁場を発進して同漁港区に向け帰途に就き、主機を全速力前進の回転数毎分1,900にかけて航行しているうち、空気冷却器の海水入口管ゴムホースが外れ、海水が機関室に浸入し始めた。
 大杉丸は、海水が機関室に滞留して主機の冷却清水温度が上昇し始め、操舵室の警報装置が作動し、これを聞いたA受審人が機関室に急ぎ、08時30分積丹出岬灯台から真方位082度2.0海里の地点において、海水が噴出しているのを認め、主機を停止した。
 当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
 浸水の結果、大杉丸は、集魚灯安定器、機関室ビルジポンプを濡損し、僚船により小樽港高島漁港区まで曳航され、各機器が修理された。 

(原因)
 本件浸水は、漁場から北海道小樽港に向け帰航中、主機空気冷却器海水入口管ゴムホースの取付状態の点検が不十分で、経年により硬化した同ホースのホースバンドに緩みを生じ、同ホースが外れたことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、主機の運転保守に当たる場合、主機空気冷却器海水入口管のゴムホースが経年により硬化してホースバンドが緩むことがあるから、ゴムホースの取付状態を十分に点検すべき注意義務があった。ところが、同人は、同ホースからの漏水がないので大丈夫と思い、ゴムホースの取付状態を十分に点検しなかった職務上の過失により、漁場から帰航中、同ホースが外れて海水が噴出し、機関室に滞留して浸水を招き、集魚灯安定器、機関室ビルジポンプを濡損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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