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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 施設等損傷事件一覧 >  事件





平成16年門審第65号
件名

押船広島丸被押バージ広島丸のり養殖施設損傷事件(簡易)

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成16年9月3日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(織戸孝治)

副理事官
園田 薫

受審人
A 職名:押船広島丸船長 操縦免許 一級小型船舶操縦士

損害
広島丸押船列・・・損傷ない
のり養殖施設・・・損壊

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件のり養殖施設損傷は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年11月28日19時30分
 周防灘北部宇部港西方
 
2 船舶の要目
船種船名 押船広島丸 バージ広島丸
総トン数 17トン 195トン
全長 10.75メートル 30.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 147キロワット  

3 事実の経過
 押船広島丸(以下「広島丸」という。)は、主として瀬戸内海で運航する鋼製押船で、平成13年5月に一級小型船舶操縦士の免状の交付を受けたA受審人ほか同人の妻が甲板員として乗り組み、鉄板180トンを積載して船首1.5メートル船尾1.6メートルの喫水となった無人のバージ広島丸(以下「バージ」という。)の船尾中央部に、その船首部を嵌合して押船列(以下「広島丸押船列」という。)を構成し、船首1.6メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成15年11月28日17時55分関門港長府区を発し、広島県尾道糸崎港に向かった。
 18時40分A受審人は、山口県小野田港西方となる、小野田港防波堤灯台から270度(真方位、以下同じ。)5.15海里の地点に達したとき、東寄りの風が強まりはじめたことから同県宇部港にて荒天避泊することとし、針路を110度に定め、機関を全速力前進にかけ、5.5ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 ところで、小野田港と宇部港の間の山口県小野田市松浜地先には、同県知事の区画漁業免許状に懸かる免許番号区第217号による、のり養殖漁業の区域が設定されていて、毎年9月から4月までの間、のり養殖網、フロート、ロープ、錨及び標識灯から成る、のり養殖施設が設置され、このことは漁具定置箇所一覧図や大縮尺海図に記載されていたが、A受審人は、周防灘及びその付近の海図は第1101号を備えていたが、漁具定置箇所一覧図や周防灘北部水域の大縮尺海図を備えておらず、このことを知らなかった。
 定針後、A受審人は、いつもより沿岸寄りの進路であったが、沿岸寄りに航行の支障となる障害物が存在するかもしれないことに思い至らず、関係者に問い合わせるなどして進路付近の水路状況の調査を十分に行わなかったので、前示ののり養殖施設設置区域に向首したことに気付かず、椅子に腰を掛けたまま、漫然と続航した。
 19時27分半A受審人は、小野田港防波堤灯台から215度1.85海里の地点で、針路を140度に転じ、同速力で続航中、19時30分小野田港防波堤灯台から209度1.95海里の地点で、広島丸押船列は、原針路、原速力のまま、のり養殖施設設置区域に乗り入れた。
 当時、天候は晴で風力4の東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。A受審人は、このことに気付かず、宇部港で停泊しているとき、本件発生を知らされ、事後の措置に当った。
 その結果、広島丸押船列に損傷はなかったが、のり養殖施設を損壊した。 

(原因)
 本件のり養殖施設損傷は、夜間、宇部港西方の周防灘において、同港に避泊する目的で沿岸寄りを東行する際、水路調査が不十分で、のり養殖施設設置区域に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、宇部港西方の周防灘において、同港に荒天避泊する目的で、沿岸寄りを東行する場合、沿岸寄りには季節により、のり養殖施設が設置されていたから、同施設設置区域に乗り入れないよう、関係者に問い合わせるなどして水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、沿岸寄りに航行の支障となる障害物が存在するかもしれないことに思い至らず、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同区域に乗り入れ、同施設を損壊させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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