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平成16年函審第32号
件名

貨物船第八栄福丸定置網損傷事件(簡易)

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成16年7月14日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(黒岩 貢)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第八栄福丸船長 海技免許:三級海技士(航海)

損害
第八栄福丸・・・損傷ない
定置網・・・2箇統のロープ、漁網等が損傷

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件定置網損傷は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年6月13日13時30分
 北海道浦河港南東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八栄福丸
総トン数 499トン
全長 70.14メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット

3 事実の経過
 第八栄福丸(以下「栄福丸」という。)は、砂利等の輸送に従事する鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、砂1,200トンを積載し、船首3.2メートル船尾4.3メートルの喫水をもって、平成15年6月13日12時50分北海道様似港を発し、同港の西北西方7海里ばかりの浦河港に向かった。
 ところで、浦河港南東方の、浦河灯台から136度(真方位、以下同じ。)1.5海里、140度1.3海里、165度1.8海里及び160度1.9海里の各地点を結んだ線により囲まれる区画、並びにその沖合に当たる同灯台から169度1.8海里、174度1.7海里、180度2.2海里及び175度2.3海里の各地点を結んだ線により囲まれる区画(以下「沖側区画」という。)にはそれぞれ定置網漁場が設けられていた。また、浦河港港口の西方にも2区画の定置網漁場が存在していたことから、沿岸を航行したり、浦河港に入港する船舶は、地元の漁業協同組合や代理店などから定置網の設置情報を入手するなどして十分な水路調査を行い、慎重に航行する必要があった。
 一方、A受審人は、2年ほど前から船長職を執っていたものの、専ら関東から九州にかけての航路に就航していたため、北海道沿岸を航行するのは初めてで、当地の水路事情についてほとんど把握していなかったが、定置網の存在に思い及ばなかったうえ、航程が短いので水路調査を行うまでもないものと思い、発航前にこれらの調査を行っておらず、前示定置網漁場の存在を知らないまま出航していた。
 A受審人は、霧で視界が500メートルばかりに狭められた状況下、出港操船に引き続き単独の船橋当直に就き、様似港港口を通過後、レーダーを監視しながら南西進し、13時07分半様似港外東防波堤灯台から248度1.8海里の地点に達したとき、針路をほぼ陸岸に沿う285度に定めて自動操舵とし、安全な速力とすることもなく機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で進行したところ、前示沖側区画中央部に向首することとなったが、水路調査を十分に行っていなかったので、このことに気付かないまま進行した。
 13時27分A受審人は、ますます視程が狭まる中、浦河灯台から161度2.3海里の地点に至り、船首方の沖側区画まで1,000メートルに接近し、ときおりレーダー画面に定置網に付属する浮球等が映る状況となったが、定置網の存在に思い及ばなかったことからこれを見落として続航中、同時30分わずか前船首至近に浮球等を認め、とっさに右舵一杯としたものの及ばず、13時30分栄福丸は、浦河灯台から173度2.1海里の地点において、沖側区画内の定置網に、ほぼ原針路、原速力のまま乗り入れた。
 当時、天候は霧で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期で、視程は約200メートルであった。
 その後A受審人は、機関の前後進を多用しながら何とか定置網から脱して北西進中、浦河港港口西方の定置網にも乗り入れ、代理店との電話連絡で定置網漁場の位置を示したファクシミリを入手後、慎重に操船して浦河港に入港した。
 その結果、栄福丸は、推進器翼にロープ、漁網等が絡まっただけで損傷がなかったが、定置網2箇統のロープ、漁網等が損傷した。 

(原因)
 本件定置網損傷は、北海道様似港から浦河港に向け航行する際、水路調査が不十分で、定置網漁場に向首したまま進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、北海道様似港から浦河港に向け航行する場合、霧により視界が制限されていたうえ、同海域を航行するのは初めてであったから、発航前に漁業協同組合や代理店を通して定置網についての十分な水路調査を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、定置網の存在に思い及ばなかったうえ、浦河港までの航程が短いので水路調査を行うまでもないものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、定置網への進入を招き、自船の推進器翼に漁網、ロープ等を絡ませ、定置網の漁網、ロープ等を損傷させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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