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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成16年広審第32号
件名

プレジャーボート一丸転覆事件(簡易)

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成16年8月27日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(米原健一)

理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:一丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
機関及び電気設備等に濡れ損等

原因
気象海象に対する情報収集不十分、発航を中止しなかったこと

裁決主文

 本件転覆は、気象海象に対する情報収集が不十分で、発航を中止しなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月19日07時45分
 広島湾
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート一丸
全長 7.23メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 47キロワット

3 事実の経過
 一丸は、船体中央部に操舵スタンドを有するFRP製プレジャーボートで、A受審人(昭和54年10月四級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み、父親を同乗させ、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成15年7月19日05時45分広島県倉橋島西宇土の係留地を発し、同係留地南方沖合2海里に位置するカシノコ島付近の釣り場に向かった。
 ところで、気象概況では03時00分ごろ998ヘクトパスカルの低気圧が日本海西部を北東進中で、同低気圧の中心から温暖前線が若狭湾に、寒冷前線が九州北部を通って東シナ海にそれぞれ伸び、西日本では南から暖かく湿った空気が流れ込んで大気の状態が不安定となっており、広島地方気象台は、広島・呉地方に前日から発表していた大雨、洪水警報、雷、濃霧注意報を05時15分大雨、洪水警報及び雷注意報に切り替え、昼前にかけて1時間の雨量が40ミリに、多いところでは総雨量が180ミリになり、所々で雷が発生したり局地的に突風が吹くおそれもあるので災害に厳重に警戒するよう呼びかけていた。
 A受審人は、05時00分ごろテレビの天気予報により日本海西部を北東進する低気圧やそれに伴う前線の影響で、降水確率が70パーセントであることや波高が50センチメートルになることを知ったものの、自宅近くの係留地付近の海上が凪いでいたことや空が晴れていたことから、まさか天候が急変して突風が吹くことはあるまいと思い、引き続き地元のテレビやラジオの天気予報を利用するなど、気象海象に対する情報収集を十分に行わなかったので、広島・呉地方に大雨、洪水警報及び雷注意報が発表中であることも、大気が不安定で局地的に突風が吹くおそれがあり災害に厳重に警戒する必要があることにも気付かず、発航を中止することなく、予定どおり前示釣り場に向かったものであった。
 06時00分A受審人は、カシノコ島南東方沖合300メートルの釣り場に至り、弱い北西風に船首を立て、機関を回転数毎分600の中立運転として漂泊し、操舵スタンドの左右両舷及び船尾左右両舷端にそれぞれ設置した直径32ミリメートルのステンレス製パイプ4本を支柱とする直径20ミリメートル縦2.8メートル横2.0メートル甲板上高さ1.85メートルのステンレス製パイプの天井枠に白色の日除け用テントを展張してロープで固定し、救命胴衣を着けないまま操縦席に右舷方を向いて腰を掛け、父親が救命胴衣を着けないで左舷船尾部の機関室囲壁に左舷方を向いて腰を掛け、それぞれ竿釣りを始めた。
 A受審人は、時折機関を使用し潮上りして前示釣り場で釣りを続け、07時40分北北西方に向首していたころ、父親から西の空に現れた黒雲が発達しながら接近していることを知らされたので振り返ってその状況を確認し、帰航するため急いで釣り竿を片付けていたところ、雨を伴う西寄りの風が吹き始めたかと思う間に急速に風雨が強まり、船首を風に立てるつもりでクラッチを前進に入れて機関を回転数毎分1,200にかけ、左舵一杯をとったが効なく、同時44分日除け用テントに突風を受け、船尾が持ち上げられて左舷側に大傾斜し、一丸は、07時45分西五番之砠灯標から114度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点において、330度に向首したとき、復原力を喪失して左舷側から転覆した。
 当時、天候は雨で風力7の西風が吹き、その後数分で風は止み、天候は晴れて風はほとんどなくなった。
 その結果、一丸は、転覆したまま30分間ばかり南方に流されたところで付近を通りかかった漁船に発見され、同船によって西宇土に引き付けられ、機関及び電気設備等に濡れ損等を生じたが、のち修理された。また、A受審人及び父親は、船体につかまっていたところを前示漁船に救助された。 

(原因)
 本件転覆は、広島県倉橋島西宇土の係留地を釣りのため発航する際、気象海象に対する情報収集が不十分で、発航を中止せず、釣り場で日除け用テントに突風を受け、船体が持ち上げられて大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、広島県倉橋島西宇土の係留地において、釣りのため発航する場合、寒冷前線と温暖前線とを伴う低気圧が日本海西部を北東進中であることを知っていたのだから、地元のテレビやラジオの天気予報を利用するなど、気象海象に対する情報収集を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、自宅近くの係留地付近の海上が凪いでいたことや空が晴れていたことから、まさか天候が急変して突風が吹くことはあるまいと思い、気象海象に対する情報収集を十分に行わなかった職務上の過失により、大雨、洪水警報及び雷注意報が発表中であることも、大気が不安定で局地的に突風が吹くおそれがあり災害に厳重に警戒する必要があることにも気付かず、発航を中止することなく、目的の釣り場で竿釣り中、日除け用テントに突風を受けて船体が持ち上げられ、左舷側に大傾斜し、復原力を喪失して一丸の転覆を招き、機関及び電気設備等に濡れ損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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