(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年3月17日10時25分
広島県呉港
2 船舶の要目
船種船名 |
作業艇(船名なし) |
全長 |
11.00メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
154キロワット |
3 事実の経過
作業艇(船名なし)(以下「作業艇」という。)は、Bが所有する補給艦ましゅうに付属し、船体中央部左舷側甲板上に操縦スタンドを設け、人員輸送や綱取り作業に従事する定員45人の一層甲板型FRP船で、A指定海難関係人ほか2人が乗り組み、ましゅうの乗組員10人を乗せ、平成16年3月17日10時00分広島県呉港外で給油のため錨泊中のましゅうを発し、呉港呉区の海上自衛隊幸町桟橋に寄せて乗組員を下船させたのち、同区海上自衛隊昭和ふ頭桟橋に回航し、船首尾とも1.2メートルの喫水をもって、昼食用弁当を搬送する目的で、同時18分同桟橋を発進し、同区内吉浦湾に向かった。
これより先、A指定海難関係人は、昭和61年に海上自衛隊員となって主に舞鶴基地で勤務しており、呉港において作業艇に乗船して桟橋まで移動した経験は数回あったものの、船長として呉港を初めて航行することとなったが、事前にましゅう艦橋にある海図W1109などによって水路調査を十分に行わなかったので、大麗女(おおうるめ)島から鵜ノ糞と称する浅瀬が海上保安大学校に向けて北東方に拡延していることに気付かず、ましゅう舷門に置いてあった同海図のA4版縮小図によって同島と同大学校との間を通航して吉浦湾に向かう航海計画を立てていた。
このようにして、A指定海難関係人は、10時20分日新製鋼104メートル煙突から048度(真方位、以下同じ。)1,230メートルの地点で、針路を大麗女島と海上保安大学校との間に向く307度に定め、機関を回転数毎分2,600にかけて15.0ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
A指定海難関係人は、大麗女島から北東方に拡延する浅瀬に向首していることに気付かず続航し、10時25分小麗女(こうるめ)島灯台から054度700メートルの地点において、作業艇は、原針路、原速力のまま鵜ノ糞に乗り揚げ、これを擦過した。
当時、天候は晴で風力3の南風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、推進器翼を曲損し、同器保護材に切損などを生じたが、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、広島県呉港を航行する際、水路調査が不十分で、大麗女島から北東方に拡延する浅瀬に向首進行したことによって発生したものである。
(指定海難関係人の所為)
A指定海難関係人が、広島県呉港を初めて航行する際、事前に水路調査を十分に行わなかったことは、本件発生の原因となる。
A指定海難関係人に対しては勧告しないが、発航に際して水路調査を十分に行うよう要望する。