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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成16年神審第61号
件名

油送船第八白水丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年9月14日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(平野浩三)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:第八白水丸船長 海技免許:四級海技士(航海)(履歴限定)

損害
第八白水丸の船首船底に凹損、北防波堤消波ブロック及びいけすに損傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年10月27日19時05分
 兵庫県三原郡福良港
 
2 船舶の要目
船種船名 油送船第八白水丸
総トン数 89トン
全長 31.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 330キロワット

3 事実の経過
 第八白水丸は、A受審人ほか1人が乗り組み、空船で、船首0.3メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成15年10月27日14時55分阪南港を発し、兵庫県福良港に向かった。
 ところで福良港は、鳴門海峡に面し、幅1,000メートルの港開口部の港界から港奥までの距離が1,800メートルで、港界から1,300メートル港奥の洲崎島南方に、2つの防波堤(以下、北側からそれぞれ「北防波堤」、「南防波堤」という。)があり、洲崎島と北防波堤との間には幅員約50メートルの切り通しが、また、南北防波堤の間には幅員100メートルの同港防波堤入口があった。港域内東側陸岸の500メートル沖合までは多数の養殖いけす(以下「いけす」という。)が存在し、また南北防波堤の沖合300メートルにもいけすが存在し、港界から防波堤入口までは、いけすと港内西側陸岸によって、長さ1,200メートル幅50ないし450メートルの湾曲した水路(以下「水路」という。)が形成されていた。防波堤入口には同入口を示す灯台が設置されておらず、これに代わるものとして私設の黄色点滅灯浮標(以下「いけす灯浮標」という。)が設置されていた。北防波堤南端沖合約200メートルにいけす灯浮標(以下「イ灯浮標」という。)が、南側防波堤北端沖合約200メートルにもいけす灯浮標(以下「ロ灯浮標」という。)が設置され、防波堤入口といけすの存在を示していた。また、水路南側には水路を示すいけす灯浮標が、南防波堤南端から南西約500メートルを北端として約500メートルの間隔で3個(以下、北側から、「ハ灯浮標」、「ニ灯浮標」、「ホ灯浮標」という。)設置され、水路東端部を示していた。
 A受審人は、福良港への夜間入航方法として、港界通過時には速力を10.0ノット(対地速力、以下同じ。)から6.0ノットに減じ、イ灯浮標より遠方に見える遊覧船ターミナルの照明灯を船首目標として、水路中央部を約600メートル直進し、ハ灯浮標を右舷正横に見るころに約15度右転して、船首方に防波堤内のホテルの明かりが見えたとき、同速力で、防波堤入口を通過していた。
 18時56分単独当直中のA受審人は、釣島鼻灯台から207度(真方位、以下同じ。)800メートルの地点において、いつものとおり針路を遊覧船ターミナルの照明灯を船首に見る047度に定め、機関を全速力前進の10.0ノットの速力とし、手動操舵で進行した。
 18時59分A受審人は、釣島鼻灯台から144度300メートルの地点において、いつものとおり6.0ノットに減速し、レーダーを0.5海里レンジとしていたため、0.6海里前方の防波堤入口はレーダーで捕捉しておらず、いけす灯浮標を頼りに船位を確認していたところ、急激に雨が強くなって、視界が悪化し、ハ灯浮標が見えなくなって、このままでは予定転針地点が不明のまま進行するおそれがあったが、やがてハ灯浮標が右舷方に見えてくるものと思い、速やかに減速し、レーダーにより防波堤入口及びいけすとの距離で自船の船位を確認することなく、続航した。
 19時02分少し過ぎA受審人は、福良港灯台から191度650メートルの地点において、更に雨が激しくなり、ハ灯浮標が右舷正横となり予定転針地点に達していたが、レーダーにより船位を確認していなかったことから、まだ同地点には達していないと思い、同速力で同針路のまま進行した。
 19時03分A受審人は、船首わずか右舷方に認めたイ灯浮標を、ハ灯浮標と思い込み、防波堤入口が見えないまま続行し、19時04分イ灯浮標を右舷至近に見て予定の進路として通過したとき、わずかに衝撃を感じたので、前方を確かめたところ、次の船首目標とする降雨のためぼんやりしたホテルの明かりをわずか右舷船首に見て、その衝撃がいけすに衝突したものと判断し、レーダーを見て、前方に存在する洲崎島と北防波堤との間の切り通しを防波堤入口と思い、同方向に向けて約3ノットに減速していけす内を進行したため、船首が振れ、19時05分福良港灯台から116度400メートルの地点において、約3ノットの速力で水面下の北防波堤消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風はほとんどなく、潮侯は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、第八白水丸は船首船底に凹損を生じ、北防波堤消波ブロック及びいけすに損傷を生じたがいずれも修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、兵庫県福良港において、入航する際、いけすにより狭められた水路を航行中、船位の確認が不十分で、降雨により転針目標とするいけす灯浮標を見失い、北防波堤消波ブロックに向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、兵庫県福良港において、防波堤入口に向けて進行中、降雨により視界が悪化し、転針目標とするいけす灯浮標を見失った場合、速やかに減速し、レーダーにより防波堤入口及びいけすとの距離で船位を確認すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、いけす灯浮標を視認することに気をとられ、速やかに減速し、レーダーにより船位を確認しなかった職務上の過失により、北防波堤消波ブロックに向首したまま進行して乗揚を招き、第八白水丸の船首船底に凹損を生じさせ、北防波堤消波ブロック及びいけすに損傷を与えるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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