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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成16年神審第43号
件名

漁船三笠丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年9月7日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(甲斐賢一郎)

理事官
佐和 明

受審人
A 職名:三笠丸船長 海技免許:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
球状船首を圧壊

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによるものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年11月15日08時30分
 福井県福井港北方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船三笠丸
総トン数 59トン
全長 31.15メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 375キロワット

3 事実の経過
 三笠丸は、船体中央に操舵室を設け、航海用レーダー1台及びGPSプロッター1台を備えた、沖合底びき網漁業に従事するFRP及び木製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的で、船首0.9メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成15年11月15日01時00分福井県福井港三国区の係留地を発し、同日03時ごろ同港北西方16海里の漁場に至って操業を開始した。
 A受審人は、06時ごろ2回目の曳網作業中に、天候の悪化を理由に操業を中止するよう僚船から連絡を受けたので、帰港することとして操業の手仕舞いにかかった。
 ところで、山本受審人は、通常、帰港する場合、レーダーの映像接近警報を2海里に設定しておき、他船や陸岸の映像が接近して同警報が鳴ったとき、レーダーやGPSプロッターを使用するなどして他船の動向や自船の船位を確認して針路を修正するようにしていた。しかし、同人は、今回の帰港に際して、操業を中止する作業があわただしかったので、前示警報を入れ忘れていた。
 06時30分A受審人は、雄島灯台から303度(真方位、以下同じ。)15.7海里の地点で、針路をGPSプロッター上で三国防波堤灯台に向く127度に定め、機関回転数毎分800として、7.9ノットの対地速力で、南西からの風潮流の影響で左方に5度圧流されながら、同人単独での船橋当直で自動操舵により帰港の途についた。
 定針してから、A受審人は、陸岸に接近しても、いずれ前示警報が鳴ったときに、船位を確認して針路を修正すれば大丈夫と思い、操舵室後部でいすに腰掛けて操業に関する報告の記入を始めた。
 08時15分A受審人は、雄島灯台から308度2.0海里の地点に達したとき、前示警報が鳴らず、レーダーやGPSプロッターを使用するなどして船位の確認を十分に行わなかったので、自船が雄島北側の浅瀬に向かって進行する態勢であることに気付かないまま、報告の記入を続けた。
 三笠丸は、原針路、原速力のまま、08時30分雄島灯台から057度400メートルの浅瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で、風力6の南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、球状船首を圧壊したが、自力で離礁して、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、福井港北方沖合において、操業を中止して同港に向けて帰港する際、船位の確認が不十分で、雄島北側の浅瀬に向かって進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、福井港北西方沖合の漁場から操業を中止して同港に向けて帰港する場合、レーダーやGPSプロッターを使用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、レーダーの映像接近警報を入れ忘れたままで、同警報が鳴ってから船位を確認すれば大丈夫と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、雄島北側の浅瀬へ向かって進行して乗揚を招き、球状船首を圧壊させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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