日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成16年門審第54号
件名

貨物船せき丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年8月24日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(織戸孝治)

副理事官
園田 薫

受審人
A 職名:せき丸船長 海技免許:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
船首部船底外板に凹損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年9月26日00時45分
 関門海峡西口古敷岩
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船せき丸
総トン数 199トン
全長 50.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 551キロワット

3 事実の経過
 せき丸は、鋼製砕石運搬船で、A受審人ほか3人が乗り組み、高炉スラグ細骨材700トンを積載し、船首2.6メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、山口県小野田港に寄港したのち、関門海峡経由で同県奈古に向かうこととし、平成15年9月25日00時10分広島県福山港を発した。
 22時30分A受審人は、小野田港を発航するとき、機関長を船橋当直に就けて自らが操船し、翌26日00時27分少し前関門航路の台場鼻沖合に達して、同人を降橋させ、以後、単独で操船に当り、同時37分少し前馬島港B防波堤灯台から294度(真方位、以下同じ。)1,380メートルの地点で、針路を蓋井島に向く340度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 定針時、A受審人は、大尺度としたGPSプロッタ画面の進路上に障害物が表示されなかったので、大丈夫と思い、備えていた海図第201号に当って進路付近の水路状況の調査を十分に行わなかったので、船首方1.3海里ばかりの古敷岩の南方に浅所があり、これに向首したことに気付かなかった。
 こうして、せき丸は、同針路、同速力で続行中、00時45分藍島港本村南第2防波堤灯台から074度1,330メートルの地点で前示の浅所に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船首部船底外板に凹損を生じ、同業船による積荷の瀬取りによって離礁し、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、関門海峡西口を北上中、水路調査が不十分で、古敷岩南方の浅所に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、関門海峡西口を北上する場合、進路付近に障害物があるかどうか分かるよう、備えていた海図に当って水路状況の調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、プロッタの大尺度画面に進路上の障害物が表示されなかったので、大丈夫と思い、水路状況の調査を十分に行わなかった職務上の過失により古敷岩南方の浅所に向首進行して乗揚を招き、船首部船底外板に凹損を生じさせるに至った。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION