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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成16年神審第5号
件名

漁船隆勝丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年7月2日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(田邉行夫)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:隆勝丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士 

損害
船底外板に数箇所の破口、機関室に浸水

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年3月19日07時03分
 高知港
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船隆勝丸
総トン数 14トン
登録長 14.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 470キロワット

3 事実の経過
 隆勝丸は、まぐろ延縄漁業に従事するFRP製漁船で、昭和63年7月8日免許の一級小型船舶操縦士免状を有するA受審人ほか3人が乗り組み、高知港での水揚げを終え、船首1.20メートル船尾1.70メートルの喫水をもって、平成15年3月19日06時35分同港中央卸売市場前の岸壁を発し、母港である同県久礼港に向かった。
 A受審人は、06時56分高知港藻洲潟防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から005度(真方位、以下同じ。)1,870メートルの地点で、針路を航路に沿った179度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.0ノットの対地速力で自動操舵によって進行した。
 ところで、A受審人は、このところ潮岬沖の漁場において、7日間昼夜を通じて操業した後、高知港で水揚げを行うという操業形態で、操業中は3時間ばかりの睡眠を2、3回とっていたものの、十分ではなく、疲労が蓄積した状態であった。また、高知港に寄港する前から風邪の症状があり、市販の風邪薬を服用していた。
 A受審人は、操舵室右舷側に設置したいすに腰をかけて単独で船橋当直にあたっていたところ、眠気はあまり感じなかったものの、風邪と睡眠不足の影響で相当に疲労が蓄積した状態で、居眠り運航に陥るおそれがある状況であったが、船首甲板で作業中の乗組員を呼んで2人当直にするなど居眠り運航を防止する措置をとらないまま続航した。
 A受審人は、いつしか居眠りに陥り、航路に沿って転針予定地点に達したものの、このことに気付かないまま直進し、07時03分隆勝丸は、防波堤灯台から112度220メートルの地点において、原針路、原速力のまま、高知市浦戸の陸岸に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の西北西風が吹き、潮候はほぼ高潮時であった。
 乗揚の結果、船底外板に数箇所の破口を生じ、機関室に浸水したが、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、高知港を出航するにあたり、居眠り運航の防止措置が不十分で、高知市浦戸の陸岸に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、風邪と睡眠不足の影響で相当に疲労が蓄積した状態で、単独で船橋当直にあたり、高知港を出航する場合、居眠り運航にならないよう、船首甲板で作業中の乗組員を呼んで2人当直にするなどして居眠り運航を防止する措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、居眠り運航を防止する措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りをしたまま転針予定地点を通過し、高知市浦戸の陸岸に向首接近していることに気付かずに進行して同所への乗揚を招き、船底外板に数箇所の破口を生じ、機関室に浸水させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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