(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年7月20日16時15分
新潟県三島郡寺泊町野積海岸沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
水上オートバイ八雲 |
水上オートバイサトウ |
総トン数 |
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0.1トン |
全長 |
3.10メートル |
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登録長 |
2.64メートル |
2.51メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
電気点火機関 |
出力 |
73キロワット |
80キロワット |
3 事実の経過
八雲は、航行区域を限定沿海区域とし、平成15年5月に交付された五級小型船舶操縦士免状を有するA受審人が1人で乗り組み、遊走の目的で、平成15年7月20日16時14分寺泊港第一防波堤灯台から024.5度(真方位、以下同じ。)3.8海里の、193.2メートル三角点(以下「三角点」という。)から200度1,850メートルの新潟県三島郡寺泊町の野積海岸を発し、同海岸100メートルばかり沖合での遊走を始めた。
16時14分36秒A受審人は、三角点から209度1,150メートルの地点で、針路を190度に定め、時速30キロメートルの対地速力(以下「速力」という。)で出発地点に向けて進行した。
16時14分55秒A受審人は、三角点から205.5度1,290メートルの地点に至り、右舷船首31度55メートルのところに、旋回しながら遊走中のサトウを視認したものの、同船がその場で旋回していたので、そのまま直進した。
16時14分57秒A受審人は、右舷船首46度50メートルのところにサトウを認めたが、同船との船間距離が30メートルばかりあったので大丈夫と思い、針路を左に転じるなどして同船と十分な船間距離をとることなく続航した。
16時14分58秒A受審人は、同方位30メートルのところに、衝突のおそれがある態勢で向首接近するサトウを認め、慌てて速力を減じるとともにハンドルを左にとったが、及ばず、16時15分00秒三角点から206度1,325メートルの地点において、八雲の右舷船尾部に、サトウの船首が前方から80度の角度をもって衝突した。
当時、天候は晴で風力1の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
また、サトウは、航行区域を限定沿海区域とし、平成14年6月に交付された五級小型船舶操縦士免状を有するB受審人が1人で乗り組み、遊走の目的で、平成15年7月20日16時05分三角点から203度1,370メートルの野積海岸を発し、同海岸沖合での遊走を始めた。
B受審人は、遊走を続けたのち、三角点から207度1,350メートルの地点に至り、その場で右旋回を始め、16時14分55秒左舷船首方55メートルばかりのところに、南下する八雲を視認できる状況にあったものの、遊走することに気を取られ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。
16時14分57秒B受審人は、旋回を終えて出発地点に戻ることにし、砂浜近くにある浅瀬を避けて針路を090度に定め、時速35キロメートルの速力で直進を始めたとき、そのころ左舷船首34度50メートルのところに、衝突のおそれがある態勢で接近する八雲を視認することができたが、依然遊走することに気を取られ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、接近する同船に気付かず、速やかに機関を停止するなどして八雲を避けることなく進行した。
16時14分58秒B受審人は、ふと船首方を見たとき、左舷船首34度30メートルのところに、接近する八雲を初めて視認し、衝突の危険を感じてハンドルを左一杯にとったが、及ばず、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、八雲は、右舷中央部から船尾にかけて舷側外板を圧壊し、廃船とされ、サトウは、船底外板に凹損などを生じたが、のち修理された。また、A受審人は、右臀部血腫を、B受審人は、右足関節捻挫などをそれぞれ負った。
(原因)
本件衝突は、新潟県三島郡寺泊町野積海岸沖合において、遊走中のサトウが、見張り不十分で、遊走中の八雲を避けなかったことによって発生したが、八雲が、十分な船間距離をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
B受審人は、新潟県三島郡寺泊町野積海岸沖合において、水上オートバイで遊走する場合、左方から接近する八雲を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、遊走することに気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、左方から衝突のおそれがある態勢で接近する八雲に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、同船の右舷中央部から船尾にかけての舷側外板を圧壊して廃船とさせるとともに自船の船底外板に凹損を生じさせ、また、A受審人に右臀部血腫を負わせるとともに自らも右足関節捻挫などを負うに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、新潟県三島郡寺泊町野積海岸沖合において、水上オートバイで遊走する場合、サトウの動向に適切に対応できるよう、同船と十分な船間距離をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船との船間距離が30メートルばかりあったので大丈夫と思い、十分な船間距離をとらなかった職務上の過失により、サトウの動向に適切に対応できずに同船との衝突を招き、前示損傷を生じさせるとともに負傷を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。