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平成16年神審第23号
件名

プレジャーボートマリーナファイブプレジャーボートマリホ衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年8月10日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(平野研一)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:マリーナファイブ船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:マリホ船長 操縦免許:小型船舶操縦士 

損害
マリーナファイブ・・・ステム及び船首左舷外板に擦過傷
マリホ・・・左舷中央ガンネルに凹損、B受審人が肋骨骨折の負傷

原因
マリーナファイブ・・・注意喚起信号不履行、条例等による航法(琵琶湖等水上安全条例)不遵守
マリホ・・・見張り不十分、条例等による航法(琵琶湖等水上安全条例)不遵守、操船不適切

裁決主文

 本件衝突は、マリーナファイブが、注意喚起信号を行わず、発進を見合わせなかったことと、マリホが、見張り不十分で、マリーナファイブとの安全な距離を保たないで、蛇行運転を続けたこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年9月7日16時00分
 滋賀県琵琶湖西岸
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート プレジャーボート
  マリーナファイブ マリホ
全長 6.37メートル 2.77メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 66キロワット 30キロワット

3 事実の経過
 マリーナファイブ(以下「マ号」という。)は、船体中央部右舷側に操縦席を設けた定員7人のFRP製モーターボートで、平成14年10月交付の五級小型船舶操縦士免状を受有するA受審人が1人で乗り組み、バス釣りの目的で、平成15年9月7日15時50分滋賀県大津市雄琴町の琵琶湖西岸に所在するマリーナ雄琴の東方沖合約15メートルの膝ほどの深さの浅瀬に止め、発進の準備を行った。
 ところで、動力船の操船者は、琵琶湖において、琵琶湖等水上安全条例により、他の船舶との間に安全な距離を保たないで、蛇行運転することなどが禁止されていた。
 A受審人は、同行した知人が、マリーナ雄琴から借り受けたマ号を、同人から更に借りたもので、同号を操縦するのはこの日が初めてであった。
 15時55分A受審人は、マ号に同乗する高校生3人に、船外機が湖底に接触しないよう、マ号を沖合に向けて押させ、同時59分半1メートルほどの深さで、マリーナ雄琴の東方沖合約25メートルとなる、大津市雄琴町の126.1メートル頂所在の山田三角点(以下「基点」という。)から140度(真方位、以下同じ。)1,360メートルの地点で、高校生3人をマ号に乗せ、船首0.3メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、操縦席に立った姿勢で発進準備を整え、船首を045度に向けて機関を始動しようとしたとき、右舷船首45度50メートルに、安全な距離を保たないで、蛇行運転をしながら接近するマリホを初めて認めたが、同船が自船を替わしてくれるものと思い、注意喚起信号を行うことも、マリホが前路を航過するまで、発進を見合わせることもしなかった。
 15時59分半少し過ぎA受審人は、前示地点において、針路を045度に定め、機関を極微速力前進にかけ、2.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で発進した。
 16時00分少し前A受審人は、マリホが、依然蛇行運転をしたまま接近するので、衝突の危険を感じて機関を中立とし、更に機関を後進にかけたものの及ばず、16時00分基点から139度1,360メートルの地点において、マ号は、原針路を向いたまま、行きあしがほぼなくなったとき、その船首が、マリホの左舷中央ガンネルに前方から44度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はなく、視界は良好であった。
 マリホは、定員2人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで、平成14年4月交付の四級小型船舶操縦士免状を受有するB受審人が1人で乗り組み、遊走の目的で、船首尾とも0.1メートルの等喫水をもって、平成15年9月7日15時45分マリーナ雄琴に隣接する湖岸を発し、沖合に向かった。
 B受審人は、2年ほど前知人らとともにマリホを購入し、毎年マリーナ雄琴近辺で遊走を楽しみ、当日は、マリホを含め3隻の水上オートバイを使用し、同人らとともに同マリーナ東方沖合約400メートルにある雄琴沖総合自動観測所までの水域で遊走していた。
 15時59分半B受審人は、基点から138度1,390メートルの地点で、290度の方向に向いて蛇行運転を繰り返しながら、機関を半速力前進にかけ、10.8ノットの速力で進行した。
 このときB受審人は、左舷船首45度50メートルのところに、停留中のマ号を認めることができ、このまま蛇行運転で進行すると同船との距離が20メートルばかりとなって、マ号との安全な距離を保つことができない状況となったが、付近に支障となる他船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付くことなく続航した。
 16時00分わずか前B受審人は、依然として、安全な距離を保たないで、蛇行運転をしながら進行中、発進したマ号の船首を認め、とっさに右舵をとったものの効なく、マリホは、船首が269度を向いたとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、マ号は、ステム及び船首左舷外板に擦過傷を、マリホは左舷中央ガンネルに凹損をそれぞれ生じ、B受審人が、肋骨骨折を負った。 

(原因)
 本件衝突は、滋賀県琵琶湖西岸雄琴町沖合において、マ号が、注意喚起信号を行わず、発進を見合わせなかったことと、マリホが、見張り不十分で、マ号との安全な距離を保たないで、蛇行運転を続けたこととによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、滋賀県琵琶湖西岸雄琴町沖合において、マ号が発進する方向に、安全な距離を保たないで、蛇行運転をしながら接近するマリホを認めた場合、注意喚起信号を行うべき注意義務があった。しかし、同人は、同船が自船を替わしてくれるものと思い、注意喚起信号を行わなかった職務上の過失により、その後発進してマリホとの衝突を招き、マ号のステム及び船首左舷外板に擦過傷及びマリホの左舷中央ガンネルに凹損をそれぞれ生じさせ、また、B受審人に肋骨骨折を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、滋賀県琵琶湖西岸雄琴町沖合において、蛇行運転をしながら遊走する場合、マ号を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、付近に支障となる他船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、マ号に気付かず、同船との安全な距離を保たないで蛇行運転を続け、発進したマ号との衝突を招き、両船に前示の損傷等を生じさせ、自身が負傷するに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図
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