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平成15年神審第117号
件名

プレジャーボートうしお丸遊漁施設衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年8月5日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(橋本 學)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:うしお丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
うしお丸・・・プロペラブレード及び同シャフトを曲損
遊漁施設の釣り人が右上腕骨開放骨折などの負傷

原因
見張り不十分

裁決主文

 本件は、見張り不十分で、沖合に設置されていた遊漁施設に向首進行したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月24日13時40分
 徳島県内海
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートうしお丸
登録長 7.54メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 36キロワット

3 事実の経過
 うしお丸は、漁船型のFRP製プレジャーボートで、平成14年1月に交付された一級小型船舶操縦士免状を有するA受審人が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.5メートル船尾0.9メートルの喫水をもって、同15年7月24日13時20分徳島県高島(以下、各島の所属県は全て同じ。)所在の自宅前私設桟橋を発し、高島と大毛島間の寿久ノ海及び両島と島田島に囲まれた内海を経由して、同県亀浦港沖合の釣り場へ向かった。
 ところで、内海の高島北方海域には「かせ」或いは「かせ船」と呼ばれる、長さ約5.4メートル幅約1.8メートル及び水面上の高さ約35センチメートルの和船型漁船を転用した遊漁施設(以下「釣り筏」という。)が、前方及び後方の左右四隅を錨で固定した状態で多数設置されていることから、それらと衝突しないよう、十分な注意を要する海域であるが、A受審人は、当該海域を頻繁に行き来していたことから、釣り筏が設置されている場所などについては、概ね、知っていたうえ、自船が全速力前進で航走すると、船首浮上により舳先が少しばかり水平線に接し、船首部両舷に渡って約5度の範囲に死角が生じる状態であったので、平素は、適宜、船首を左右に振って蛇行するなどして、船首死角を補う見張りを十分に行い、釣り筏と衝突しないよう、慎重に航行していたものであった。
 A受審人は、自宅前の前示桟橋を離桟後、寿久ノ海を経て内海を北上したのち、島田島と大毛島の間に掛かる堀越橋下の水路(以下「堀越水路」という。)を経由する進路で前示釣り場へ向かっていたところ、同橋の手前まで来たとき、折悪しく、潮流が強い逆潮となり、同水路を通過することが困難となったことから、やむなく、北泊ノ瀬戸へ迂回する進路に変更して小鳴門海峡へ向けて反転したのち、13時30分瀬戸港堂ノ浦西防波堤灯台から061度(真方位、以下同じ。)2,670メートルの地点で、針路を225度に定め、機関を全速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
 そして、13時38分A受審人は、同灯台から097度930メートルの地点に至ったとき、正船首方500メートルのところに、高島の最も沖合に設置されていた釣り筏を視認でき、しばらくして、これに向首したまま、衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、釣り筏が多数設置されている同島沖合の海域から遠く離れて、島田島に近い海域を航行していたことから、前路に釣り筏は設置されていないものと思い、平素のように、適宜、船首を左右に振って蛇行することなく、船首死角を補う見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かなかった。
 こうして、A受審人は、その後も、依然として、船首死角を補う見張りを十分に行わず、正船首方の釣り筏に気付かないまま、これを避けることなく進行中、13時40分瀬戸港堂ノ浦西防波堤灯台から129度750メートルの地点において、うしお丸は、原針路、原速力で、その船首が、東北東方に向けて設置されていた釣り筏の左舷船首部に、前方から25度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好であった。
 衝突の結果、うしお丸は、プロペラブレード及び同シャフトを曲損し、1人で釣り筏に乗っていた釣り人が、右上腕骨開放骨折などの傷を負った。 

(原因)
 本件は、徳島県内海において、堀越水路を経由する進路で亀浦港沖合の釣り場へ向かって航行中、強い逆潮のため同水路を通過することが困難となり、北泊ノ瀬戸へ迂回する進路に変更して小鳴門海峡へ向けて回航する際、見張り不十分で、正船首方の釣り筏を見落とし、これに向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、徳島県内海において、堀越水路を経由する進路で亀浦港沖合の釣り場へ向かって航行中、強い逆潮のため同水路を通過することが困難となり、北泊ノ瀬戸へ迂回する進路に変更して小鳴門海峡へ向けて回航する場合、船首浮上によって船首部に死角が生じていたのであるから、高島北方海域に多数設置されている和船型漁船を転用した釣り筏を見落とすことがないよう、適宜、船首を左右に振って蛇行するなどして、船首死角を補う見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、釣り筏が設置されている同島沖合の海域から遠く離れて、島田島に近い海域を航行していたことから、付近に釣り筏はないものと思い、船首死角を補う見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路に設置されていた釣り筏に気付かず、これに向首進行して衝突を招き、自船のプロペラブレード及び同シャフトを曲損させるとともに、1人で釣り筏に乗っていた釣り人に、右上腕骨開放骨折などの傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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