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平成16年仙審第27号
件名

プレジャーボートブルーシャーク2漁船第八幸運丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年8月26日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(原 清澄、勝又三郎、内山欽郎)

理事官
西山烝一

受審人
A 職名:ブルーシャーク2船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:第八幸運丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
ブルーシャーク2・・・ステムに亀裂、方形キール及び船底外板に破損など
第八幸運丸・・・船首部両舷ブルワーク及びラインホーラーなどに破損

原因
ブルーシャーク2・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
第八幸運丸・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、ブルーシャーク2が、見張り不十分で、漂泊中の第八幸運丸を避けなかったことによって発生したが、第八幸運丸が、見張り不十分で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受信人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年12月15日06時35分
 青森県八戸港沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートブルーシャーク2 漁船第八幸運丸
総トン数 7.9トン 3.6トン
全長   12.08メートル
登録長 10.65メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 253キロワット 253キロワット

3 事実の経過
 ブルーシャーク2(以下「ブ号」という。)は、自動操舵装置の設備を有しない、遊漁船業に従事するFRP製小型兼用船で、平成11年3月に交付された一級小型船舶操縦士免状を有するA受審人が1人で乗り組み、釣りを行う目的で、船首0.5メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、法定灯火を点灯したうえ、平成15年12月15日06時10分青森県八戸港の新井田川左岸の係留地を発し、同県鮫角沖合の釣り場に向かった。
 発航後、A受審人は、暖機運転を兼ねて機関回転数を毎分1,000とし、7.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で東航路に向かい、06時25分ころ八戸港白銀北防波堤灯台から302度(真方位、以下同じ。)70メートルの地点で同航路を出て、以後、速力を徐々に上げながら、前示釣り場に向かった。
 06時29分ころA受審人は、鮫角灯台から306度1,180メートルの、八戸港の港域線上に位置する日出岩の西方沖合130メートルのところに至り、前路の状況を一瞥(いちべつ)したところ他船を認めなかったので、船体中央部やや後方に設備された操縦席に座り、更に速力を上げながら航行を続けた。
 ところで、ブ号は、速力を11ノット程度まで上げると船首が浮上して前路に死角を生じるようになり、機関回転数を毎分1,700まで上げると正船首方に20度ばかりの死角を生じる構造となっていた。そこで、A受審人は、平素、この死角を補うため、適宜操縦席から立ち上がっては周囲の見張りを行うようにしていた。
 06時30分A受審人は、鮫角灯台から323.5度1,340メートルの地点に達したとき、針路を065度に定め、機関回転数を毎分1,700とし、16.0ノットの速力で進行した。
 06時33分A受審人は、鮫角灯台から017.5度1,820メートルの地点に達したとき、正船首990メートルのところに、船首を南東方に向け、漂泊して操業中の第八幸運丸(以下「幸運丸」という。)を視認することができたものの、操縦席に座ったまま、前路の見張りを十分に行っていなかったので、同船に気付かなかった。
 06時34分A受審人は、鮫角灯台から027度1.2海里の地点に達したとき、衝突のおそれがある態勢で、同方位500メートルのところまで幸運丸に接近していたが、前路に他船はいないものと思い、死角を補う見張りを十分に行っていなかったので、依然としてこのことに気付かず、同船を避けることなく続航した。
 こうして、ブ号は、A受審人が幸運丸を見落としたまま進行中、06時35分鮫角灯台から034度1.4海里の地点において、原針路、原速力のまま、その船首が幸運丸の右舷船首部に後方から70度の角度をもって衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、日出は06時49分であった。
 また、幸運丸は、たこかご漁に従事するFRP製漁船で、平成15年12月8日に交付された一級小型船舶操縦士免許を有するB受審人が同人の息子と2人で乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、法定灯火を点灯したうえ、平成15年12月15日05時55分青森県大久喜漁港を発し、前示衝突地点付近の漁場に向かった。
 06時12分B受審人は、漁場に至り、機関を中立運転として漂泊し、船首を南東方に向け、船首部右舷側に設置したラインホーラーを使用し、舷側に取り付けた三方ローラーを介してたこかごの揚収作業を始めた。
 ところで、B受審人は、自らラインホーラーの側に位置し、幹縄とともに揚がってくるたこかごを取り付けた枝縄を、三方ローラーを替わして息子に渡し、息子にはかごに入っているたこを取り出す一方、かごに入ったひとでなどのごみを出し、新たに餌の冷凍サバをかごに詰め、これをハッチ蓋の上に積み上げる作業に従事させていたが、枝縄が揚がってくる際、三方ローラーにかごが当たると蓋が開いてたこが逃げ出すので、海中から揚がってくるたこかごに注意を奪われて作業をしていた。
 06時33分B受審人は、船首が135度を向いていたとき、右舷船尾70度990メートルのところに、衝突のおそれがある態勢で自船に向首接近するブ号を視認することができたものの、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。
 06時34分B受審人は、同方位500メートルまで接近したブ号を視認することができたが、依然としてたこかごの揚収作業に気をとられ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、注意喚起信号を行うことも、更に接近した際、衝突を避けるための措置をとることもなく同作業を続けた。
 幸運丸は、B受審人が接近するブ号に気付かないまま、たこかごの揚収作業中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ブ号は、ステムに亀裂、方形キール及び船底外板に破損などを生じ、幸運丸は、船首部両舷ブルワーク及びラインホーラーなどに破損を生じた。 

(原因)
 本件衝突は、日出前の薄明時、青森県八戸港沖合において、ブルーシャーク2が、見張り不十分で、漂泊して操業中の第八幸運丸を避けなかったことによって発生したが、第八幸運丸が、見張り不十分で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、日出前の薄明時、青森県八戸港沖合において、単独で船橋当直に当たって釣り場に向かう場合、ブルーシャーク2が速力を上げると船首部に死角を生じる構造の船であったから、前路で漂泊して操業中の第八幸運丸を見落とすことのないよう、適宜立ち上がって前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、前路を一瞥しただけで他船は存在しないものと思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、いすに腰をかけたまま、操船にあたり、正船首方の死角の中に入った第八幸運丸に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、自船のステムに亀裂等を生じさせ、第八幸運丸の船首部両舷ブルワーク及びラインホーラーなどに破損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 B受審人は、日出前の薄明時、青森県八戸港沖合において、漂泊して前日設置したたこかごの揚収作業を行う場合、出港するブルーシャーク2を早期に視認できるよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、たこかごの揚収作業に気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある態勢で、向首接近するブルーシャーク2に気付かず、注意喚起信号を行うことも、更に接近した際、衝突を避けるための措置をとることもなく、たこかごの揚収作業を続けて同船との衝突を招き、前示損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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