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平成15年神審第101号
件名

プレジャーボートまっちゃんIII防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年7月22日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(甲斐賢一郎)

理事官
阿部能正

受審人
A 職名:まっちゃんIII船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首部を圧壊
船長が左手示指骨折など及び同乗者2人が右上腕挫創、右上腕骨骨折などの負傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月31日20時30分
 和歌山県日高港
 
2 船舶の要目
船種船名 レジャーボートまっちゃんIII
登録長 6.39メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 51キロワット

3 事実の経過
 まっちゃんIII(以下「マ号」という。)は、船体中央に操縦席を有するFRP製プレジャーボートで、平成13年11月19日交付の四級小型船舶操縦士免状を受有するA受審人が1人で乗り組み、友人2人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.1メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、平成15年7月31日15時30分ごろ和歌山県御坊市内の日高川河口に架かる天田橋上流の南東岸の定係地を発した。
 A受審人は、自船の航跡をGPSプロッターに残しながら、日高港港域を抜け、16時30分頃同港南東方の切目埼(きれめさき)沖の釣場に至り、錨泊して魚釣りをしたのち、19時50分動力船が表示する灯火を表示し、釣場を離れて定係地に向けて帰途についた。
 ところで、次図に示すように、日高港港内では関西電力御坊発電所人工島北西角から北西に伸びる関電御坊発電所防波堤の延長工事が進められていた。当時の工事の状況は、同防波堤の先端から長さ170メートルのケーソン(以下「既設延長防波堤」という。)と、その延長線上140メートル離した沖合に長さ52メートルのケーソン(以下「新設延長防波堤」という。)が設置されていたが、既設延長防波堤の北西端と新設延長防波堤の北西及び南東端には、それぞれ2個1組の標識灯が取り付けられていた。また、前記両防波堤を取り囲む海域には工事区域が設定され、その区域を示すために7個の灯浮標が設置されていた。
 A受審人は、同工事区域付近を昼夜とも何度か航行していたので、工事の状況や標識灯及び灯浮標については十分承知しており、いつも工事区域の外側を航行するようにしていた。
 20時25分A受審人は、関電御坊発電所防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から202度(真方位、以下同じ。)1,200メートルの地点に至って、GPSプロッターの出港時の航跡に沿って、針路を333度に定め、機関を回転数毎分4,000より若干落とし気味の12.0ノットの対地速力で進行した。
 20時26分A受審人は、防波堤灯台から216度1,000メートルの地点で、鰹島から沖側に離れるつもりで左舵を取って30度ほど船首を回したところ、前方に漁船が使用する集魚灯を発見したので、これに接近しないよう右舵に取り直して大きく右転を開始した。
 20時28分半A受審人は、防波堤灯台から269度670メートルの地点にて、針路を052度とした。このときA受審人は、右舷船首10度ほどのところに工事区域を示すL2灯浮標の灯火を見つけたが、同灯火が工事区域の北西端を示すL1灯浮標のものであり、これを右舷に見て日高川河口を示す灯浮標に直進すればよいものと思い、GPSプロッターを活用するなどして船位の確認を十分に行わないで、前方遠くに日高川河口を示す灯浮標を探しながら、近くのL1灯浮標及び新設延長防波堤の標識灯の灯火に気付かないまま、同防波堤の北西部付近に向かって続航した。
 20時30分マ号は、防波堤灯台から319度400メートルの地点において、同一針路、原速力のまま、その船首が新設延長防波堤の北西部に衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期であった。
 衝突の結果、マ号は船首部を圧壊したが、のち修理され、A受審人は左手示指骨折などを負い、同乗者2人は右上腕挫創、右上腕骨骨折などをそれぞれ負った。 

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、和歌山県日高港港内を航行する際、船位の確認が不十分で、防波堤延長工事中の新設延長防波堤に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、和歌山県日高港港内を航行する場合、防波堤延長工事中の新設延長防波堤に接近しないよう、GPSプロッターを活用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、右舷船首に見た工事区域を示すL2灯浮標の灯火が北西端を示すL1灯浮標のものであり、この灯火を右舷に見て日高川河口の灯浮標に直進すればよいものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、新設延長防波堤への接近に気付かないまま向首進行して衝突を招き、船首部に圧壊を生じさせ、自身も負傷し、同乗者2人を負傷させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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