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平成16年横審第19号
件名

漁船第十五倉政丸漁船篤彦丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年7月21日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(中谷啓二)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:第十五倉政丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士 
B 職名:篤彦丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第十五倉政丸・・・船首部に擦過傷
篤彦丸・・・右舷船側外板に破口、同乗者1人が肋骨骨折等の負傷

原因
第十五倉政丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
篤彦丸・・・船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第十五倉政丸が、見張り不十分で、錨泊中の篤彦丸を避けなかったことによって発生したが、篤彦丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年9月14日09時00分
 愛知県篠島港沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十五倉政丸 漁船篤彦丸
総トン数 11.01トン 0.60トン
登録長 14.00メートル 5.72メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
漁船法馬力数 150 30

3 事実の経過
 第十五倉政丸(以下「倉政丸」という。)は、引き網漁業船団の漁獲物運搬及び魚群探索に従事するFRP製漁船で、A受審人(昭和52年6月3日二級小型船舶操縦士免許を取得)が1人で乗り組み、翌日のしらす漁に備えた魚群探索の目的で、船首0.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成15年9月14日06時00分愛知県篠島北岸の篠島港を発し、同探索を行いながら伊勢湾及び三河湾を移動して同港北東方沖約1.5海里の日間賀島東方海域に至り、探索を終えて帰途に就いた。
 08時56分A受審人は、篠島港沖防波堤灯台(以下「沖防波堤灯台」という。)から031度(真方位、以下同じ。)2,020メートルの地点で、針路を篠島港沖に向けて198度に定め、機関を毎分約1,600回転の航海速力にかけ、15.0ノットの対地速力で、操舵室で椅子に腰掛け手動操舵により進行した。
 定針したころA受審人は、左舷前方に僚船が北上してくるのを認め、当日が禁漁日であり、同船も翌日に備えた魚群探索を行っていると思い、その動向が気になり、専ら同船の方を見て続航した。
 08時58分A受審人は、沖防波堤灯台から039度1,630メートルの地点に達したとき、正船首810メートルのところに、北西方に向首している篤彦丸を視認でき、その後同船が船首から錨索を繰り出し風に立って停留している様子から、所定の形象物を掲げていなかったものの錨泊中であることが分かる状況で、同船に向首して衝突のおそれのある態勢で接近したが、前示の僚船がどの辺りを探索するかその模様を気にかけ、後方に替わっていた同船の方を見て、前路の見張りを十分に行わなかったので、篤彦丸に気付かず、同船を避けないまま進行した。
 08時59分少し過ぎA受審人は、入港に備え10.0ノットに減速し、依然、前路の見張りを十分に行わないまま続航中、突然、衝撃を感じ、倉政丸は、09時00分沖防波堤灯台から057度920メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その船首が、篤彦丸の右舷中央部に前方から63度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 また、篤彦丸は、刺網漁業に使用される、船外機を取り付けたFRP製漁船で、B受審人(平成15年9月29日二級小型船舶操縦士(5トン限定)と特殊小型船舶操縦士免許に更新)が1人で乗り組み、知人1人を同乗させ、余暇としてのあじ釣りの目的で、有効な音響による信号手段を講じないまま、船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日08時00分篠島港を発し、同時05分前示の衝突地点付近に至って機関を停止し、水深約7メートルのところに船首から投錨のうえ直径9ミリメートルの合繊製錨索を20メートルばかり繰り出し、所定の形象物を掲げずに錨泊して釣りを始めた。
 B受審人は、08時56分ごろ折からの北西風を受けて315度に向首し、中央部甲板で両舷間に渡した板に腰掛けて手釣りをしていたとき、日間賀島東方に倉政丸を初認し、同時58分同船が右舷船首63度810メートルに近づき、その後自船に向首したまま衝突のおそれのある態勢で接近するのを認めたが、いずれ倉政丸が自船を避けるものと思い、機関を始動して移動するなど衝突を避けるための措置をとらずに錨泊中、至近に迫った同船に危険を感じ、同乗者とともに手を振り、次いで海中に飛び込んだ直後、篤彦丸は、315度に向首したまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、倉政丸は船首部に擦過傷を、篤彦丸は右舷船側外板に破口をそれぞれ生じ、同乗者1人が肋骨骨折等を負った。 

(原因)
 本件衝突は、愛知県篠島港沖合において、同港に向け帰航中の倉政丸が、見張り不十分で、釣りをして錨泊中の篤彦丸を避けなかったことによって発生したが、篤彦丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、篠島港北東方沖合で魚群探索を終え同港に向け帰航する場合、前路で錨泊中の篤彦丸を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、僚船の探索模様を気にかけ後方を見て、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、篤彦丸に気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、倉政丸の船首部に擦過傷を、篤彦丸の右舷船側外板に破口をそれぞれ生じさせ、篤彦丸の同乗者1人に肋骨骨折等を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、篠島港沖合で釣りをして錨泊中、倉政丸が自船に向首したまま衝突のおそれのある態勢で接近するのを認めた場合、機関を始動して移動するなど衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、いずれ倉政丸が自船を避けるものと思い、機関を始動して移動するなど衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、衝突を招き、両船に前示の損傷をそれぞれ生じさせ、同乗者を前示のとおり負傷させるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図
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