(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年8月26日17時30分
北海道浦河港南方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第五十一幸進丸 |
漁船第二十五天洋丸 |
総トン数 |
19.4トン |
9.7トン |
全長 |
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19.05メートル |
登録長 |
16.18メートル |
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機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
140 |
120 |
3 事実の経過
第五十一幸進丸(以下「幸進丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人(昭和50年6月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首1.3メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成14年8月26日13時00分北海道浦河港を発し、同港南東方12海里の漁場に向かった。
A受審人は、14時ごろ漁場に到着し、ソナーや魚群探知機により探索し、船体が常に魚影の真上にくるように操船していかを釣る、かんどりと呼ばれる漁法(以下「かんどり漁」という。)で操業を行って北西進を続け、いか500キログラムばかりを獲たところで、同業船が多数散在している方に漁場を移動することとし、17時20分浦河灯台から207.5度(真方位、以下同じ。)3.8海里の地点を発進して針路を270度に定め、機関を微速力前進にかけて4.0ノットの対地速力で進行した。
発進後、A受審人は、折から太陽が船首方の水平線上方にあり逆光となった状況下、レーダーを作動して魚群探索を行いながら続航し、17時25分浦河灯台から211.5度4.0海里の地点に達したとき、正船首620メートルに漂泊中の第二十五天洋丸(以下「天洋丸」という。)を認めることができ、その後同船に衝突のおそれがある態勢で接近したが、ソナーを見ることに気を取られ、サングラスを用意しておくか手をかざして太陽光を遮りながら船首方を注意深く見るなり、レーダーを活用するなどして見張りを十分に行わなかったので、これに気付かず、同船を避けることなく進行中、17時30分浦河灯台から215.5度4.2海里の地点において、幸進丸は、原針路、原速力のまま、その船首部が天洋丸の船首部に平行に衝突した。
当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は高潮時で、日没時刻は18時15分であった。
また、天洋丸は、いか一本釣り漁業に従事する、電気ホーンを装備したFRP製漁船で、B受審人(平成元年11月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか1人が乗り組み、船首0.5メートル船尾1.9メートルの喫水をもって、同日13時00分浦河港を発し、14時00分同港南方沖合8海里の漁場に至り、かんどり漁を開始した。
B受審人は、魚影を追いながら操業を続けて北上し、17時15分衝突地点付近に至り、機関を中立運転とし、スパンカを掲げ船首を風に立てて漂泊を開始し釣り糸を降ろした。
17時25分B受審人は、浦河灯台から215.5度4.2海里の地点で、船首が090度に向いているとき、正船首620メートルに幸進丸を認めることができ、その後自船に向首し衝突のおそれがある態勢で接近したが、ソナーの魚影反応に気を取られ、見張りを十分に行わなかったので、これに気付かず、警告信号を行わず、更に接近しても機関を使用して衝突を避けるための措置をとることなく漂泊中、17時30分わずか前正船首至近に迫る幸進丸を初めて認め、拡声機で止まれと叫び機関を後進にかけたものの及ばず、船首が090度を向首したまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、幸進丸は、船首部に擦過傷を生じ、天洋丸は、船首部に圧壊等を生じたが、のち修理された。
(原因)
本件衝突は、北海道浦河港南方沖合において、日没前の太陽が船首方にあり逆光となる状況下、幸進丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中の天洋丸を避けなかったことによって発生したが、天洋丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、北海道浦河港南方沖合において、日没前の太陽が船首方にあり逆光となる状況下、いか一本釣り漁の同業船が多数散在する漁場に向け航行する場合、前路で漂泊中の天洋丸を見落とすことのないよう、サングラスを用意しておくか手をかざして太陽光を遮りながら船首方を注意深く見るなり、レーダーを活用するなどして見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、ソナーを見ることに気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、天洋丸に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、幸進丸の船首部に擦過傷を、天洋丸の船首部に圧壊等をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、北海道浦河港南方沖合において、漂泊していか一本釣り漁を行う場合、接近する幸進丸を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、ソナーの魚影反応に気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、同船が自船に向首し接近していることに気付かず、機関を使用して衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続け、幸進丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって、主文のとおり裁決する。