(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年9月24日18時02分
宮城県女川湾
2 船舶の要目
船種船名 |
旅客船レスポワール |
総トン数 |
82トン |
全長 |
25.82メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,471キロワット |
3 事実の経過
レスポワールは、宮城県女川港、同県出島及び寺間各漁港間の定期航路に就航する軽合金製旅客船で、A受審人ほか2人が乗り組み、旅客8人を乗せ、船首1.2メートル船尾1.7メートルの喫水をもって、平成15年9月24日17時57分最終便として出島漁港を発し、寺間漁港に向かった。
ところで、寺間漁港の南西方沖合には丸島が存在し、B組合が、同島南端標柱から199.5度(真方位、以下同じ。)250メートル、250.5度370メートル、及び001.5度345メートルの各地点を結ぶ海域内に、定置網を設け、同漁港に入出港する船舶に、その存在を十分に示すよう同網の端に灯浮標を取り付け、平成15年9月1日から同20年8月31日までの、毎年5月1日から10月31日までの間、定置漁業の免許状を受けて同網を設置していた。
また、A受審人は、平成11年C社に入社し、その後、定期航路の旅客船船長を務め、寺間漁港への入出航を多数経験していたことから、同漁港南西方沖合の定置網設置状況を十分に把握していた。
出航後、A受審人は、女川湾に面する出島水道を南下し、寺間漁港南西方沖合に達したころ、定置網の東方から女川港に向けて航行する船舶を視認し、同湾のほぼ中央で、高速のまま同船を避けるためもあって左小舵角をとり、大角度の左回頭を始めた。
18時00分半少し過ぎA受審人は、寺間港防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から214度1,560メートルの地点に達したとき、針路を同灯台に向首する034度に定め、機関回転数毎分1,700の全速力前進にかけ、24.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)として手動操舵で進行した。
18時01分少し前A受審人は、左回頭を終えて操舵目標の防波堤灯台に向首したが、大角度の左回頭をとったあとなので、船位が入航予定針路線より右偏しているものと思い、同針路線付近を航行しているかどうかを調べるなど船位を十分に確認することなく、針路を017度に転じたところ、定置網に向首する態勢となったものの、このことに気付かなかった。
A受審人は、定置網を探すことと、女川港に向かっている船舶の動静とに注意しながら航行していたところ、18時02分わずか前定置網の漁場区域を示す灯浮標の灯火を右舷船首70度方向に視認し、入航予定針路線付近を航行していれば同灯火を左舷側に視認するので同網に向首進行していることに気付き、推進器に絡網しないよう、直ちに機関のクラッチを中立とし、前進惰力で進行中、18時02分防波堤灯台から235度660メートルの地点において、レスポワールは、速力が12.0ノットに減じたとき、同網に乗り入れた。
当時、天候は曇で風力2の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、日没時刻は17時32分で、視界は良好であった。
その結果、レスポワールは、損傷がなく、定置網は、浮子綱及び錨綱を切断したが、のち修理された。
(原因)
本件定置網損傷は、日没後の薄明時、宮城県寺間漁港に入航するにあたり、船位の確認が不十分で、同漁港南西方沖合に設置された定置網に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、日没後の薄明時、宮城県女川湾に面する出島水道を南下し、同県寺間漁港に入航するため左小舵角をとり、大角度の左回頭をしたのち入航予定針路線付近を進行中、左転する場合、同漁港南西方沖合に定置網が設置されていることを知っていたのであるから、同網に向首進行しないよう、同針路線付近を航行しているかどうかを調べるなど船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、操舵目標である防波堤灯台に向首していたものの、大角度の左回頭をとったあとなので、船位が同針路線より右偏しているものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同網に向首進行して乗り入れ、同網の浮子綱及び錨綱を切断するに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。