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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成15年横審第118号
件名

プレジャーボート影丸遊泳者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成16年5月24日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(西田克史)

副理事官
河野 守

指定海難関係人
A 職名:影丸操縦者

損害
遊泳者が全治1箇月の通院加療を要する肋骨骨折

原因
無資格者が単独で操縦したこと、見張り不十分

裁決主文

 本件遊泳者負傷は、無資格者が単独で操縦したばかりか、見張り不十分で、遊泳者を避けなかったことによって発生したものである。
 
裁決理由の要旨理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年8月23日14時25分
 愛知県佐久島沿岸
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート影丸
登録長 2.73メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 86キロワット

3 事実の経過
 影丸は、カナダのB社が製造した最大搭載人員3人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで、A指定海難関係人が1人で乗り組み、遊走の目的で、船首尾とも0.2メートルの喫水をもって、平成15年8月23日14時17分愛知県佐久島の大浦海水浴場北側の海岸から西方30メートルばかりの地点を発し、西方に向かった。
 ところで、A指定海難関係人は、3年ほど前から水上オートバイの陸上保管、整備修理、保管場所と海上との間の輸送や水際での揚げ降ろしなどを行う仕事に就いていたことから、仕事仲間から教わったり自身で勉強するなどして、その操縦方法を修得していた。
 そして、A指定海難関係人は、2週間前に影丸の船舶所有者(以下「所有者」という。)から佐久島での海洋レジャーに誘われていたので、当日の午前同島に到着し、昼ごろ数人の仲間を連れた所有者と落ち合って食事をとったのち、大浦海水浴場付近で海水浴をしていたところ、所有者が持ってきた影丸と同型の水上オートバイを後日整備する予定が入っていたことから、点検を兼ねて試乗したい気分にかられ、自分が無資格であることを所有者に告げず、同人の承諾を得て単独で影丸に乗り組んだものであった。
 発航したA指定海難関係人は、西方40メートルばかりに至り、その付近で旋回を繰り返すなどして遊走したのち、停留して小休止を終えて発航地点に戻ることとし、14時23分佐久島港太井ノ浦防波堤灯台から330度(真方位、以下同じ。)910メートルの地点で、180度に向首していたとき、スロットルレバーを引いて時速25キロメートルの対地速力とし、ステアリングハンドルを左にとって発進した。
 発進時、A指定海難関係人は、左舷正横40メートルのところに、ほとんど静止して浮かんでいる遊泳者を視認することができ、その後、螺旋状(らせんじょう)に左旋回しながら同人に接近したが、操縦することだけに気を取られ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、遊泳者に気付かず、同人を避けずに進行した。
 こうして、A指定海難関係人は、数回左旋回を続けたのち、ステアリングハンドルを右に転じて間もなく、14時25分わずか前船首至近に遊泳者を初めて視認して驚き、急ぎスロットルレバーを放したが効なく、14時25分佐久島港太井ノ浦防波堤灯台から332度900メートルの地点において、影丸は、180度に向首したとき、原速力のまま、その左舷中央部が遊泳者に接触した。
 当時、天候は晴で風力2の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 その結果、影丸に損傷はなかったが、遊泳者が全治1箇月の通院加療を要する肋骨骨折を負った。 

(原因)
 本件遊泳者負傷は、愛知県佐久島沿岸において、無資格者が単独で操縦したばかりか、見張り不十分で、遊泳者を避けなかったことによって発生したものである。
 
(指定海難関係人の所為)
 A指定海難関係人が、愛知県佐久島沿岸において、無資格のまま単独で操縦したばかりか、周囲の見張りを十分に行わなかったことは、本件発生の原因となる。





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