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平成15年那審第65号
件名

漁船第一大光丸火災事件

事件区分
火災事件
言渡年月日
平成16年6月3日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(杉崎忠志、小須田 敏、加藤昌平)

理事官
上原 直

受審人
A 職名:第一大光丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
機関室内各種ケーブル、同室天井及び側壁などが焼損

原因
機関の運転及び保守管理不適切(機関室内のケーブルを束ねる結束バンドの点検不十分)

主文

 本件火災は、機関室内のキャブタイヤケーブルを束ねる結束バンドの点検が不十分で、主機始動用キャブタイヤケーブルの被覆が摩滅し、同ケーブルの導体が短絡したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年10月27日17時30分
 沖縄県伊是名島仲田港東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第一大光丸
総トン数 6.01トン
登録長 11.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 99キロワット

3 事実の経過
 第一大光丸(以下「大光丸」という。)は、昭和54年10月に進水した、延縄(はえなわ)漁業に従事する一層甲板型のFRP製漁船で、甲板下には、船首方から順に船首格納庫及び魚倉を、船体中央から船尾方にかけて機関室を、次いで船尾格納庫及び舵機庫などを備え、機関室の上部に操舵室を設けていた。
 機関室は、長さ約3メートル幅約2.3メートル高さ約1.4メートルで、その中央に、主機としてB社が製造した6CHC-T型と称する過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関を装備し、主機動力取出軸の右舷側にベルト駆動される舵機用油圧ポンプ、雑用水ポンプ及び空気圧縮機を、左舷側に揚錨機用油圧ポンプをそれぞれ備えていたほか、同室後部の右舷側に照明灯、航海計器などに給電する容量130アンペア時の船内電源用蓄電池2個を、左舷側に容量150アンペア時の主機始動用蓄電池2個及びビルジポンプなどを備えていた。
 一方、操舵室には、同室前部に始動スイッチ、回転計及び潤滑油圧力計などを組み込んだ主機計器盤並びに潤滑油圧力低下などの主機警報装置を、右舷側壁面にGPS、魚群探知器、配電盤及び主機始動用メインスイッチ(以下「メインスイッチ」という。)などを設け、同室囲壁後部に高さ約1.1メートル幅約1.3メートルの引き戸式出入口を設け、船尾甲板上で操船できるよう、同出入口上部に舵輪並びにワイヤ式の主機遠隔操縦ハンドル及び逆転減速機遠隔操作ハンドルを備えていた。また、同出入口後部の船尾甲板上には、FRP製ハッチカバーを有する長さ約55センチメートル(以下「センチ」という。)幅約60センチの機関室出入口を設けていた。
 ところで、主機始動用及び船内電源用などの電路は、竣工時のまま継続使用されているゴム絶縁のキャブタイヤケーブル(以下「ケーブル」という。)で、左右舷の各蓄電池からのケーブルがビルジポンプ、機関室照明灯及び主機セルモータなどのケーブルと同室右舷側後方から合わさっていくつかの束状となり、同側外板に沿って船首方に向かい、同側のやや船首寄りの箇所から立ち上がり、同室天井を貫通して操舵室に設けられた配電盤やメインスイッチなどに至るよう敷設されていて、船体振動の影響などを受けてケーブルが振動しないよう、結束バンドを使用して各種ケーブルが束ねられていた。
 そして、主機遠隔操縦ハンドル用リモコンワイヤ(以下「主機リモコンワイヤ」という。)は、操舵室囲壁後部の船尾甲板を貫通して機関室に至り、主機始動用蓄電池からメインスイッチに至る主機始動用ケーブル(以下「始動ケーブル」という。)と機関室右舷側外板の船尾寄りの箇所で交差して、主機右舷側前部にある主機燃料制御装置に接続されていたことから、始動ケーブルなどを束ねていた結束バンドに緩みや切損などが生じたまま主機の運転を続けると、始動ケーブルが振れ動き、その被覆が交差する主機リモコンワイヤのポリエチレン製外皮と接触を繰り返し、それぞれの接触部が摩滅して始動ケーブルの導体が短絡を生じるおそれがあった。
 A受審人は、昭和49年10月に一級小型船舶操縦士免許を取得したのち、平成9年9月に中古船の大光丸を購入し、沖縄県仲尾次漁港を基地として、同港を夕方に出港し、同県伊平屋島及び伊是名島周辺の漁場に至って操業したのち、せりに間に合うよう翌日05時ごろ帰港する操業形態のもとで周年操業に従事していた。
 そして、A受審人は、機関の取扱いについて、出港する前に主機オイルパンの油量や冷却清水タンクの水位などを確認したうえで操舵室の始動スイッチを操作して主機を始動させ、停止させるときには、その都度機関室に赴いて機側にある停止ハンドルを操作するようにしており、また、操業中に船内電力が不足することのないよう、自らが主機始動用及び船内電源用の各蓄電池の取替えを数年ごとに行うなどして、操船の傍ら機関の運転と保守管理にも当たっていたが、主機の運転中、船体振動が激しく、かつ、機関室が換気不足のため熱がこもりやすいこともあって、ケーブルが硬化気味となっている状況であったのに、主機セルモータが回転しないなどの不具合が生じていないので大丈夫と思い、緩みや切損の有無などについて、定期的に機関室内のケーブルを束ねる結束バンドを点検することなく運転を続けていた。
 ところが、機関室内の電路は、始動ケーブルなどを束ねていた結束バンドの数個が切損するなどして脱落し、船体振動などの影響を受けて始動ケーブルが、至近に敷設されていたうえ交差していた主機リモコンワイヤと接触を繰り返しているうち、いつしか始動ケーブルの被覆及び同ワイヤの外皮が摩滅し始めた。
 こうして、大光丸は、A受審人が船長として単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾1.1メートルの喫水をもって、平成15年10月27日15時00分仲尾次漁港を発し、主機を全速力前進にかけて伊是名島仲田港東方沖合の漁場に向け航行中、かねてから交差して、互いに接触を繰り返していた始動ケーブルの被覆及び主機リモコンワイヤの外皮がそれぞれ著しく摩滅、露出した始動ケーブルの導体が短絡を生じて過大電流が流れ、同被覆が着火、炎上し、付近の可燃物に延焼して機関室が火災となり、17時30分仲田港東防波堤灯台から真方位121度1,500メートルの地点において、予定していた漁場に到着した同人が、逆転減速機を中立とし、主機を停止させようと機関室出入口のハッチカバーを開放したところ、同出入口から多量の黒煙が吹き出すのを認めた。
 当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、海上にはうねりがあった。
 A受審人は、バケツで機関室に注水するなどして消火に当たり、その結果、17時50分ごろ鎮火したが、付近を航行中の引船に救助を求めた。
 大光丸は、来援した引船により仲田港に引き付けられ、同港において機関室内を点検したところ、各種ケーブル、同室天井及び同室側壁などが激しく焼損していることが判明し、のち焼損部の修理が行われた。 

(原因)
 本件火災は、機関の運転と保守管理に当たる際、機関室内のケーブルを束ねる結束バンドの点検が不十分で、始動ケーブルなどを束ねていた同バンドが切損したまま主機の運転が続けられ、始動ケーブルが交差していた主機リモコンワイヤと接触を繰り返し、始動ケーブルの被覆及び同ワイヤの外皮がそれぞれ著しく摩滅するようになり、露出した始動ケーブルの導体が短絡して過大電流が流れ、同被覆が着火、炎上し、付近の可燃物に延焼したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、機関の運転と保守管理に当たる場合、主機の運転中、船体振動が激しく、かつ、ケーブルが硬化気味となっている状況であったから、蓄電池から操舵室に至る始動ケーブルなどが他部と接触してその被覆が損傷することのないよう、緩みや切損の有無などについて、定期的に機関室内のケーブルを束ねる結束バンドを十分に点検すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、主機セルモータが回転しないなどの不具合が生じていないので大丈夫と思い、定期的に同室内のケーブルを束ねる同バンドを十分に点検しなかった職務上の過失により、始動ケーブルなどを束ねていた同バンドが切損していることに気付かないまま主機の運転を続け、交差していた始動ケーブルの被覆及び主機リモコンワイヤの外皮がそれぞれ著しく摩滅し、始動ケーブルの導体が短絡して過大電流が流れ、同被覆が着火、炎上し、付近の可燃物に延焼して同室火災を招き、同室内の各種ケーブル、同室天井及び同室側壁などを焼損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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