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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成16年門審第16号
件名

プレジャーボート英丸転覆事件(簡易)

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成16年5月17日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(長谷川峯清)

副理事官
園田 薫

受審人
A 職名:英丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士: 

損害
船体の上部構造物が大破し、のち廃船処理

原因
海象(磯波の危険性)に対する判断不適切

裁決主文

 本件転覆は、磯波の危険性に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年12月16日15時00分
 福岡県狩尾鼻沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート英丸
総トン数 1.2トン
全長 6.0メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 5キロワット

3 事実の経過
 英丸は、出力36キロワットの船外機及び魚群探知機を備えるFRP製プレジャーボートで、昭和51年2月に四級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み、同船外機を修理業者に引き渡す目的で、同修理業者から借用した出力5キロワットの船外機を、日本小型船舶検査機構の臨時検査を受けないまま船尾左舷側に仮設置し、船首0.15メートル船尾0.30メートルの喫水をもって、平成15年12月16日13時40分北九州市若松区ひびき川の係留地を発し、福岡県柏原漁港に向かった。
 ところで、柏原漁港の北東側にある狩尾鼻周辺は、同鼻が響灘に向かって舌状に突出した地形を呈し、その先端から北西方400メートルまで干出岩が拡延し、その周辺の海底が、突出した地形の海岸線にほぼ平行な形状で緩やかに傾斜し、同先端から北西方1,000メートル付近で水深約10メートルに落ち込む急崖になっていた。このため、響灘から陸岸に向かう波浪は、狩尾鼻付近の浅所に至ると、波浪の屈折や浅水変形などの性質から、急激に波長が短くなって波高が増大し、やがて砕波する波浪(以下「磯波」という。)に変化することがあり、小型の船舶が、この磯波に遭遇すると転覆のおそれがあることから、同鼻付近の水深の浅い海岸近くを航行する際には、磯波の危険性に注意する必要があった。また、狩尾鼻の北東方約1.5海里のところの同県妙見埼も同様の地形を呈していた。
 A受審人は、狩尾鼻付近が磯波の発生しやすい海底地形を呈する場所であることや、地元の漁師でも同鼻付近から離れるように注意深く航行しているということを、前示修理業者から聞いて知っていたが、これまでに柏原漁港に向けて何回か往復した経験があったものの、磯波に遭遇したことがなかったことから、同波の危険性について十分に配慮しないまま、同鼻の沖合を通航していた。
 こうして、A受審人は、発航後、英丸に装備の船外機をチルトアップし、同機の船首側にあるハッチの蓋の上に腰を掛け、船首方を向いて左手に仮設置した船外機のハンドルを持ち、西方からの波高0.5メートルの波浪を右舷船首に受けながら、陸岸から1,500メートル沖合を九州北岸に沿って西行した。
 14時46分半A受審人は、妙見埼灯台から280度(真方位、以下同じ。)1,200メートルの地点に至ったとき、妙見埼周辺に白波を認め、この先の狩尾鼻付近が急に波高の高くなる場所であることを聞いて知っていたが、これまでに狩尾鼻の沖合を何回も通航して磯波に遭遇したことがなかったことや、前路に白波を認めなかったことから、狩尾鼻沖の水深の浅い海岸近くを通航しても磯波に遭遇することはあるまいと思い、魚群探知機によって水深を確認しながら、できる限り同鼻から遠ざかって通航するなど、磯波の危険性に対して十分に配慮することなく、針路を214度に定め、機関を全速力前進にかけ、6.0ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
 英丸は、同じ針路、速力で続航し、15時00分わずか前中山受審人が柏原漁港に向けて左転をしようとしたとき、突然高起した波高2メートルを超える磯波を右舷正横方から受け、船体が持ち上げられて左舷側に大傾斜し、15時00分妙見埼灯台から234度3,200メートルの地点において、原針路のまま、復原力を喪失して左舷側に転覆した。
 当時、天候は晴で風力3の西風が吹き、潮候は上げ潮の末期に当たり、福岡管区気象台から北九州・遠賀地区に波浪注意報が発表されていた。
 転覆の結果、英丸は、仮設置した船外機が流失し、狩尾鼻から北西方に拡延する干出岩礁に打ち寄せられて船体の上部構造物が大破し、のち同船外機は回収されたものの、船体は廃船処理された。 

(原因)
 本件転覆は、福岡県狩尾鼻沖合において、同県柏原漁港に向けて西行する際、磯波の危険性に対する配慮が不十分で、狩尾鼻の北西方に拡延する浅所を通航中、高起した磯波に遭遇して大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、福岡県狩尾鼻沖合において、同県柏原漁港に向けて西行する場合、狩尾鼻付近が高起した磯波の発生しやすい場所であることを知っていたのであるから、同付近に近づかないよう、魚群探知機によって水深を確認しながら、できる限り同鼻から遠ざかって通航するなど、磯波の危険性に対して十分に配慮するべき注意義務があった。ところが、同受審人は、これまでに狩尾鼻の沖合を何回も通航して磯波に遭遇したことがなかったことや、前路に白波を認めなかったことから、同鼻沖の水深の浅い海岸近くを通航しても磯波に遭遇することはあるまいと思い、磯波の危険性に対して十分に配慮しなかった職務上の過失により、狩尾鼻の北西方に拡延する浅所を通航中、突然高起した磯波に遭遇して大傾斜し、復原力を喪失して転覆を招き、仮設置した船外機の流失及び船体の上部構造物に大破を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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