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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成16年広審第14号
件名

遊漁船第3真栄丸転覆事件

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成16年5月28日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(佐野映一、黒田 均、米原健一)

理事官
供田仁男

受審人
A 職名:第3真栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
舵が脱落、機関のクランク軸に曲損、船尾マストに折損などし、のち廃船処理

原因
気象情報の入手が不十分で、発航を取り止めなかったこと

主文

 本件転覆は、気象情報の入手が不十分で、発航を取り止めなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月19日08時50分
 瀬戸内海 広島県当木島南方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第3真栄丸
総トン数 3.32トン
全長 10.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 40キロワット

3 事実の経過
(1)第3真栄丸
 第3真栄丸(以下「真栄丸」という。)は、船体中央部やや後方に操舵室を有するFRP製遊漁船で、前部甲板には高さ約1.7メートルの鉄製支柱4本の頂部に長さ約4.0メートル幅約2.2メートルで山形のキャンバス製テントが、また後部甲板には高さ約1.7メートルのステンレス製支柱4本の頂部に長さ約3.5メートル幅約2.2メートルで長方形のキャンバス製テントがそれぞれ展張されていた。
(2)天気概況及び警報、注意報の発表状況
 平成15年7月18日03時00分、黄海に996ヘクトパスカルの低気圧があり、温暖前線と寒冷前線とを伴って15ノットの速力で北東方に進行し、翌19日03時00分には日本海西部に達して998ヘクトパスカルとなり、温暖前線が南東方に伸びて近畿地方を南北に縦断するととともに、寒冷前線が南西方に伸びて九州北岸付近を通り、同低気圧や前線に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込んで、西日本の大気の状態が不安定になっていた。
 そして、広島地方気象台は、前日18日16時05分広島県福山市、尾道市、三原市、因島市などの福山・尾三地域に対して雷、濃霧注意報を発表し、その後順次対象地域とその内容を切り替え、翌19日05時15分には福山・尾三地域に対して大雨、雷、洪水注意報を発表して、防災上の警戒・注意事項として落雷などの他、局地的な突風に警戒を呼びかけていた。
(3)本件発生に至る経緯
 真栄丸は、A受審人(昭和49年12月一級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み、遊漁の目的で、平成15年7月19日05時30分広島県田島の係留地を発し、途中同県千年港の岩船桟橋で釣り客10人を乗せ、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、07時00分同桟橋を離桟し、同県当木島沖合の釣り場に向かった。
 ところが、A受審人は、発航に先立って空と海上の各模様を見ただけで、いずれも平穏であったことから天候が悪化することはないものと思い、発航の可否を判断できるよう、テレホンサービスで最新の警報や注意報の発表状況を確かめるなど気象情報の入手を十分に行わなかったので、福山・尾三地域に大雨、雷、洪水注意報が発表されて局地的な突風に警戒を呼びかけていることを知らないまま発航したものであった。
 こうして、A受審人は、07時30分前示釣り場に至って、当木島の南方から西方沖合でポイントを移動しながら釣りを行ったのち、08時40分同島の南方約600メートル沖合で、釣り客を両舷に各5人ほぼ等間隔に配置し、船尾マストに張ったスパンカーで折からの弱い南西風に船首を立て、停留して釣りを再開したところ、船首方に黒い雲を認め、やがて同雲が次第に接近して雨が降りそうになった。その後、同時49分大粒の雨が降り始めるとともに南西風がだんだん強くなり、同時50分わずか前突風が右舷側から吹き付け、操舵室前部及び後部の各テントに風をはらんで船体が左舷側に大傾斜し、前部テントが吹き飛ばされた直後、08時50分広島県福山市横島の城山207メートル三角点から真方位208度1.5海里の地点において、真栄丸は、180度に向首したとき、復原力を喪失して転覆した。
 当時、天候は雨で南西寄りの突風が吹き、潮候は低潮時であった。
 転覆の結果、舵が脱落し、機関のクランク軸に曲損、船尾マストに折損などを生じ、船体は最寄りの港に引き付けられたが、のち廃船処理された。また、A受審人と釣り客10人が海中に投げ出されたが、付近のプレジャーボートによって全員救助された。

(原因)
 本件転覆は、広島県当木島沖合において遊漁を行おうとする際、大雨、雷、洪水注意報が発表されて局地的な突風に警戒を呼びかけている状況下、気象情報の入手が不十分で、発航を取り止めず、甲板上に展張したテントに突風をはらんで大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、広島県当木島沖合において遊漁を行おうとする場合、発航の可否を判断できるよう、テレホンサービスの天気予報で最新の警報や注意報の発表状況を確かめるなど気象情報の入手を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、空と海上の各模様を見ただけで、いずれも平穏であったことから天候が悪化することはないものと思い、気象情報の入手を十分に行わなかった職務上の過失により、大雨、雷、洪水注意報が発表されて局地的な突風に警戒を呼びかけていることを知らないまま発航し、甲板上に展張したテントに突風をはらんで大傾斜し、復原力を喪失して転覆を招き、舵を脱落させ、機関のクランク軸に曲損、船尾マストに折損などを生じさせるとともに、自らと釣り客10人が海中に投げ出される事態を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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