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平成16年函審第17号
件名

漁船第六十三寶来丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年6月24日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(黒岩 貢、古川隆一、野村昌志)

理事官
阿部房雄

受審人
A 職名:第六十三寶来丸船長 海技免許:五級海技士(航海)

損害
船底外板各所に亀裂及び凹損、両舷ビルジキールや魚群探知器に損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年7月4日21時55分
北海道白神岬北東方
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第六十三寶来丸
総トン数 138トン
登録長 29.71メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 514キロワット

3 事実の経過
 第六十三寶来丸(以下「寶来丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、操業の目的で、船首1.7メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、平成15年7月4日19時00分北海道函館港を発し、日本海中部の大和堆付近の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、漁場と水揚港との航海が長いとき、船橋当直を自分と乗組員3人による単独の3時間交代制として行っていたが、前日04時30分日本海中部の漁場を発進して函館港に向かった際、乗組員の休養を十分にとらせる目的で、同港まで20時間以上連続して単独の船橋当直に当たっており、さらに翌4日02時ごろ同港に入港後も、漁獲物の水揚げ、燃料油の積み込み等に立ち会い、午後になって3時間ばかりの仮眠をとったものの、睡眠不足が解消されないまま出港したものであった。
 出港操船に引き続き単独の当直に就いたA受審人は、北海道南西岸沿いを南西進し、21時02分矢越岬灯台から167度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点に達したとき、津軽海峡の東流の影響を避けるため陸岸に沿って航行することとし、針路を白神岬灯台のわずか右側に向首する241度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.7ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 定針したころA受審人は、他船を見かけなくなったことから、安全担当者記録簿等に記帳することを思い立ち、21時06分矢越岬灯台から194度1.9海里の地点に至ったころ、操舵室後部の海図台横に置いた椅子に右舷側を向いて腰を掛け、同作業を始めた。
 このころA受審人は、睡眠不足から眠気を催すようになったが、あと30分で甲板長を呼んで当直を交代する予定であったため、それまでなんとか我慢できるものと思い、甲板長と早めに当直を交代するなどの居眠り運航の防止措置をとることなく続航するうち、いつしか居眠りに陥った。
 21時50分寶来丸は、白神岬灯台から056.5度2.1海里の地点に至ったとき、船首方の陸岸まで1海里ばかりに接近したが、A受審人が居眠りに陥って沖合に向け針路を転ずるなどの措置がとられないまま進行中、21時55分白神岬灯台から049度1.2海里の岩礁に、原針路原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力4の東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、寶来丸は、船底外板各所に亀裂及び凹損を生じたほか、両舷ビルジキールや魚群探知器に損傷を生じたが、まもなく自力離礁し、修理のため函館港に帰港した。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、北海道南西部沿岸を漁場に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、白神岬北東方の岩礁に向首したまま進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、北海道南西部沿岸を漁場に向けて航行中、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、次直の甲板長を早めに呼んで当直を交代するなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、あと30分で当直を交代するからそれまで何とか眠気を我慢できるものと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥って白神岬北東方の岩礁への乗揚を招き、船底外板等に損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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