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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年広審第120号
件名

貨物船第十八幸水丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年4月19日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(道前洋志、供田仁男、西林 眞)

理事官
村松雅史

受審人
A 職名:第十八幸水丸甲板員 海技免許:五級海技士(航海)

損害
船首部船底外板に亀裂及び凹損などの損傷

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年1月24日08時30分
 瀬戸内海 燧灘
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十八幸水丸
総トン数 198トン
全長 42.35メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 588キロワット

3 事実の経過
 第十八幸水丸(以下「幸水丸」という。)は、船尾船橋型給水船で、A受審人及び船長Bほか2人が乗り組み、清水650トンを載せ、船首3.2メートル船尾3.5メートルの喫水をもって、平成15年1月24日06時00分広島県尾道糸崎港を発し、愛媛県西条港に向かった。
 A受審人は、C社所有のD号の船長を務めていたところ、幸水丸が平素より遠い西条港までの航海をすることに伴い応援のため甲板員として乗り組んだもので、B船長より同社での経験が長かったことから実質船長職を執っていた。
 A受審人は、出港操船を終えた後、船首配置から昇橋したB船長と船橋当直を交替し、07時52分高井神島灯台から277度(真方位、以下同じ。)3.8海里の地点で、B船長と交替して再び船橋当直に就き、針路を美濃島とバンダイ磯南東灯浮標(以下「南東灯浮標」という。)との間を南下する175度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で進行した。
 ところで、南東灯浮標の北西方300メートル及び北北東方250メートルのところにはバンダイ磯と呼ばれる暗岩が存在し、北西方の暗岩と美濃島との間は約1,500メートルであった。そして、A受審人は、バンダイ磯が存在することを熟知していたので、同灯浮標の手前で船位を確認して南東灯浮標を左舷側に300メートル以上離すよう針路を修正する予定でいた。
 08時25分A受審人は、美濃島112メートル三角点から068度1,700メートルの地点に達したとき、南東灯浮標の手前に達したことを認めたが、慣れた海域であることから気が緩み、同灯浮標までの距離を目測しただけでバンダイ磯から離れているものと思い、美濃島と南東灯浮標までの距離を比べるなど船位の確認を十分に行わなかったので、バンダイ磯に向首していることに気付かず、在橋していた乗組員と雑談をしながら続航中、08時30分美濃島112メートル三角点から118度1,930メートルのバンダイ磯に、幸水丸は、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はなく、潮候はほぼ低潮時であった。
 乗揚の結果、船首部船底外板に亀裂及び凹損などを生じたが、自然に離礁して自力で造船所に向かい、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、瀬戸内海燧灘において、美濃島とバンダイ磯南東灯浮標の間を南下する際、船位の確認が不十分で、バンダイ磯に向かって進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、瀬戸内海燧灘において、美濃島と南東灯浮標の間を南下する場合、同灯浮標の近くにバンダイ磯が存在することを知っていたから、同磯から十分離れることができるよう、美濃島と南東灯浮標までの距離を比べるなど船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、慣れた海域であることから気が緩み、同灯浮標までの距離を目測しただけでバンダイ磯から離れているものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、バンダイ磯に向首していることに気付かずに進行して乗揚を招き、船首部船底外板に亀裂及び凹損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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