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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成16年仙審第6号
件名

遊漁船さとみ丸漁船みかど丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年6月18日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(原 清澄、勝又三郎、内山欽郎)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:さとみ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士 
B 職名:みかど丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士 

損害
さとみ丸・・・推進器翼に曲損及び船底外板に損傷
みかど丸・・・操舵室圧壊、中央部左舷側外板及び前部右舷側外板を大破し、のち廃船

原因
さとみ丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
みかど丸・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、さとみ丸が、見張り不十分で、漂泊中のみかど丸を避けなかったことによって発生したが、みかど丸が、見張り不十分で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月9日11時25分
 新潟県名立漁港北方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船さとみ丸 漁船みかど丸
総トン数 4.9トン 1.18トン
全長 14.10メートル  
登録長   6.67メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 330キロワット  
漁船法馬力数   25

3 事実の経過
 さとみ丸は、航行区域を限定沿海区域とする、自動操舵装置の設備がない、FRP製遊漁船で、平成15年2月に交付された一級小型船舶操縦士免状を有するA受審人が1人で乗り組み、遊漁を行わせる目的で、釣り客5人を乗せ、船首0.4メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成15年7月9日10時58分新潟県直江津港を発し、鳥ケ首岬灯台から280度(真方位、以下同じ。)1.3海里ばかりの釣り場に向かった。
 A受審人は、新潟県関川をこれに沿って下航し、11時01分半直江津港導流堤北灯台から013度200メートルの地点に達したとき、左転して針路を270度に定め、機関回転数を毎分2,400にかけ、21.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)として進行した。
 11時17分A受審人は、鳥ケ首岬灯台から064度2.5海里の新潟県有間川漁港沖合に至り、全体として陸岸にほぼ平行となるように入れられたぼんでんが増え始めたので、ぼんでん群を避けるため、針路を260度に転じ、機関の回転数を少し落として18.0ノットの速力とし、各ぼんでん間の距離が前後左右とも一定ではなかったところから、その存在を確認しつつ、これらを替わしながら続航した。
 11時23分A受審人は、鳥ケ首岬灯台から028度1,580メートルの地点に達したとき、正船首方1,100メートルのところに、漂泊中のみかど丸が存在し、その後、同船が漁具の収納作業をしている漁船であることを明確に認めることができ、衝突のおそれがある態勢で同船に接近していたが、主として右方向に存在するぼんでんを避けることに気をとられ、船首方の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、みかど丸を避けることなく進行した。
 こうして、さとみ丸は、A受審人が前路のみかど丸を見落とし、これを避けないまま続航中、11時25分鳥ケ首岬灯台から343度1,250メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その船首がみかど丸の船体中央部左舷側に後方から70度の角度をもって衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の西北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 また、みかど丸は、自動操舵装置の設備がない、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、昭和49年10月に取得した一級小型船舶操縦士免状を有するB受審人が1人で乗り組み、サワラを釣る目的で、船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成15年7月9日04時00分新潟県名立漁港を発し、鳥ケ首岬灯台北方沖合6海里ばかりの漁場に向かった。
 04時30分B受審人は、漁場に至って操業の準備をし、同時35分速力を8.0ノットまで落とし、全長が40メートルとなった中層引き仕掛けを右舷側船尾端から海中に投入し、舵柄で針路をとりながら直江津港方面に向けて操業を始めた。
 B受審人は、郷津の沖合に至って鳥ケ首岬沖合の漁場に戻ることにし、針路を反転させて西進し、10時30分ごろ同沖合に戻り、30分ばかり付近で操業したものの、釣果がなかったので、更に陸岸寄りで操業することとし、針路を190度に転じて再び操業を続けた。
 B受審人は、釣果が一向に上がらないので、操業を打ち切ることとし、前示衝突地点でクラッチを中立として漂泊し、同一針路を保ったまま、11時18分投入した仕掛けを手繰り揚げ始めた。
 11時23分B受審人は、左舷船尾70度1,100メートルのところに、衝突のおそれがある態勢で自船に向首接近するさとみ丸を視認することができたが、仕掛けを手繰り揚げることに気をとられ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、衝突を避けるための措置をとることもなく作業を続けた。
 こうして、みかど丸は、B受審人が接近するさとみ丸に気付かないまま、操舵室の後方で船尾方を向いて作業を続行中、11時25分わずか前左舷側至近に迫った同船を認めたが、どうする暇もなく前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、さとみ丸は、推進器翼に曲損及び船底外板に損傷を生じたが、のち修理され、みかど丸は、操舵室圧壊、中央部左舷側外板及び前部右舷側外板を大破し、のち廃船とされた。 

(原因)
 本件衝突は、新潟県名立漁港北方沖合において、さとみ丸が、見張り不十分で、漂泊中のみかど丸を避けなかったことによって発生したが、みかど丸が、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、新潟県名立漁港北方沖合において、投入されたぼんでんを避けながら釣り場に向かう場合、前路で漂泊中のみかど丸を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、ぼんでんを避けることに気をとられ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路のみかど丸に気付かないまま進行して同船との衝突を招き、自船に推進器翼曲損等を生じさせ、みかど丸に操舵室圧壊、中央部左舷側及び前部右舷側外板を大破させ、廃船とさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 B受審人は、新潟県名立漁港北方沖合において、釣果がないことから操業を止め、漂泊して漁具の収納作業を行う場合、自船に向首接近するさとみ丸に対し、早期に注意喚起信号が行えるよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、仕掛けを手繰り揚げることに気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、自船に向首接近するさとみ丸に気付かず、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、衝突を避けるための措置もとらないまま、同船との衝突を招き、前示損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2号の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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