日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成16年函審第12号
件名

漁船第七十一清和丸消波ブロック衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年6月30日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一、黒岩 貢、野村昌志)

理事官
山田豊三郎

受審人
A 職名:第七十一清和丸船長 海技免許:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
左舷船首外板に破口を伴う凹損及び船首材曲損等

原因
船位確認不十分

主文

 本件消波ブロック衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年12月25日20時40分
 北海道小樽港
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第七十一清和丸
総トン数 108トン
全長 34.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 632キロワット

3 事実の経過
 第七十一清和丸(以下「清和丸」という。)は、えびかご漁業に従事する中央船橋型鋼製漁船で、A受審人ほか11人が乗り組み、操業の目的で、船首1.2メートル船尾2.5メートルの喫水をもって、平成14年12月25日20時30分北海道小樽港高島岸壁を発し、同港北方の漁場に向かった。
 ところで、高島岸壁は、小樽港第3区北部港奥の、ほぼ南北に連なる高島地区岸壁北方から南東方に突き出たふ頭に位置し、周辺には、高島岸壁東方の弁天島から南方に520メートル延び、先端に小樽港高島北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)が設置された高島北防波堤、高島地区岸壁南端から北東方に100メートル延び、先端に緑色灯灯柱が設置された防波堤(以下「南防波堤」という。)、北防波堤灯台の南東方190メートルを北端とし、そこから南西方に120メートル延び、両端に灯柱が設置された防波堤(以下「沖防波堤」という。)がそれぞれ築造されており、高島北防波堤南端と沖防波堤北端とが可航幅180メートルの防波堤入口を形成していた。
 そして、A受審人は、夜間、高島岸壁から出航する際、高島地区岸壁寄りに南下して北防波堤灯台及び南防波堤先端の灯柱の各灯光を左右に見て左転し、さらに沖防波堤北端の灯光を右に確認して同入口を通航していた。
 これより先、A受審人は、出港準備を整えている間、雪が断続的に強く降り、視程が30メートルばかりに狭められた状況下、レーダーの雨雪反射等を調整しないまま画面を見たところ、雪により白くなり防波堤が識別困難であったが、降雪の強弱に応じて感度調整等を適宜行う乗組員をレーダーに配置せず、いつものように灯台などの灯光を順次確認して出航することにし、レーダーをスタンバイ状態として単独の船橋当直に就き、所定の灯火に加え、作業灯を点灯して離岸したものであった。
 20時34分少し前A受審人は、北防波堤灯台から321度(真方位、以下同じ。)280メートルの地点に達したとき、針路を160度に定め、機関を前進と中立に適宜使用して平均3.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
 20時36分A受審人は、南防波堤突端を右舷方30メートルで並航したときようやく同防波堤突端の緑色灯光を認め、20時37分少し前北防波堤灯台から218度100メートルの地点に至り、左舵一杯をとって左転を開始した。
 20時38分少し前A受審人は、北防波堤灯台から169度130メートルの地点に至り、未だ同灯台の灯光を視認できなかったが、そのうち灯台の灯光を視認できるものと思い、依然、乗組員をレーダーに配置するなどしてレーダーにより船位を十分に確認することなく、舵を中央に戻して機関を中立としたところ、残存した回頭惰力により船首が左方に振れつつ沖防波堤北端部に徐々に接近する状況になり、これに気付かないまま続航した。
 20時40分わずか前A受審人は、船首至近に作業灯に照らされた消波ブロックを認めて驚き、後進をかけたが間に合わず、20時40分北防波堤灯台から111度185メートルの地点において、清和丸は、その船首が053度を向き1.0ノットの速力で沖防波堤北端部の消波ブロックに衝突した。
 当時、天候は雪で風力2の西風が吹き、視程は約30メートルで、潮候は下げ潮の初期であった。
 衝突の結果、清和丸は、左舷船首外板に破口を伴う凹損、船首材曲損等を生じたが、自力で離れ、のち修理された。 

(原因)
 本件消波ブロック衝突は、夜間、北海道小樽港において、降雪により視界が著しく制限された状況下、出航する際、レーダーによる船位の確認が不十分で、防波堤の消波ブロックに接近したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、北海道小樽港において、降雪により視界が著しく制限された状況下、出航する場合、降雪の強弱に応じて感度調整等を適宜行うことができるよう、乗組員をレーダーに配置するなどしてレーダーにより船位を十分に確認すべき注意義務があった。ところが、同受審人は、そのうち灯台の灯光を視認できるものと思い、レーダーにより船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、防波堤に接近して消波ブロックとの衝突を招き、清和丸の左舷船首外板に破口を伴う凹損、船首材曲損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION