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平成16年広審第13号
件名

貨物船ペガサス プレンティ貨物船ゴールデン アジア衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年5月28日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(米原健一、吉川 進、黒田 均)

理事官
川本 豊

損害
ぺ号・・・右舷船尾部外板及びブルワークなどに凹損等
ゴ号・・・左舷船尾部外板に破口を含む凹損等

原因
ペ号・・・追越し船の航法(避航動作)不遵守(主因)
ゴ号・・・動静監視不十分、警告信号不履行(一因)

主文

 本件衝突は、ゴールデン アジアを追い越す態勢のペガサス プレンティが、追い越しを中止しなかったことによって発生したが、ゴールデン アジアが、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年3月7日02時27分
 来島海峡西水道
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船ペガサス プレンティ 貨物船ゴールデン アジア
総トン数 4,393トン 3,868トン
全長 114.20メートル 104.99メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 3,883キロワット 3,089キロワット

3 事実の経過
 ペガサス プレンティ(以下「ぺ号」という。)は、日本及び大韓民国の諸港間に就航する、船橋前面から船首端までの長さが88.17メートルの船尾船橋型コンテナ船で、船長Aほか14人が乗り組み、コンテナ1,691.1トンを積載し、船首4.2メートル船尾5.8メートルの喫水をもって、平成14年3月6日17時45分和歌山県和歌山下津港を発し、瀬戸内海及び関門海峡を経由する予定で大韓民国光陽港に向かった。
 A船長は、翌7日01時25分来島海峡東口北側通報ライン(以下「ENライン」という。)の東方2海里付近で昇橋し、船橋当直中の二等航海士をレーダーの監視に、操舵手を操舵にそれぞれ就けて操船の指揮を執り、同時30分来島海峡通過に備え機関回転数を全速力前進としたまま機関用意を令し、航行中の動力船の灯火を表示して燧灘を西行し、同時35分ENライン通過を来島海峡海上交通センター(以下「来島マーチス」という。)に通報して手動操舵に切り替えた。
 来島マーチスに通報したころ、A船長は、船首方の同航船数隻のうち約1海里のところにゴールデン アジア(以下「ゴ号」という。)が表示する紅色閃光灯及び船尾灯を認め、その後同船の速力が自船より少し遅いことを知り、その動静に留意して来島海峡航路に向かった。
 A船長は、間もなく来島海峡航路東口に至り、来島長瀬ノ鼻潮流信号所の電光表示が南流5ノットを示していることを確認したのち、02時05分同航路に入り、同航路を四国側に近寄って航行中、同時15分半大浜潮流信号所から030度(真方位、以下同じ。)1,100メートルの地点に達したとき、針路を西水道に向く326度に定め、機関を13.5ノットの全速力前進にかけ、折からの潮流に抗して11.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で手動操舵により進行した。
 定針したとき、A船長は、右舷船首17度460メートルのところにゴ号を認め、そのまま同じ速力で続航すると強い逆潮時に狭隘な西水道北口の航路屈曲部付近でゴ号に追い付く状況となることを認めたが、直ちに機関回転数を下げて減速するなどして追い越しを中止することなく進行した。
 A船長は、やがて西水道に入り、02時21分半ゴ号が同水道北口に向けて右転したのに続き、同時22分小島東灯標から180度1,520メートルの地点に差し掛かったとき、ゴ号と同船の左舷船首方間近に認めた自船より低速力の同航船との間を通航するつもりで針路を023度に転じたところ、ゴ号が右舷船首23度240メートルとなり、その後衝突のおそれがある態勢で、増勢した潮流に抗し9.0ノットの速力で続航した。
 02時27分少し前A船長は、ゴ号と衝突の危険を感じて汽笛により長音1回を吹鳴するとともに急いで左舵一杯を命じたが効なく、02時27分小島東灯標から114度580メートルの地点において、ぺ号は、原針路原速力のまま、その右舷船尾部が右転を始めたゴ号の左舷船尾部に前方から17度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期にあたり、付近には4.5ノットの南流があった。
 また、ゴ号は、船橋前面から船首端までの長さが82.00メートルの船尾船橋型ケミカルタンカーで、船長Bほか19人が乗り組み、スチレンモノマー、アクリロニトリルなど4,748トンを積載し、船首5.7メートル船尾6.7メートルの喫水をもって、同月6日22時ごろ岡山県水島港を発し、瀬戸内海を経由する予定で台湾高雄港に向かった。
 翌7日01時30分B船長は、ENラインを通過するころ昇橋して同ライン通過を来島マーチスに通報したのち、船橋当直中の二等航海士を見張りなど船長の補佐に、操舵手を操舵にそれぞれ就けて操船の指揮を執り、機関回転数を全速力前進としたまま機関用意を令し、航行中の動力船の灯火に加え危険物積載船であることを示す紅色閃光灯を表示して来島海峡航路に向け燧灘を西行した。
 B船長は、間もなく来島海峡航路東口に至り、来島長瀬ノ鼻潮流信号所の電光表示を見て南流5ノットであることを確認したのち、02時03分同航路に入り、同航路を四国側に近寄って航行中、同時13分半大浜潮流信号所から039度1,170メートルの地点に達したとき、針路を西水道に向く326度に定め、機関を12.0ノットの全速力前進にかけ、潮流に抗して9.5ノットの速力で手動操舵により進行した。
 02時15分半B船長は、1.5海里レンジとしたレーダーで左舷船尾17度460メートルのところにぺ号の映像を初めて捉え、間もなく同船が自船を追い越す態勢で接近することを知ったが、ペ号が自船よりも四国寄りを航行していたことから自船の左舷側を追い越すものと判断し、その後同船に対する動静監視を十分に行わないで西水道に入った。
 B船長は、02時21分半小島東灯標から175度1,480メートルの地点に差し掛かったとき、針路を018度に転じ、増勢した潮流に抗して7.5ノットの速力で、左舷船首方間近に認めた自船より低速力の同航船の動静に留意しながら西水道の右寄りを進行中、同時22分ペ号が右転して左舷船尾28度240メートルとなり、その後衝突のおそれがある態勢で接近したが、動静監視不十分で、このことに気付かず、警告信号を行わなかった。
 02時27分少し前B船長は、二等航海士の叫び声を聞いて左舷後方を振り返ったところ至近にペ号の黒い大きな影を認め、急いで右舵一杯を命じたが効なく、ゴ号は、040度に向首したとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ぺ号は、右舷船尾部外板及びブルワークなどに凹損等を、ゴ号は、左舷船尾部外板に破口を含む凹損等をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。 

(原因)
 本件衝突は、夜間、強い南流時の来島海峡航路において、ペ号及びゴ号の両船が同航路を西行中、ゴ号を追い越す態勢のペ号が、狭隘な西水道北口の航路屈曲部付近でゴ号に追い付く状況となることを認めた際、追い越しを中止しなかったことによって発生したが、ゴ号が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:30KB)





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