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平成16年広審第15号
件名

貨物船第三美和丸護岸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年5月24日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(高橋昭雄)

理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:第三美和丸船長 海技免許:五級海技士(航海)

損害
第三美和丸・・・船首部外板等に凹損等
護 岸・・・擁壁を損壊

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件護岸衝突は、居眠り運航の防止措置が十分に行われなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年10月9日23時10分
 瀬戸内海西部 愛媛県大下島
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三美和丸
総トン数 199トン
全長 55.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第三美和丸は、船尾船橋型貨物船で、船主であるA受審人とその弟の2人が乗り組み、関門港小倉区及び福岡県博多港の2港揚げ鋼材568トンを載せ、船首2.00メートル船尾3.70メートルの喫水をもって、平成15年10月9日18時10分岡山県水島港を発し、関門港小倉区に向かった。
 ところで、当時の運航状況は、水島港を基地とした主に航程の短い瀬戸内海各港への鋼材等の輸送に従事し、着桟すると昼夜を問わずに荷役が行われることが多いものの、本船荷役と違って陸上サイドによる荷役であったので、乗組員は荷役開始時及び終了時のハッチ開閉等の作業を除いて荷役中には休息を取ったり外出したりすることが容易にできた。そして、平成8年新造当時乗組員3人による運航体制から同10年以降現行の2人体制となり、単独5時間2直制の船橋当直で運航されていた。
 さて、同月7日朝水島港入航後、A受審人は、揚げ荷役中に適宜休息を取り、出航前日は23時ころ就寝して翌9日06時ころ起床し、09時30分から17時50分までの積み荷役中はほとんど食堂でテレビ観賞したり自室で休息を取ったりして船内で過ごし、夕方荷役終了後の諸作業を済ませて出航するに至った。
 こうして、A受審人は、出航操船に続きそのまま単独で船橋当直に就き、19時ころ広島県仙酔島付近に至って夕食のため交替して降橋した。約30分後に昇橋して再び単独当直に就き、行き交う他船に注意しながら三原瀬戸を西行し続いて同県大崎上島東岸沿いを南下した。22時59分木江港宇浜防波堤南灯台から110度(真方位、以下同じ。)0.5海里の地点に達したところで、大下瀬戸を通航する予定で針路をいったん大下島北端付近に向く188度に定め、機関を全速力前進にかけたまま10.0ノットの速力で自動操舵により進行した。
 ところが、A受審人は、いすに腰掛けた姿勢で当直にあたり大崎上島南東付近の明るい照明に映えた造船所付近を通過したころ、眠気を催すようになったが、前方には他船も見当らなくなりしかも間もなく大下瀬戸を通航すると長かった当直も交替することになるなどで安堵したまま、眠気を払うべくいすに腰掛けた姿勢から身体を移動するなどして居眠り運航の防止措置を十分に取ることなく、眠気を催しながら同じ姿勢のまま当直を続け、やがて居眠りに陥った。その後大下瀬戸に向かう転針地点に達したことに気付かず、大下島北端付近に向首したまま続航し、23時10分中ノ鼻灯台から171度1,430メートルの地点において、第三美和丸は、同じ針路速力のまま大下島北端付近の護岸に衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 護岸衝突の結果、第三美和丸は、船首部外板等に凹損等を生じ、また護岸擁壁を損壊した。  

(原因)
 本件護岸衝突は、夜間、三原瀬戸を経て大下瀬戸に向かう際、居眠り運航の防止措置が不十分で、愛媛県大下島に向首したまま進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、三原瀬戸を経て大下瀬戸に向かう際、間もなく長かった単独船橋当直の交替を前にして眠気を催すようになった場合、仮にも居眠りに陥ることのないよう、眠気を払うべくいすに腰掛けた姿勢から身体を移動するなどして居眠り運航の防止措置を十分に取るべき注意義務があった。しかし、同人は、前路には他船も見当らなくなりしかも間もなく大下瀬戸を通航すると長かった当直も交替することになるなどで安堵したまま、眠気を払うべく居眠り運航の防止措置を十分に取らなかった職務上の過失により、眠気を催しながらいすに腰掛けた姿勢のままで当直を続けるうちに居眠りに陥り、大下瀬戸に向かう転針地点に達したことに気付かず、大下島に向首したまま進行して、同島北端部の護岸への衝突を招き、船首部外板等に凹損及び護岸擁壁の損壊を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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