(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年4月21日14時55分
播磨灘航路
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船日島丸 |
総トン数 |
499トン |
全長 |
73.55メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
日島丸は、専ら鋼材の輸送に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、空倉で、船首1.06メートル船尾3.64メートルの喫水をもって、平成15年4月21日11時40分大阪港堺泉北区を発し、大分港に向かった。
A受審人は、船倉で後片づけをしたのち、13時00分明石海峡航路東方灯浮標手前で昇橋し、同時25分同航路中央第1号灯浮標に並航した地点で、船長と交替して単独で船橋当直に就いた。
交替したとき、A受審人は、播磨灘航路第6号灯浮標(以下、灯浮標の名称については、「播磨灘航路」を省略する。)のわずか北方に向けて西行し、14時00分江埼灯台から256度(真方位、以下同じ。)7.5海里の地点で、同灯浮標を左舷正横0.5海里に見て、針路を播磨灘航路推薦航路線に沿う248度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.1ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、自動操舵により進行した。
14時27分A受審人は、男鹿(たんが)島灯台から131度11.0海里の地点に達したとき、折からの強吹する北西風によって左方に圧流されて第5号灯浮標至近を航過したことを認めたので、自船が空船であり、風圧による左方への偏位を考慮して、針路を253度に転じ続航した。
14時37分A受審人は、男鹿島灯台から142度10.2海里の地点において、左舷船首5度3.5海里に第4号灯浮標を認めたものの、風圧を考慮した針路としたので、同灯浮標を左舷方に離して航過できるものと思い、前路の見張りを十分に行わないで、第4号灯浮標を見失い、同灯浮標に向かう態勢で進行していることに気付かなかった。
その後、A受審人は、左方に5度圧流されながら、依然として前路の見張りを十分に行わないまま、第4号灯浮標に向かう態勢で続航中、14時55分日島丸は、男鹿島灯台から161.5度9.9海里の地点に設置された同灯浮標に、原針路、原速力のまま、その右舷船首部が同灯浮標の浮体に衝突した。
当時、天候は晴で風力5の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
衝突の結果、日島丸は、船首部及び右舷船首部外板に擦過傷を、第4号灯浮標は、浮体を圧壊して同灯浮標告示位置の東方約60メートルの地点に沈没し、のち引き揚げられたが、レーダーリフレクター、波力発電装置及びマーキング装置等が使用不能となった。
(原因)
本件灯浮標衝突は、北西風が強吹する状況下、播磨灘推薦航路に沿って西行中、見張り不十分で、第4号灯浮標に向かう態勢で進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、播磨灘推薦航路に沿って西行中、強吹する北西風によって圧流されていることを認め、風圧を考慮した針路とした場合、前路に認めた第4号灯浮標を無難に航過できるよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、風圧を考慮した針路としたので、同灯浮標を左舷方に離して航過できるものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、第4号灯浮標を見失い、同灯浮標に向かう態勢で進行していることに気付かず、第4号灯浮標との衝突を招き、船首部及び右舷船首部外板に擦過傷を生じさせ、第4号灯浮標の浮体を圧壊し、沈没させ、レーダーリフレクター、波力発電装置及びマーキング装置等を使用不能とさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。