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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成16年門審第9号
件名

貨物船新雄和丸護岸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年4月14日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(長谷川峯清)

副理事官
園田 薫

受審人
A 職名:新雄和丸船長 海技免許:四級海技士(航海)(履歴限定)

損害
新雄和丸・・・球状船首に破口及び船首部に曲損
護岸・・・防護柵が曲損、擁壁コンクリート及び消波ブロックが欠損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件護岸衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年8月17日04時20分
 山口県大島郡屋代島南東岸
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船新雄和丸
総トン数 199トン
全長 57.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 625キロワット

3 事実の経過
 新雄和丸は、専ら瀬戸内海各港間において鋼材輸送に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人及び機関長職を執る実兄が乗り組み、空倉のまま、船首0.30メートル船尾2.60メートルの喫水をもって、平成15年8月16日21時15分関門港新門司区を発し、法定灯火を表示して水島港に向かった。
 ところで、A受審人は、船橋当直を、船長職を執ることもある機関長と2人で単独の5時間ないし6時間交代の2直制で行っていたが、平素、積荷役終了後直ちに出航して目的地に向かい、揚荷役開始時刻よりも早めに到着して休息待機していたことから、疲労が蓄積することはなかった。また、同受審人は、毎月4回ないし5回平郡水道を通航しており、同水道の水路状況を熟知していた。
 こうして、A受審人は、22時30分ころ宇部港沖で単独の船橋当直に就き、操舵室中央に設けられた自動操舵装置の左舷側に設置されたレーダーを6海里レンジに設定し、同室の窓や扉を全て閉じて冷房を効かせ、同操舵装置の約1メートル後方の肘掛けのついたいすに腰を掛けて周囲の見張りに当たり、平郡水道経由で目的地に向かうこととして周防灘を東行した。
 翌17日02時33分A受審人は、天田島灯台から149度(真方位、以下同じ。)1.2海里の地点で、針路を057度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの西向きの潮流に抗して9.1ノットの対地速力で、平郡水道推薦航路の平郡島寄りを自動操舵によって進行した。
 03時20分半A受審人は、下荷内島灯台から177度1.6海里の地点に達し、平郡水道第2号灯浮標に並航したとき、いすから立ち上がって自動操舵装置のところに移動し、自動操舵のまま針路を075度に転じ、平郡島北端の赤埼の北方0.5海里の地点に至ったら更に10度ばかり右転するつもりで続航した。
 転針後、A受審人は、再びいすに腰を掛けて周囲の見張りに当たっているうち、付近に通航船舶も漁船も認められないことや、水島港に到着してから揚荷役開始時刻まで十分に時間の余裕があることなどから気が緩み、眠気を催したが、間もなく平郡水道第3号灯浮標の南方に向けて転針する必要があり、04時00分には機関長と船橋当直を交代するので、それまで何とか当直を維持できるものと思い、機関長に連絡して早めに昇橋させるなど、居眠り運航防止の措置をとることなく、いつしか居眠りに陥った。
 03時28分半A受審人は、下荷内島灯台から135度1.8海里の地点で、赤埼北方0.5海里の転針予定地点に達したが、居眠りに陥っていて転針を行うことができず、平郡水道推薦航路を北方に横切り、屋代島南東岸に向かっていることに気付かないまま進行中、04時20分下荷内島灯台から085度9.0海里の地点において、新雄和丸は、原針路、原速力のまま、屋代島南東岸に所在の沖家室大橋北部橋台の西側護岸に、ほぼ直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期に当たり、視界は良好で、平郡水道には微弱な西向きの潮流があった。
 護岸衝突の結果、新雄和丸は、球状船首に破口及び船首部に曲損を、沖家室大橋橋台の西側護岸は、防護柵の曲損並びに擁壁コンクリート及び消波ブロックの欠損をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。 

(原因)
 本件護岸衝突は、夜間、平郡水道を東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、屋代島南東岸に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就いて平郡水道を東行中、付近に通航船舶も漁船も認められないことや、目的地への入港時刻から荷役開始時刻まで十分に時間の余裕があることなどから気が緩み、眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、間もなく当直を交代する機関長に連絡して早めに昇橋させるなど、居眠り運航防止の措置をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、交代まで何とか当直を維持できるものと思い、居眠り運航防止の措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、屋代島南東岸に向かっていることに気付かないまま進行して沖家室大橋北部橋台の西側護岸への衝突を招き、新雄和丸の球状船首に破口及び船首部に曲損を、同護岸の擁壁コンクリートに欠損等をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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