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平成16年函審第14号
件名

作業船第2銀友号漁船第八寿丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年4月6日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(黒岩 貢)

副理事官
宮川尚一

受審人
B 職名:第八寿丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
指定海難関係人
A 職名:第2銀友号作業船長

損害
第2銀友号・・・右舷側中央部外板が凹損、同側甲板上に設置されたボラードが損傷
第八寿丸・・・船首部が圧壊、甲板員が1箇月の入院加療を要する肋骨骨折等の負傷

原因
第2銀友号・・・灯火表示不適切
第八寿丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守

裁決主文

 本件衝突は、第2銀友号が、灯火表示が不適切であったことと、第八寿丸が、見張り不十分で、係船浮標に係留中の第2銀友号を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年11月13日00時45分
 北海道函館港
 
2 船舶の要目
船種船名 作業船第2銀友号 漁船第八寿丸
総トン数 1,834.72トン 19トン
全長 45.0メートル 21.7メートル
機関の種類   ディーゼル機関
出力   330キロワット

3 事実の経過
 第2銀友号(以下「銀友号」という。)は、長さ45メートル幅33メートル高さ3メートルの台船の左右舷端に、長さ45メートル幅3メートル高さ12.5メートルのサイドウォールをそれぞれ設置した非自航で鋼製の凹型ケーソン製作用フローティングドック作業船で、北海道利尻島鬼脇漁港における築港工事を終え、次の工事に備えて待機するため、船首尾とも1.0メートルの喫水をもって、平成15年10月21日函館港第2区の第2係船浮標に、船首から長さ約30メートルの係留索8本を延出して係留し、A指定海難関係人が同船を管理していた。
 ところで、銀友号は、左舷側サイドウォール頂部に大型のジブクレーン2基及び休憩室を、右舷側サイドウォール頂部に操作室を、夜間の作業用としてサイドウォール各所に1キロワットの水銀灯13灯をそれぞれ設置し、海上衝突予防法で定められた灯火として、操作室上部のマストトップに白色全周灯(以下「錨泊灯」という。)を、同室及び休憩室外舷側に舷灯を、右舷側サイドウォール船首側及び左舷側サイドウォール船尾側に船尾灯をそれぞれ備え、操作室内の配電盤スイッチで点灯するようになっていた。また、夜間における錨泊灯の補助として、単1乾電池4個又は太陽電池を電源とし、夜間、自動点灯する公称光達距離2.7海里の点滅式白色標識灯(以下「点滅灯」という。)を、船体4隅の、サイドウォール前後端の下部及び頂部の各ハンドレールに1個ずつ、合計8個取り付けていた。
 また、銀友号は、ジブクレーン、バラストポンプ及び操船ウインチの駆動並びに水銀灯及び法定灯火の点灯用にディーゼル発電機を保有し、同発電機停止時の法定灯火は、同発電機により充電されるバッテリーにより点灯していた。
 A指定海難関係人は、函館港係留中、ディーゼル発電機を運転してのクレーン操作やバラスト調整等の業務がなかったため、平素、08時ごろに通船で銀友号に乗船し、船体の保守、整備を行っていたところ、同年11月12日16時ごろ、夜間の表示灯火の準備を行った際、錨泊灯が前示バッテリーを電源とするものであったことや、点滅灯だけで十分であるとの認識があったことなどから、点滅灯の設置状況を確認しただけで、係留中の法定灯火である錨泊灯を表示せず、灯火を適切に表示しないまま下船した。
 こうして銀友号は、無人のまま、点滅灯8灯のみを掲げ、018度(真方位、以下同じ。)を向首して係留中、翌13日00時45分函館港中央ふ頭南船だまり防波堤灯台(以下「南船だまり防波堤灯台」という。)から285度990メートルの地点において、その右舷側中央部に、第八寿丸(以下「寿丸」という。)の船首部が直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 また、寿丸は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、B受審人(昭和62年5月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾2.5メートルの喫水をもって、平成15年11月13日00時35分函館市海岸町船だまりにある物揚場岸壁を発し、日本海の漁場に向かった。
 発航時B受審人は、予定航路となる函館港西防波堤基部の切り通し方向を見渡した際、同方向にある第2係船浮標係留中の銀友号が錨泊灯を表示していなかったこともあって、いちべつしただけで、他船はいないものと判断して船だまりを通り抜け、00時41分少し前南船だまり防波堤灯台から274度220メートルの地点に達したとき、針路を前示切り通し方向となる288度に定めて自動操舵とし、機関を半速力前進にかけ、6.0ノットの対地速力で進行した。
 定針したころB受審人は、よく見れば正船首方770メートルのところに、銀友号が掲げる8灯の点滅灯のうち、右舷側の4灯を視認し得る状況となり、その後同船に対し衝突のおそれのある態勢で接近したが、依然、前路に他船はいないものと思い、左舷方港奥の西ふ頭や魚市場岸壁からの出港船の確認に気をとられ、見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、同船との衝突を避けるための措置をとらないまま続航中、寿丸は、原針路原速力のまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、銀友号は、右舷側中央部外板が凹損するとともに、同側甲板上に設置されたボラードが損傷し、寿丸は、船首部が圧壊したが、のち、いずれも修理され、寿丸の甲板員が、1箇月の入院加療を要する肋骨骨折等を負った。 

(原因)
 本件衝突は、夜間、函館港において、係船浮標に係留中の銀友号が、船体数箇所に点滅灯を掲げたのみで錨泊灯を表示せず、灯火表示が不適切であったことと、航行中の寿丸が、見張り不十分で、銀友号との衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
 
(受審人等の所為)
 B受審人は、夜間、函館港内を航行する場合、係船浮標に係留中の銀友号が掲げる点滅灯を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、発航時予定航路の方向を見渡した際、同方向にある係船浮標係留中の銀友号が錨泊灯を表示していなかったこともあって、いちべつしただけで、前路に他船はいないものと思い、左舷方港奥からの出港船の確認に気をとられ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、銀友号の点滅灯に気付かず、同船との衝突を避けるための措置をとらないまま進行して衝突を招き、自船の船首部を圧壊させたばかりか、甲板員に肋骨骨折等を負わせ、銀友号の右舷側中央部外板等に損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A指定海難関係人が、夜間、函館港において、銀友号の管理に当たる際、灯火の表示が不適切であったことは、本件発生の原因となる。
 A指定海難関係人に対しては、その後、夜間の停泊中においては錨泊灯の表示を心がけている点に徴し、勧告しない。


参考図
(拡大画面:25KB)





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