(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年7月21日07時20分
京都府島陰湾北部
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートはるな |
全長 |
4.53メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
出力 |
7キロワット |
3 事実の経過
はるなは、操舵室などの上部構造物を有さず、船首、船体中央及び船尾に格納庫を配置し、船尾舷縁に船外機を装備したFRP製小型フィッシングボートで、平成9年4月二級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が、釣りに使用する目的で同14年8月に中古で購入したものであった。
船外機は、B社が製造したM9.9C型と称する2シリンダの2サイクル機関で、船尾に腰掛けた操縦者が、船外機付取手先端部のスロットルグリップを操作して増減速を行えるようになっており、その取扱説明書には、全速力で運転すると1時間あたり約5.5リットルの燃料油を消費する旨が記載されていた。
燃料油は、ガソリンと潤滑油が容積比50対1の割合で混合された混合油で、船尾格納庫内に設置された容量22.7リットルの直方体状の移動式鋼製燃料油タンク内に貯蔵され、同タンクから途中に手動式プライミングポンプを接続したゴム管によって船外機に導かれていた。そして、同タンクは、その上面に油量計及び空気抜き弁付キャップで閉鎖される補給口が設けられており、同格納庫のさぶたを取り外せば、容易に油量を確認することができるようになっていた。
平成15年7月1日A受審人は、燃料油タンクに燃料油20リットルを補給してほぼ満杯としたうえ、翌2日はるなを、購入して以来初めて船外機の試運転を兼ねて使用することとし、京都府宮津市須津の係留地を発し、京都府島陰湾で釣りを行ったのち帰港したが、その往復に全速力で合計3時間ばかり運転したので、約15リットルの同油を消費していたものの、その後、同タンクに補給することなく係留を続けていた。
7月21日A受審人は、再び同湾において釣りを行う目的で発航するにあたり、釣り場との往復所要時間を承知していたが、前回燃料油タンクを満杯にしたのち長時間運転していないので十分な量の燃料油が残っているものと思い、船外機の取扱説明書を読むなどして燃料消費量を推定し、必要な量の燃料油が搭載されていることを確認しなかった。
こうして、はるなは、燃料油タンクの残量が約5リットルとなった状態で、A受審人が船長として1人で乗り組み、友人2人を同乗させ、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、同日05時45分前記係留地を発して対地速力10.2ノットの全速力で航走し、途中、06時30分宮津市片島鼻東方沖合に至り、船外機を停止して30分間ばかり釣りをしたが、釣果が芳しくなかったので、島陰湾の釣り場に向け船外機を全速力にかけて航行を再開し、07時10分同市黒埼を替わったのち、海岸線に沿って南下中、07時20分宮津黒埼灯台から真方位167度1,150メートルの地点において、燃料油が欠乏したことにより、船外機が自然に停止した。
当時、天候は曇で風力1の北風が吹き、海上は平穏であった。
その結果、はるなは、航行不能となったが、救援を依頼した巡視艇から燃料油の補給を受け、自力航行して係留地に帰着した。
(原因)
本件運航阻害は、往復に3時間ばかりを要する距離の釣り場に向け係留地から発航する際、燃料油タンクの残量の確認が不十分で、航海中に燃料油が欠乏したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、往復に3時間ばかりを要する距離の釣り場に向け係留地から発航する場合、少容量の燃料油タンクに燃料油の補給を行わないまま係留していたのであるから、船外機の取扱説明書を読むなどして燃料消費量を推定し、必要な量の同油が搭載されていることを確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、同タンクを満杯にしたのち長時間運転していないので十分な量の同油が残っているものと思い、船外機の取扱説明書を読むなどして燃料消費量を推定し、必要な量の同油が搭載されていることを確認しなかった職務上の過失により、航行中、同油の欠乏を招き、航行を不能とさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。