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平成15年横審第59号
件名

漁船第二十八常磐丸乗組員死亡事件

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成16年1月30日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(西山烝一、阿部能正、吉川 進)

理事官
井上 卓

受審人
A 職名:第二十八常磐丸船長 海技免許:三級海技士(航海)
B 職名:第二十八常磐丸二等航海士 海技免許:四級海技士(航海)

損害
甲板員が死亡

原因
漁労作業(揚貨装置操作)時の乗組員に対する安全確認不十分

主文

 本件乗組員死亡は、揚貨装置を操作する際、乗組員に対する安全確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Bの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年3月5日10時50分
 静岡県焼津港
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十八常磐丸
総トン数 349トン
全長 63.24メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,912キロワット

3 事実の経過
 第二十八常磐丸(以下「常磐丸」という。)は、平成10年9月に竣工した、大中型まき網漁業に従事する船首船橋型の鋼製漁船で、A及び、B両受審人ほか日本人船員11人、フィリピン人船員6人及びミクロネシア人船員1人が乗り組み、平成15年1月31日07時10分静岡県焼津港を発し、2月8日マーシャル諸島南西海域の漁場に着いてまき網漁を開始し、カツオ、マグロ等約750トンを漁獲して同月27日10時30分帰途に就き、水揚げの目的で、3月5日10時00分船首4.70メートル船尾6.80メートルの喫水で同港に入港し、焼津港沖北防波堤灯台から真方位317度480メートルの第2ふ頭西岸壁に左舷付けで係留した。
 常磐丸は、全通二層甲板船で、上甲板には船首から順に、船首部甲板、前部から中央部にかけ居住区があり、その上部が端艇甲板、船橋甲板で、居住区後端から船尾にかけ後部甲板となっていた。
 漁ろう作業及び漁獲物水揚げ作業等に使用する揚貨装置として、メインマストが居住区後端の船体中央部に備えられ、同マスト船尾側で端艇甲板高さのところに長さ22.5メートルの主ブーム(以下「ブーム」という。)が、同マスト船尾側で上甲板上からの高さ6.7メートルのところに、ブーム昇降用のトッピングウインチがそれぞれ取り付けられ、各ウインチの操作盤が端艇甲板の後部左舷側に設置されていたほか、補助ブームがメインマスト船首側に、補助クレーンが端艇甲板の両舷側にそれぞれ備えられていた。
 トッピングウインチは、直径24ミリメートルのトッピングワイヤを定格速度毎分40メートルでドラムに巻き込むことができ、ドラムの外径が65センチメートル、幅が40センチメートルであった。
 A受審人は、岸壁係留後、乗組員に対し、メインマスト、ブーム及び補助クレーンなどの発錆部の洗浄作業に伴い、揚貨装置の操作を行わせることにしたが、作業責任者のB受審人が平素から同操作に慣れているので特に指示しなくても大丈夫と思い、ブームの移動やワイヤの巻き込みなどには危険が伴うから、同受審人に対し、ブームなどを移動する際、作業中の乗組員全体を見渡せる場所に、監視員を配置するよう指示することなく、船橋で会社に提出する書類の作成を始めた。
 B受審人は、安全担当者に選任され、甲板作業の責任者として、メインマストやブーム等揚貨装置の発錆部の汚れを洗浄させることとし、10時30分から乗組員8人とともに、後部甲板上に降ろしたブームの発錆部を蓚酸液(しゅうさんえき)入りの洗剤を使用して洗浄作業を開始し、終了したあと、同時45分から自らとフィリピン人の甲板員Cとで、メインマストに取り付けられている各ウインチ周りの発錆部の洗浄作業に取り掛かり、他の乗組員には、補助クレーンなどの同作業を行うよう指示した。
 B受審人は、メインマストに登り、右舷側の補助ブームウインチ周りの洗浄作業を終えたあと、C甲板員に声をかけて端艇甲板に降り、ブームを移動するため、ウインチ操作盤の前に立ち、トッピングウインチなどを操作することにしたが、同作業がほぼ終わり、声をかけたので同甲板員が同ウインチドラムなどから離れた場所にいると思い、ブームの移動などには危険が伴い、また、作業中の乗組員を見渡しにくい操作場所であったから、監視員を配置するなり、自ら同乗組員の作業場所を確かめるなど、乗組員に対する安全確認を十分に行うことなく、10時50分わずか前同ウインチ用のコントロールレバーを操作し、トッピングワイヤを巻き始めた。
 一方、C甲板員は、雨合羽に長靴を履き、ヘルメットにゴム手袋を付け、メインマストに登り、トッピングウインチのドラム上に足を乗せた姿勢で、その付近の洗浄作業を行っていたところ、巻き始めたトッピングワイヤに身体を巻き込まれ、10時50分前示係留地点でメインマストとウインチドラムとの間に挟まれた。
 当時、天候は曇で風力2の南東風が吹き、港内は平穏であった。
 その結果、C甲板員は、直ちに病院に搬送されたが、全身挫滅及び離断創により即死と検案された。 

(原因)
 本件乗組員死亡は、静岡県焼津港の岸壁に係留し、揚貨装置の発錆部の洗浄作業中、ブーム移動のためウインチの操作を行う際、乗組員に対する安全確認が不十分で、ウインチドラム上に足を乗せたまま同作業を続けていた乗組員が、巻き始めたトッピングワイヤに身体を巻き込まれ、メインマストと同ドラムとの間に挟まれたことによって発生したものである。
 安全確認が十分でなかったのは、船長が、揚貨装置の操作者に対し、同装置を操作する際、監視員を配置するよう指示しなかったことと、操作者が、乗組員に対する安全確認を十分に行わなかったこととによるものである。
 
(受審人の所為)
 B受審人は、揚貨装置の発錆部の洗浄作業中、ブーム移動のためウインチの操作を行う場合、ブームの移動などには危険が伴い、また、作業中の乗組員を見渡しにくい操作場所であったから、監視員を配置するなり、自ら同乗組員の作業場所を確かめるなど、乗組員に対する安全確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同受審人は、同作業がほぼ終わり、声をかけたので乗組員がウインチドラムなどから離れた場所にいると思い、乗組員に対する安全確認を十分に行わなかった職務上の過失により、乗組員が同ドラム上に足を乗せた姿勢で作業中であることに気付かないままウインチを操作し、乗組員がトッピングワイヤに巻き込まれたうえ、メインマストと同ドラムとの間に挟まれる事態を招き、全身挫滅などで死亡させるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 A受審人は、ブームなど発錆部の洗浄作業に伴って揚貨装置の操作を行わせる場合、ブームの移動などには危険が伴うから、作業責任者の操作者に対し、作業中の乗組員全体を見渡せる場所に、監視員を配置するよう指示すべき注意義務があった。しかし、同受審人は、操作者が平素から同操作に慣れているので特に指示しなくても大丈夫と思い、監視員を配置するよう指示しなかった職務上の過失により、前示の事態を招いて乗組員を死亡させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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