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平成14年神審第107号
件名

旅客船さんふらわあ さつま機関損傷事件
二審請求者〔指定海難関係人 D社〕

事件区分
機関損傷事件
言渡年月日
平成16年3月26日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(竹内伸二、中井 勤、相田尚武、村上文夫、川本 信)

理事官
杉崎忠志

指定海難関係人
A社B部 業種名:船舶修理業
C社 業種名:機械修理業
D社 業種名:鋲螺製造販売業
E社 業種名:海上運送業

損害
右舷主機B列1番シリンダ長・短ボルトが破断、クランクピン、シリンダライナ、ピストン、シリンダブロック及び架構が損傷

原因
鋲螺製造販売業者の連接棒ボルトの製造工程管理不十分及び船舶修理業者の右舷主機連接棒ボルトの点検不十分

主文

 本件機関損傷は、鋲螺製造販売業者が、連接棒ボルトを製造するにあたり、その工程管理が不十分で、また、船舶修理業者が、右舷主機の連接棒ボルトを開放した際、同ボルトの点検が不十分で、航海中、同ボルトのねじ部フランクに存在していた重なりが起点となって亀裂に進展したことによって発生したものである。
 
理由

(事実)
第1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年2月5日00時02分
 高知県室戸岬南西方沖合
 
第2 船舶の要目
船種船名 旅客船さんふらわあ さつま
総トン数 12,415トン
全長 186メートル
機関の種類 過給機付4サイクル12シリンダ・ディーゼル機関
出力 25,154キロワット
回転数 毎分400

第3 事実の経過
1 船体構造
 さんふらわあ さつま(以下「さつま」という。)は、平成4年11月に進水し、大阪港と鹿児島県志布志港間の定期運航に従事する、最大搭載人員842人の全通二層甲板型鋼製旅客船兼自動車渡船で、第2甲板下方の船体中央部船尾寄りから後方に区画された機関区域が、船首側から補機室、主機室及び軸室に区分され、2機の主機が主機室中央部両舷の対称位置に据え付けられ、それぞれ弾性軸継手、減速装置、中間軸、推進軸及び可変ピッチプロペラからなる軸系装置に連結されており、船舶安全法に基づく機関区域無人化船の資格を有していた。
2 主機
 主機は、フランス共和国F社(以下「F社」という。)が開発し、同社の認可を受けたG社H所が製造した、12PC4-2V型と呼称する、シリンダ配列を45度のV形としたトランクピストン型ディーゼル機関で、左舷のシリンダ列をA列、右舷のシリンダ列をB列と称し、船尾側から順に1ないし6番のシリンダ番号が付されていた。
 連接棒は、鍛造特殊鋼製で、本体と冠からなり、それらの合わせ面が同棒長手方向に対して30度の角度をもたせた斜め割りとなっており、同面には120度のセレーション加工を施してあった。そして、その小端部には円筒状のピストンピン軸受メタルが圧入され、また、大端部には鋼製裏金に鉛銅層、更に厚さ0.04ないし0.05ミリメートル(以下「ミリ」という。)のホワイトメタルでオーバーレイを施した2つ割りの薄肉クランクピン軸受メタルが、2本の連接棒ボルトによって外径465ミリの鍛鋼製クランクピンに組み込まれていた。
 両舷主機のシステム油系統は、それぞれ独立しており、容量24キロリットルのサンプタンクに溜められた潤滑油が、電動潤滑油ポンプによって吸引・加圧され、潤滑油冷却器を経て主軸受、クランクピン軸受及びピストンピン軸受に順次流れてそれぞれの軸受メタルを潤滑し、さらにピストン冠部を冷却したあとクランクケース底部に流れ落ち、再びサンプタンクに戻る循環経路をなしていた。
3 連接棒ボルト
 連接棒ボルトは、日本工業規格(以下「JIS」という。)でSNCM630と表記されるニッケルクロムモリブデン鋼製で、同棒大端部上位に位置する全長802ミリのもの(以下「長ボルト」という。)と、同部下位に位置する同712ミリのもの(以下「短ボルト」という。)を1組とし、いずれも、両端からの長さ120ミリの部分に呼び径64ミリ、ピッチ4ミリ、有効径61.192ないし61.292ミリのメートル細目ねじが転造加工され、それぞれ上端及び下端ねじ部に袋ナット及び六角ナット(以下「締付ナット」という。)をそれぞれ締込んで大端部の締結体を構成するようになっていた。
 ところで、袋ナット及び締付ナットは、締付けた際のおねじ各山の荷重分担を均一に分散させる目的で、めねじの端部数山のひっかかりの高さを漸減させたもの(以下「CDナット」という。)が使用されていたので、1条目のねじ山先端がボルトのねじ山の頂部から約0.8ミリの位置で接する状態で締付けられていた。
 そして、締付ナットの締付方法は、油圧締めが採用され、まず、油圧ジャッキに200キログラム毎平方センチメートル(以下「キロ」という。)の油圧をかけ、ボルトがわずかに伸張された状態にて締込んでこれを肌付位置とし、次に油圧を750キロに昇圧して更に伸張された状態で増し締めを行い、締付けを完了する旨がG社作成の主機保守点検整備基準書等に記載され、機関製造時の初期締付位置がわかるよう、合いマークとして締付ナット側面及びそれに相対する連接棒冠並びに同ボルト下端面にけがき線(以下「けがきマーク」という。)が施されていたが、運転時間や同ボルトの開放回数等に伴って増加する軸方向の伸び、ねじ部、ナット座面及びセレーションの摩耗並びに異物のかみ込み等により、けがきマークがずれることがあるので、異常の有無を判断するため、ボルトの締付けを行った際、同マークの位置を確認する必要があった。
4 ボルトの転造加工
 転造加工は、常温において円柱状の素材を、側面にねじ溝が施された転造ダイスと称する工具を転がしながら圧縮し、組織流動によってねじを形成させる製造方法で、切削加工と異なり、フランクにバイトによる切削痕を残すことなく滑らかな状態に仕上げることが可能なことから、高強度を要求されるボルトの製造に適しており、また、多量生産も容易な方法として広く普及していた。
 素材の圧縮は、JISでSKD11と表記される合金工具鋼製丸形転造ダイス2個を、ねじピッチの位相を合致させた状態で、素材の左右両方向から押し付ける方式で行われ、その力の大きさ(以下「転造力」という。)について、ねじのピッチ、長さ、呼び径及び素材の機械的性質を基に求めた変形抵抗係数で算出される値を標準としつつ、同ダイスの耐用時間を延ばすこと等を考慮し、可能な限り小さい値を採用することとされていたが、素材の引張り強さ及び転造時間を勘案した経験値とすることも一般的に許容されていた。
 ところで、転造加工されたボルトは、前記組織流動がフランクとなる斜面を形成しながら左右の組織が盛り上がる状況で行われるので、最終的に両組織が会合する極めて微細な隙間をもった合わせ面(以下「重なり」という。)が生じることを回避できないものであった。
 そして、重なりは、通常、ねじ山の頂部に現れるが、2個の転造ダイスの位相が合致していない場合や損傷した同ダイスが使用されると、複数又は不規則な重なりがフランク等同部以外の部位に生じることがあり、そのことがボルトの強度に重大な影響を与えるおそれがあるので、厳格な製造管理及び品質管理を行う必要があった。
5 転造ボルトの非破壊検査
(1)磁気探傷
 フランクの重なりを含む表面きずは、非破壊検査で探傷され、その手段として外観目視及び磁気探傷が実用上最適な方法であった。
 そして、磁気探傷を行うにあたっては、本件連接棒ボルトのような重量、大きさ及び形状の被検物の場合、同部に生じると想定される円周及び軸方向の表面きずに対し、磁化方法を極間法とすると著しく検出精度が劣ることから、それぞれコイル法及び軸通電法とし、磁粉の適用時期をコイル法に対しては残留法、軸通電法に対しては連続法とするのが妥当であった。
(2)表面きずの判定
 表面きずの判定については、昭和63年国際標準化機構が許容限界について定めた規定に準拠させることを目的に、平成5年JISB1043として呼び径5ないし39ミリのメートル並目ねじに適用できる公的基準が制定され、重なりの許容範囲が設定されていた。また、F社は、本件連接棒ボルトに適用できるよう独自の基準書(以下「F社基準」という。)を作成し、点検方法を外観目視及び磁気探傷としたうえで、拡大鏡を用いてねじ部フランクに認められるすべてのきずを欠陥と判定すべきである旨をボルトメーカー等を対象に指示していた。
 また、このことを受け、G社は、主機保守点検整備基準書に前記指示と同義の内容を記載し、機関保守管理者等に対して周知を図っていた。
6 指定海難関係人E社
(1)運航模様
 さつまは、平成5年3月15日I社J所で建造され、K社の運航管理の下、同月24日大阪港及び志布志港間の航路に就航し、同9年4月19日京浜港東京区及び苫小牧港間等の航路に変更されたのち、同11年4月4日再び大阪港及び志布志港間の航路に復帰し、翌12年2月1日K社が全額出資して新たに設立したE社に、保守管理者であった船舶部長、工務監督及び一部の船員を移籍して運航管理業務が引き継がれ、大阪港を出て往路14時間40分、復路13時間40分を計画所要時間として同型船Z号とともに、標準負荷率85パーセントを主機の常用負荷と定めて定期運航され、主機の運転時間が年間約5,000時間であった。
(2)保守管理体制
 さつまは、就航後、管海官庁の承認を受けた機関部継続検査計画表に基づいて1年ごとに法定検査が実施されており、その都度、両舷主機の合計24シリンダのうち、8シリンダのピストンを順次抜き出すなどして必要な保守が行われていた。
 E社は、平成12年3月8日さつまとZ号をY及びK社と共有することとなったとき、既に移管された運航管理業務に加え、労務管理並びに船体及び機関の保守管理等も主たる業務としてK社から引き継ぎ、同13年10月1日K社が解散し、翌14年3月14日L社に所有権が移転したのちも、同社から裸傭船して同業務を継続した。
7 指定海難関係人A社B部
 A社B部は、船舶の修繕及び船体のブロック製造を主たる業務とし、現業部門を司る工作部に技術課及び工作課を置いていた。
 技術課は、船体、機関及び電気の各部門に分かれ、それぞれに配置された工事担当技師に、工事発注者側の監督責任者等との情報交換窓口となって、工事の実施にあたっての要望事項や留意点等についての打合せ及び調整を行わせ、それらの情報を社内の関係部署に連絡して工事の円滑な遂行を図る一方、G社等の機関メーカーから、必要な技術情報を入手できる体制を整えていた。
 また、工作課は、それぞれ作業長をリーダーとする第1ないし第3ブロックから成り、第3ブロックに配属された27人に機関関係の開放、整備及び組立等の実務を担当させており、工事を実施する作業員の手配を行うにあたっては、技術課から受けた工事に関する情報を基に、具体的施工方法等について同課と協議したうえ、必要に応じて協力業者としての契約を交わした外部の機関整備専門業者に工事を請け負わせていた。
8 指定海難関係人C社
 C社は、昭和21年3月M市に本社を置いて設立され、船舶用内燃機関をはじめとする機関全般の整備を主な業務とし、沖修理のほか、造船所からの依頼に基づき、協力業者として機関の整備等を請け負っており、さつまの主機と同型式機関については、平成4年3月以降Z号の主機ピストン抜き出し工事等多くの整備実績を有し、同11年4月1日A社B部との間で、工事受注にあたっては工事内容を記載した注文要領書、仕様書、図面及びその他必要な資料の提示を受けること等を取り決めた工事請負基本契約を結んだ。
9 指定海難関係人D社
 D社は、昭和24年11月ボルト製造業務を開始し、同48年5月同社名に変更したもので、M市に本社を置き、本社及びN県にある工場での船舶用機関及び原子力・化学プラント等の重要部品に用いられるボルト及びナットの製造を主な業務とし、転造加工によるボルトの製造については長年の経験と実績を有していた。
 D社は、ボルトを転造加工によって製造するにあたり、自ら定めた製造工程管理基準に基づき、製造部生産技術課に発注者から提供された図面及び仕様書等に記載された事項を満足させるため、工程上の留意点を記載した作業指示票の作成、同部生産管理課に作業図面に基づいた材料の受け入れから製品の出荷に至る工程管理、及び品質管理部に工程中の非破壊検査等の社内検査及び船級協会等の外部検査機関による検査立会等の品質管理をそれぞれ担当させていた。
10 連接棒ボルトの製造模様
(1)連接棒ボルトの受注状況
 Q社は、G社P室がその品質管理体制についての監査を約2年ごとに実施していたD社と、連接棒ボルト等の製造に係る取引関係を20年以上にわたって継続しており、G社が製造、販売したディーゼル機関のうち、保証期間を超過したものについて、その部品供給等のアフターサービス業務を担当し、客先から受注した同ボルトの製造を専らD社に依頼していた。
 平成8年10月Q社は、翌9年1月に実施する予定であったさつまの第一種中間検査工事において新替えすることとしていた、両舷主機各列1番及び4番シリンダの長・短合計16本の連接棒ボルトの注文を受け、表面きずの判定を行うにあたっては、F社基準による旨及び受検する船級協会名等を指示した製作図、納期並びに製作仕様書等を提示し、その製造をD社に依頼した。
 ところが、D社は、F社基準を所有していなかったものの、これまでにも多数の同種ボルトを製造し、製造に起因する機関故障が生じたとする報告を受けたこともなかったので、Q社に対し同基準の提示を要求することなく、製造に着手した。
(2)連接棒ボルトの転造加工
 平成8年10月D社は、受注した連接棒ボルトを製造するにあたり、他社からの注文を含めた16本の長ボルトをロット番号LN70とし、前記規格の鋼材を製作図に従って切断、切削し、小孔や溝の加工を施して転造前の工程を終えた。
 次いで、同社は、転造ダイスを回転数毎分約58で回転させ、転造力45トン、転造時間約10秒に定めて30パーセントばかりのねじ山を形成させ、続いて同回転数の下で、転造力80トン、転造時間約20秒に変更して完全なねじ山を形成させる2段階の転造加工を開始した。
 ところで、転造ダイスは、その材料が十分な硬さの機械的性質を有していたものの、その耐久性が主として転造加工される素材の硬さに依存していることから、その値が大きい本件ボルト素材の同加工に用いる場合には損傷を生じるおそれがあった。
 しかし、D社は、転造加工中、いつしか転造ダイスに損傷が生じ、それが進行するに伴って組織流動が適正に行われない事態となり、同一ロットの末期に転造された長ボルトのフランクに重なりが生じる状況となっていたが、同ダイスの点検を十分に行わないまま16本の転造加工を終えた。
(3)連接棒ボルトの検査模様
 こうして、転造加工された長ボルトのうち数本は、それらのフランクに、ねじ山の頂部から約0.8ミリの位置で、円周方向からねじの谷部に湾曲する形状(以下「鉤型(かぎがた)模様」という。)の極めて微細な線状痕となって現れた重なりが存在していたが、全数の外観目視検査で気付かれず、無欠陥と判定された。
 次いで、D社は、これら長ボルトをさらに詳しく点検する目的で磁気探傷を行った際、鉤型模様を検出できる状況であったが、軸方向に想定される欠陥に対しては、磁化方法及び磁粉の適用時期をそれぞれ軸通電法及び連続法として無欠陥と判定したのち、円周方向に想定される欠陥に対しては、同方法をコイル法としたものの、同時期を残留法とするなどの適切な方法をとらなかったので、磁粉模様が明瞭に現れず、鉤型模様となって現れていた重なりを見落としたまま完成検査を終え、Q社指定の外部検査機関立会の下、同ボルト端面に検査マークを打刻した。
(4)表面処理
 D社は、完成検査を経た長ボルトに、指示された製造仕様に従って、ねじの初期なじみを向上させることなどを目的とした燐酸塩皮膜を施すこととし、外部業者に依頼して同皮膜処理を終えた。
 こうして、最終工程を終えた16本の長ボルトは、燐酸塩皮膜処理がなされたことにより、鉤型模様が外観目視及び磁気探傷では全く認めることができない状態となり、重なりが生じていた数本を含めた8本の長ボルトが、別のロットとして製造された同数の短ボルトともにQ社を経てさつまに納品された。
11 連接棒ボルトの保守模様
 さつまの連接棒ボルトは、運転中、繰り返し引張り及び曲げ応力を受け、材料の疲労が徐々に進行することから、12,000時間毎に開放し、ねじ山各部を磁気探傷することにより欠陥の有無を点検するほか、負荷率85ないし90パーセントの標準的使用条件での耐用時間を約24,000時間としてこれを経過するか、若しくは、肌付位置から締付位置までのナット回転角度が設定された制限値を超えた場合には、新替えすべきである旨が主機保守点検整備基準書等に記載されていた。
 ところで、両舷主機各列1番及び4番シリンダの長・短合計16本の連接棒ボルトは、平成9年2月第2回定期検査工事のために入渠した長崎県に所在する造船所において、使用時間が約22,000時間となっていたところ、特段の異常が発見されなかったものの、機関部継続検査計画表による同12年1月の次回開放予定時期には、前記耐用時間を大幅に超過すると予想されたことから、全数が同8年10月D社が製造した前記ボルトと新替えされ、右舷主機B列1番シリンダにはフランクに重なりを生じていたおねじ側に袋ナットがねじ込まれた状態で連接棒が復旧された。
12 本件前の開放状況
 平成12年1月さつまは、第一種中間検査工事を実施するため、A社B部に入渠し、検査時期にあたっていた両舷主機各列1番及び4番シリンダのピストンを抜き出すこととなり、同B部から依頼を受けたC社による開放及び復旧、並びに同B部による開放中の点検が実施された。
 ところが、A社B部は、使用時間が約16,900時間となっていた各連接棒ボルトが開放された際、ねじ部の燐酸塩皮膜が袋ナットのめねじと擦過して除去されたので、右舷主機B列1番シリンダ長ボルトフランクの鉤型模様が外観目視できる状況となっていたが、拡大鏡を用いるなどして十分に点検を行わず、その後、非破壊検査を依頼された外部専門業者が、不適切な方法で磁気探傷を行ったため同模様を発見できず、同業者から異常がないとの報告を受けたので、同シリンダのクランクピン及びピストンピン軸受メタル、同棒大・小端部等に異常がないことを確認したのち、同模様を見落としたままC社に復旧を指示した。
13 連接棒ボルトの締付状態
(1)締付模様
 C社は、A社B部において、両舷主機各列1番及び4番シリンダのピストンを抜き出すにあたり、連接棒大端部のけがきマークが識別しにくいこともあって、同マークに代えてペイントマーカーによる仮の合いマークを施したうえで同大端部を開放し、抜き出したピストンや連接棒ボルト等についてA社B部による点検を受けた。
 その後、前記のとおり復旧を指示されたC社は、所定の締付要領に従って長・短ボルトの締付けを行い、合いマーク位置がずれることがあることを承知していなかったものの、工事を行った全シリンダの同ボルトについて、仮の合いマークが合致していることを確認し、復旧を終えた。
(2)運航中の点検模様
 連接棒ボルトは、締付状態について、600時間ごとに合いマーク位置を目視することによって緩みの有無を点検することとした機関メーカーの指示に基づき、運転時間が約420時間となる1箇月ごとに、主機の担当者である一等機関士によりクランク点検が実施されたときに合わせ、緩みの有無が目視点検され、就航以来同マーク位置にずれが認められなかったので、一度も増し締めなどの措置がとられることなく使用されていた。
14 本件発生に至った経緯
 さつまは、平成12年2月初旬第一種中間検査工事を終えたのち、直ちに運航に復帰し、常用負荷で運転を繰り返していたところ、いつしか右舷主機B列1番シリンダの長ボルトねじ部のうち、袋ナット1条目ねじと相対するフランクに存在していた重なりが起点となって亀裂に進展し、ゆっくりした速度で次第に進行し始めたので、同ボルトの締付力が低下する傾向となり、連接棒合わせ面のうち同ボルト側セレーション部にフレッティングが生じる状況で運航が続けられた。
 平成13年1月さつまは、第3回定期検査工事のためT県に所在する造船所に入渠したとき、前記フレッティングにより、セレーション面に生じた打痕(以下「フレッティング痕」という。)を認めることができる状況になっていたが、両舷主機各列2番及び5番シリンダが検査時期にあたっており、右舷主機B列1番シリンダのピストンが抜き出されなかったので、そのことが発見されないまま、完工前に実施された海上試運転後、全シリンダ連接棒ボルトの合いマーク位置にずれのないことが確認されたのみで同工事を完了した。
 そののち、さつまは、運航に復帰したところ、右舷主機B列1番シリンダ長ボルトの重なりから進展した亀裂が進行するに相まって、前記セレーション面におけるフレッティングが進行し、同面の摩耗や変形量が増加して同シリンダ長ボルトの締付力が益々低下するうち、分担する応力が過大となった同シリンダ短ボルトの袋ナット座面にフレッティングが生じる状況となっていたが、クランク点検ではそれを認めることが不可能であったので、このことに気付かれないまま運航を継続していた。
 こうして、さつまは、機関部職員4人及び同部員1人ほか20人が乗り組み、乗客199人車両66台を載せ、船首6.22メートル船尾5.78メートルの喫水をもって、平成13年2月4日18時00分志布志港に向け大阪港を発し、常用負荷とするため両舷主機を回転数毎分390に増速し、翼角目標値を29.5度に定めて自動負荷制御装置を作動させ、同日20時00分から機関部全員で機関室全体の点検が実施され、異常のないことが確認された。
 20時30分さつまは、機関長の許可を受け、機関区域を無人状態として運転中、右舷主機B列1番シリンダ長ボルトの亀裂が、ボルト中心部付近まで進行した状態となっていたところ、翌5日00時02分少し前、同ボルトが前記亀裂進行部で破断し、続いて、一気に過大な応力を単独で担う状況となった同シリンダの短ボルトも軸部中央付近で延性破断し、いずれもクランク室底部に落下したので、冠と遊離した連接棒本体がシリンダブロックや同室ドア等に激突したことにより、シリンダジャケット内の冷却清水が同室内に激しく漏洩するとともに、著しく変形した同室ドアと架構間から多量の潤滑油とオイルミストが吹き出す状況となり、00時02分室戸岬灯台から真方位238度27.4海里の地点において、同ミストを検知した機関室火災警報装置が作動した。
 当時、天候は雨で風力7の東北東風が吹き、海上は時化模様であった。
 さつまは、居住区内の機関室火災を示す延長警報が吹鳴する中、これを聴いた機関長ほか機関部職員が機関室に急行して前記状況を認め、00時04分右舷主機の操縦ハンドルを停止位置としたが、依然として冷却清水量が減少し続け、両舷主機の冷却清水系統を共通状態としていたことから、同時12分左舷主機の冷却清水圧力低下警報装置が作動し、直ちに同主機も停止することを余儀なくされたので、航行が不能となった。
 その結果、さつまは、右舷主機の運転を断念せざるを得なかったものの、冷却清水系統を独立させることによって左舷主機の運転を再開することが可能となり、片舷運転による自力航行で大阪港に帰港後、A社B部に回航され、右舷主機の修理が行われた。
15 右舷主機の損傷及び修理の状況
(1)修理模様
 右舷主機は、平成13年2月5日からA社B部において損傷状況の調査が行われ、B列1番シリンダ連接棒の長・短ボルトが破断し、クランクピン、シリンダライナ、ピストン、シリンダブロック及び架構に損傷が生じていることが判明したので、クランク軸、シリンダライナ及びピストンを新替えするなどの修理が行われた。
(2)連接棒ボルトの破断状況
 B列1番シリンダ長ボルトは、袋ナットの1条目ねじに相対する位置のねじ部で、その頂部から約0.8ミリの位置にあった重なりを含む数箇所を起点として破断しており、破断面には、全体面積の約80パーセントに金属が疲労して破壊に至った際の特徴とされる貝殻模様等が認められた。
 一方、同シリンダ短ボルトは、ねじ部に損傷はなく、軸部のほぼ中程で延性破断していたが、袋ナット座面の大部分に明瞭な金属光沢が認められた。
 そして、当時、両ボルトの破断原因を特定できなかったことから、同一ロットとして製造され、同時期に使用を開始したボルト全数が念のため新替えされた。
(3)連接棒の状況
 B列1番シリンダ連接棒大端部は、平成12年1月A社B部において開放された際、その変形及び合わせ面セレーション部の亀裂の有無について点検された結果、異常が認められなかったので現状で復旧されたが、本件発生時、冠が遊離した状態でしばらくの間運転されていたことから、一部が著しく圧壊しているものの、その長ボルト側同セレーション部には多数のフレッティング痕が認められた。
(4)クランクピン軸受メタルの状況
 B列1番シリンダクランクピン軸受メタルは、遊離した連接棒大端部とクランクピンとの間で激しく挟撃されて破壊したが、残存していた多数の破片の摺動面には、焼損を示す痕跡が認められなかった。
16 本件後にとられた措置
(1)D社
 D社は、フランクに生じた重なりが亀裂の起点になったことを重視し、また、転造加工によるボルトの製造を行った際、ねじの形成状態の点検が十分でなかったことを認め、本件後、同点検のための非破壊検査について、拡大鏡を用いて外観目視することとしたほか、フランクの表面きずをより有効に現出させるため、コイル法で行う磁気探傷においては磁粉の適用時期を残留法とするなど、同種事故の再発を防止する措置を講じた。
(2)A社B部
 A社B部は、平成12年1月さつまの第一種中間検査工事において、右舷主機B列1番シリンダの連接棒を開放した際、長ボルトのフランクに鉤型模様となって現出していた重なりを見落とした可能性を認め、本件後、同種ボルトの点検を行うにあたっては、責任者を定めて外観目視検査の徹底を図るなど、同種事故の再発を防止する措置を講じた。

(主張に対する判断)
 右舷主機B列1番シリンダ短ボルトの締付力について
 D社は、短ボルト袋ナットの座面に現れた金属光沢がフレッティングによるもので、平成12年1月さつまの第一種中間検査工事において、同ボルトが開放前に付された合いマーク位置が合致した状態で復旧されたことをもって、その締付力が十分でなかった結果であるとし、このことが同シリンダ長ボルトに過大な応力を分担させた状態で運転が続けられた結果、長ボルトフランクに存在していた重なりが亀裂に進展したと主張している。
 一方、A社B部、C社及びE社は、同ボルトを含む同時期に組み込まれた16本のボルトの締付方法に誤りはなく、当初の締付力に不足はなかったと主張している。
 これらの主張に対し、当海難審判庁は、以下のとおり判断した。
 前記金属光沢は、フレッティングが生じていたことを示すものと認められるが、併せて、同シリンダ連接棒大端部合わせ面のセレーションのうち、長ボルト貫通穴付近に点在する打痕もフレッティング痕として認められることから、長・短ボルトの破断に至る過程において、両ボルトに締付力が不足する状態があった。
 双方のフレッティングは、それぞれ、長ボルトフランクに存在していた重なりが起点となって金属疲労により亀裂に進展、更に進行し、その弾性変形量が減少したことによって長ボルトの締付力低下を招き、長ボルト側締結体の遊離が進行してセレーション接合面の微少な変形や摩耗が助長されたことと、そのことが短ボルト袋ナット座面に微少な相対変位を生じさせる過程で生じたものである。
 すなわち、短ボルト袋ナット座面での微少な相対変位が、同ボルトの締付力が不足していたことによるとすれば、長・短両ボルトに外力が付加されることになるものの、短ボルトの方が大きくなることから、すでに事実認定した明らかに異なった両ボルトの破断位置及び状況と符合しない。
 また、両ボルトが最後に組み込まれてから破断に至るまでの運転時間は、約5,000時間の長時間であり、その間クランクピン軸受メタルになんら損傷が生じていなかったと認められることから、長ボルトの亀裂は徐々に進行していたものの、大端部に著しい遊離を生じていない状態が長時間持続していたと考えられる。
 したがって、連接棒ボルトの締付けが、開放前に付した合いマーク位置に合致する位置で完了されていたことをもって、締付力が不十分であったとする根拠とはできず、加えて、16本のボルトのうち当該シリンダの短ボルトだけに締付力が不足する状況で復旧されたとすることの妥当性が認められないから、D社の主張を採用することはできない。

(原因に対する考察)
 本件機関損傷は、中速ディーゼル機関を主機とし、2機2軸の推進装置を有する旅客船兼自動車渡船において、主機連接棒ボルトが、使用時間約22,000時間で破断したもので、以下、その原因について考察する。
1 長ボルト材料
 長ボルトは、JISでSNCM630と表記されるニッケルクロムモリブデン鋼を材料とし、鋼材メーカーにおいて所定の熱処理を施されたのち、その組成及び機械的性質が記載されたミルシートとともにD社に納入されたもので、本件後にR社が行った組成分析結果が、同シート及びJIS規格のいずれにも適合していることから、機関メーカーが要求する材料仕様を満足していたと認められる。
 材料の機械的性質のうち、転造に伴う組織流動に大きく影響するものとして伸び及び絞りが挙げられ、それぞれ12及び30パーセント以上の値を有する材料が転造加工に適用するうえで問題がないとされていることから、伸び15.7及び16.3パーセント並びに絞り60.9及び61.4である本件ボルト材料は、同流動を阻害するものではないが、一方、主として転造ダイスの耐久性に影響を与えるものとして硬さが挙げられ、製造上の経済的見地から、ブリネル硬さ344以下が望ましいとされているところ、同硬さが350及び347である同材料は、同ダイスに損傷を生じさせやすいものであったと言える。
 また、R社は、船用エンジンボルト折損調査報告書において、長ボルト材料の硫黄含有量が0.021パーセントで、JIS規格以下であるもののやや高い値であることに加え、同ボルトの破断に至った重なりの亀裂進展部についてEDX分析を行い、その進展方向に硫化マンガンが細長く伸びた状態で介在していることを指摘している。
 しかし、このことは、亀裂の展伸性を助長する要素のひとつとして認めることができるが、亀裂発生の直接的原因とまでは言えない。
2 長ボルトの転造加工模様
 破断した長ボルトには、そのフランクに複数の不連続な鉤型模様が認められ、R社及びQ社が調査したところ、同模様が現れた部位には転造加工に伴う重なりが存在し、破断の起点がねじ山頂部から約0.8ミリの同重なりの部位にあると結論付けている。
 また、同一ロットで製造され、運転時間が同じであるものの破断に至らなかった他シリンダの使用済み長ボルトにも、同様の模様が現れているが、破断した長ボルトのそれと比べ、その現出数が少なく、明瞭度も軽微であると認められる。
 これらの鉤型模様は、転造加工が繰り返された際、いつしかダイスに損傷が生じたが、そのことに気付かれないまま同加工が継続されたことにより生じたのであって、損傷が進行するに伴い、次第に顕著な状態に変化していったものと推定できることから、破断した長ボルトは同一ロットの末期に転造されたもので、適正な磁気探傷による非破壊検査が行われていれば、十分に現出させることができたと考えられる。
 したがって、D社が、連接棒ボルトを製造するにあたり、転造ダイスの点検を十分に行わなかったこと、及び転造加工を終えて形成させたねじ部について、磁化方法をコイル法とした磁気探傷による非破壊検査を行った際、磁粉の適用時期を残留法とするなど、予想される表面きずを効果的に識別できる方法をとらず、フランクに生じていた重なりを見落としたことは、本件発生の原因となる。
3 CDナットが使用されていた点
 ねじ部に生じる重なりの許容限界の判定基準としては、呼び径39ミリ以下のメートル並目ねじに適用でき、ある程度の重なりを許容したJIS規格のほか、フランクに生じたいかなる重なりも許容しないとするF社基準、及び同様の内容が記載された主機保守点検整備基準書等が利用できる状況であった。
 ところが、D社は、ねじ部に生じる重なりの許容限界を判定するにあたり、前記JISの規格を本件ボルトに独断で準用していたので、仮に鉤型模様を認めたとしても、それが同規格の許容範囲付近に位置していたことから無欠陥とし、F社の要求を満足しない可能性があった。
 すなわち、締付けられた状態のCDナットは、その1条目のねじ山先端と、ボルトのねじ山の頂部から約0.8ミリの位置にあった重なりとがほぼ合致していたと認められるものの、適切な方法で磁気探傷が行われ、F社基準が適用されていれば、この重なりが生じたボルトは廃却されていたこととなり、同ナットの採用をもって、本件発生の原因とすることはできない。
4 表面きずの判定
 同一ロットとして転造加工を終えたうちの数本の長ボルトは、そのフランクに検出可能な鉤型模様が存在していたが、D社における最終工程で燐酸塩皮膜処理が施されたので、同模様を視認できない状態で出荷され、右舷主機B列1番シリンダ等の連接棒に組み込まれたのち、平成12年1月第一種中間検査工事において開放されたとき、めねじとの擦過により同皮膜が除去されたので、同模様を視認できる状態になっていたと認められる。
 したがって、A社B部が、平成12年1月さつまの第一種中間検査工事を請け負い、右舷主機B列1番シリンダの連接棒ボルトを開放した際、長ボルトねじ部について、拡大鏡を用いるなどして十分に外観目視検査を行わず、そのフランクに生じていた重なりを見落としたまま復旧したことは、本件発生の原因となる。
5 亀裂の起点
 長ボルトの破断は、A社がその破断面を観察したところ、袋ナット1条目のめねじ先端との接触面に該当する圧力面フランクのねじ山頂部から約0.8ミリの部位に生じていた、深さ0.2ないし0.4ミリの重なりに含まれる近接した2箇所を起点として軸とほぼ直角方向の亀裂に進展するうち、同起点のほぼ180度反対側を中心に新たな疲労亀裂が発生し、同様に進行したもので、破断面のうち金属疲労破断及び急速破断を示す面積割合は、それぞれおよそ80及び20パーセントであるとし、金属疲労破断のうち、前記2箇所を起点とするものの面積は全体の約65パーセントであったと報告されている。
 以上の報告は、R社及びS社が行った観察結果と比較し、金属疲労破断面積の評価について相違があるものの、亀裂の起点とした部位が同一であり、フランクに生じていた重なりが亀裂に進展したことに疑いの余地はなく、金属疲労破断面の亀裂進行域が比較的平坦な状態を呈していることを勘案すると、この進行速度は非常に遅かったと考えるのが相当である。
 一方、短ボルトの破断は、そのねじ部になんら損傷なくして、ボルト中央部付近で延性破断したもので、すでに述べた同ボルト袋ナット座面に認められるフレッティング痕との直接的因果関係を認めることができない。
6 重なりの進展
 本件連接棒ボルトの破断は、フランクに存在していた重なりが起点となって亀裂に進展したものであるが、進展の可能性が応力拡大係数等のパラメータを用いた破壊靭性をもって評価できる。
 G社などは、本件ボルトの応力解析を行い、締付応力72.8キログラム毎平方ミリメートルの条件下で、主機が常用負荷で運転され、爆発力及び慣性力に基づいて変動する引張り応力を付加した場合、重なりの深さが0.4ミリに達すると亀裂に進展するとし、長ボルトに存在していた重なりの深さは0.2ミリであったので、亀裂への進展原因を同深さ以外に求めるべきとしている。
 しかしながら、重なりの深さを評価するにあたっては、連接棒ボルトにかかる外力の作用線が同ボルト軸線とずれており、引張り応力のみならず曲げ応力もクランクピンの位置によってそれぞれ変動しながら同ボルトに作用していることから、長ボルトが組み込まれた際の重なり位置を条件に加える必要があり、その限界深さを一様に推定することは妥当とは言えない。また、起点となった重なりの深さを0.2ミリと判断した根拠が明確でない上、複数の起点が存在していたことについての評価が示されておらず、それらが競合して亀裂への進展に至らせた可能性を否定するには至っていない。
 以上のことからも、重なりが浅かったとしても、短ボルトの締付力不足に起因する、長ボルトの応力振幅の増加のみをもって、亀裂への進展が生じるとまでは言えない。 

(原因)
 本件機関損傷は、鋲螺製造販売業者が、連接棒ボルトを転造加工方法で製造するにあたり、転造ダイスの点検が十分でなかったこと、及び転造加工を終えて形成されたねじ部の非破壊検査を行った際、その方法が適切でなかったことと、船舶修理業者が、右舷主機の連接棒ボルトを開放した際、同ボルトの点検を十分に行わなかったことから、ねじ部フランクに重なりが存在した同ボルトの使用が続けられ、航海中、重なりが起点となって亀裂に進展したことによって発生したものである。
 
(指定海難関係人の所為)
 D社が、連接棒ボルトを転造加工方法で製造するにあたり、同加工を終えて形成されたねじ部について、磁化方法をコイル法とした磁気探傷による非破壊検査を行った際、被検物の大きさや形状を考慮し、磁粉の適用時期を残留法とするなど、高い検出精度を得ることができる方法をとらなかったことは、本件発生の原因となる。
 D社に対しては、本件後、磁化方法をコイル法とした磁気探傷による非破壊検査を行うにあたっては、磁粉の適用時期を残留法とするなど、同種事故の再発を防止する対策を講じた点に徴し、勧告しない。
 A社B部が、第一種中間検査工事において、右舷主機の連接棒ボルトを開放した際、同ボルトねじ部について、拡大鏡を用いるなどして十分に外観目視検査を行わなかったことは、本件発生の原因となる。
 A社B部に対しては、本件後、外観目視検査の徹底を図るなど、同種事故の再発を防止する対策を講じた点に徴し、勧告しない。
 C社の所為は、本件発生の原因とならない。
 E社の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。





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