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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  爆発事件一覧 >  事件





平成16年函審第5号
件名

遊漁船第二十八清栄丸爆発事件(簡易)
(二審請求者 副理事官 宮川尚一)

事件区分
爆発事件
言渡年月日
平成16年3月26日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第二十八清栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船員室、仮設部屋を焼損

原因
ガスストーブ取扱いに係る指示不十分

裁決主文

 本件爆発は、ガスストーブの取扱いの指示が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年2月3日05時40分
 北海道白老港
 
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第二十八清栄丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 180キロワット

3 事実の経過
 第二十八清栄丸(以下「清栄丸」という。)は、船体中央部に操舵室を備えたFRP製遊漁船で、甲板下には、船首方から順に船倉、2個の魚倉、機関室、船倉、舵機室が設けられ、操舵室後方の高さ1.17メートル幅1.62メートル長さ2.50メートルの囲壁内に船首方から順に機関室上部、船員室及び冬期用仮設部屋が設置されていた。
 機関室上部は、長さ0.80メートルで、左舷船尾側に船員室と通じる引き戸が設けられ、船員室は、長さ0.77メートルで、左舷船尾側に仮設部屋と通じる高さ0.89メートル幅1.10メートルの引き戸があり、仮設部屋は、長さ0.93メートルで、出入口として左舷船尾側に船員室と同寸法の引き戸が設置されており、釣客が暖をとれるように可搬式ガスストーブが備えられていた。
 A受審人(昭和59年3月一級小型船舶操縦士免許取得)は、例年日曜日に遊漁船業に従事していたが、平成15年は1月から2月まで同業を営むことにし、ガスストーブ用として液化プロパンガスのボンベ(以下「ボンベ」という。)を船員室屋根右舷側に固縛して置き、ボンベに接続したゴムホースを船尾方を経て仮設部屋の天井を沿わせ右舷側に置いたガスストーブに導いていた。また、同人は、冬期における係留中、ガスストーブを機関室に移動し、機関冷却水の凍結を防ぐために使用しており、船員室に別のボンベ1本を置いて機関室までゴムホースを引き、使用後はボンベのバルブを閉めてゴムホースをガスストーブから抜いたうえ、ボンベに巻き付け、元の位置に戻したガスストーブに天井を沿わせたゴムホースを接続していた。
 平成15年2月3日05時00分ごろA受審人は、白老港の物揚場において、船員室屋根のボンベのバルブを開放し、ガスストーブを点火可能な状態にする等を行い、発航準備を終えて釣客を乗船させたが、その際、ガスストーブの調子が悪いときには釣客から連絡があるものと思い、釣客に対し、同ストーブの点火つまみと火力調整つまみのほかは手を触れない旨の注意書きを掲示したうえ口頭で伝えるなど、ガスストーブの取扱いの指示を十分に行わなかった。
 A受審人は、1人で乗り組み、釣客6人を乗せ、さくらます釣りの目的で、船首0.13メートル船尾1.38メートルの喫水をもって、05時30分白老港物揚場を発し、同港沖合6海里の釣り場に向かった。
 A受審人は、機関を微速力前進にかけて2.6ノットの対地速力とし、港口に向け港内を南下中、釣客が暖をとろうとガスストーブを点火しようとしたが、点火しなかったのでボンベを捜し、船員室の引き戸を開けて置かれていたボンベのバルブを開放したところ、プロパンガスが仮設部屋内に流入し、05時40分釣客がガスストーブを点火した瞬間、アヨロ鼻灯台から055度(真方位、以下同じ。)6.6海里の白老港東防波堤突端に設置された赤色灯灯柱から008度420メートルの地点において、プロパンガスに引火して爆発した。
 当時、天候は晴で風力2の北北西風が吹き、潮侯は高潮時であった。
 A受審人は、釣客から本件発生を聞き、急ぎ近くの岸壁に着岸して海水用ポンプで放水し、僚船等の支援を得て消火活動を行った。
 爆発の結果、清栄丸は、船員室、仮設部屋を焼損したが、のち修理され、A受審人及び釣客は無事であった。 

(原因)
 本件爆発は、北海道白老港において、釣客用の仮設部屋に暖房用ガスストーブを準備して遊漁のため発航する際、釣客に対して同ストーブの取扱いの指示が不十分で、同ストーブに接続されていないボンベのバルブが開放されてプロパンガスが隣室に流入し、同室に置かれたガスストーブが点火されたことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、北海道白老港において、釣客用の仮設部屋に暖房用ガスストーブを準備して遊漁のため発航する場合、釣客が隣室のボンベのバルブを開けることのないよう、釣客に対し、同ストーブの点火つまみと火力調整つまみのほかは手を触れない旨の注意書きを掲示したうえ口頭で伝えるなど、ガスストーブの取扱いの指示を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、ガスストーブの調子が悪いときには釣客から連絡があるものと思い、同ストーブの取扱いの指示を十分に行わなかった職務上の過失により、釣客が隣室の同ストーブに接続されていないゴムホースを巻き付けたボンベのバルブを開放し、プロパンガスが仮設部屋に流入して爆発を招き、船員室、仮設部屋を焼損するに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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