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平成15年函審第51号
件名

漁船第二十三かもめ丸沈没事件

事件区分
沈没事件
言渡年月日
平成16年2月17日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一、黒岩 貢、野村昌志)

受審人
A 職名:第二十三かもめ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
全損

原因
開口部(船底部プロペラ点検用のぞき窓の締め付け状況)の確認不十分

主文

 本件沈没は、船底部プロペラ点検用のぞき窓の締め付け状況の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月30日00時51分
 北海道岩内港北西方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十三かもめ丸
総トン数 9.7トン
全長 17.64メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 第二十三かもめ丸(以下「かもめ丸」という。)は、刺網漁業に従事する一層甲板型のFRP製漁船で、船体中央部に操舵室を備え、同室後方に引戸による小窓を設けた機関室囲壁が隣接し、甲板下には船首から順に氷倉、第一魚倉、第二魚倉、機関室及び船倉が配置され、船倉の後方が船横に3分割されていて、中央区画の船首側に舵機室が配置されており、同室の蓋付き倉口が甲板上に設けられていた。
 舵機室は、前部にプロペラ点検用のぞき窓(以下「のぞき窓」という。)、後部に舵箱をそれぞれ配していた。
 また、小型漁船の水密隔壁については、機関室の前端に同隔壁を設けなければならないことが小型漁船安全規則により規定されていたものの、他には特に規定がなく、機関室後部隔壁下部中央に、スターンチューブグランドパッキン調整用に縦約15センチメートル(以下「センチ」という。)幅約40センチの開口部が設けられ、また、舵機室前部隔壁最上部中央には、平成8年に主機を換装した際に設けられた、縦約20センチ幅約60センチの開口部がそのままの状態で残されていた。
 のぞき窓は、径220ミリメートルで、中心に径71ミリメートルの強化円形ガラスが設置されており、船底開口部の枠に等間隔に取り付けられた4個のバタフライナット付き起倒式締め付けボルトが、同窓の外周に備わったU字形の鍔を締め付けて水密を保持するようになっており、網がプロペラに絡んだとき等に、同窓を開放してこれを取り外せるようになっていた。また、同窓は、プロペラの排出流や船体振動等によりバタフライナットが徐々に緩みを生じて航行中に開放するおそれがあり、時折倉口からその締め付け状況の確認を行う必要があった。
 A受審人(昭和50年2月一級小型船舶操縦士免許取得)は、平成13年6月北海道岩内港で上架した際にのぞき窓を取り替えて以来、プロペラに網が絡んだことはなかったことから同窓を開いたことはなく、その締め付け状況を確認したこともなかった。
 かもめ丸のほっけ刺網漁は、00時ごろ岩内港を発航して同港付近の漁場に至り、前日に投網した刺網を揚げたのち、準備していた刺網を投網し、02時ごろ帰港して作業員に網から漁獲物を外させてから、刺網を舵機室上方の後部甲板に積載して発航準備を整える形態で行われており、のぞき窓の締め付け状況の確認は、刺網を積載する前等、同準備の段階で行う必要があった。
 平成14年8月29日02時ごろA受審人は、操業を終えて岩内港に入港し、作業員により漁獲物を外し終えたが、のぞき窓が開くことはあるまいと思い、締め付け状況の確認を十分に行うことなく刺網2はいを後部甲板に積載した。
 かもめ丸は、A受審人ほか甲板員1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.2メートル船尾2.2メートルの喫水をもって、船尾トリム、中央の乾舷1.0メートル、のぞき窓が水線より0.7メートル下方となる状態で、翌30日00時07分岩内港を発し、同港北西方4海里の漁場に向かった。
 00時22分半A受審人は、後志泊港灯台から168度(真方位、以下同じ。)3.9海里の地点に達し、針路を312度に定め、機関を全速力前進にかけ、15.0ノット対地速力(以下「速力」という。)で、自動操舵により進行した。
 00時32分半A受審人は、後志泊港灯台から206度2.4海里の地点において、船尾部船底からの衝撃音を聞いたことから、機関室囲壁内に待機していた甲板員にビルジの状況等を確認させたところ、異状が見あたらないとの報告を受け、また船体振動も認めなかったのでそのまま続航したが、このころかもめ丸は、プロペラの排出流や船体振動等によりバタフライナットが緩みのぞき窓が開いて舵機室に浸水し始め、その後海水が船倉、機関室後部隔壁開口部を経て同室内に流入し船尾が沈下していった。
 00時37分半A受審人は、船首が浮上して先行していた僚船の灯火が見えなくなり、初めて船尾の沈下と速力がGPSで10.3ノットに落ちたことを知って操舵室後部の窓から機関室の様子を見たところ、海水が機関室下部まで達しているのを認め、沈没の危険を感じ、僚船に救助を依頼して反転し、00時38分後志泊港灯台から231度2.3海里の地点で、針路を132度とし5.0ノットの速力で岩内港に向かった。
 こうしてかもめ丸は、00時43分海水が機関室に流入し続けて機関が自停し、00時46分A受審人と甲板員が来援した僚船に移乗したのち、00時51分後志泊港灯台から221度2.3海里の地点において、浮力を喪失して船尾側から沈没した。
 当時、天候は晴で風力2の南東風が吹き、潮候はほぼ低潮時で、波高は0.5メートルであった。
 沈没の結果、かもめ丸は全損となった。 

(原因)
 本件沈没は、北海道岩内港において、発航準備を行う際、船底部プロペラ点検用のぞき窓の締め付け状況の確認が不十分で、発航後、同窓から浸水し、浮力を喪失したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、北海道岩内港において、発航準備を行う場合、航行中に舵機室の船底部プロペラ点検用のぞき窓のバタフライナットが緩み同窓が開くと浸水するおそれがあったから、同窓が開くことのないよう、同窓の締め付け状況の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、のぞき窓が開くことはあるまいと思い、同窓の締め付け状況の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、発航後、船体振動やプロペラ水流の影響等によりバタフライナットが緩んで同窓が開き、舵機室から隣接する船倉を経て機関室に浸水する事態を招き、浮力を喪失して沈没させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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