(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年7月1日08時19分
関門海峡西口
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船コリアン エキスプレス |
総トン数 |
3,953トン |
全長 |
106.34メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
3,353キロワット |
3 事実の経過
コリアン エキスプレスは、日本と大韓民国(以下「韓国」という。)間の貨物輸送に従事する船尾船橋型鋼製貨物船で、韓国国籍の船長B、首席二等航海士A指定海難関係人ほか同国国籍の10人及び中華人民共和国国籍の3人が乗り組み、コンテナ144個を載せ、船首5.1メートル船尾6.0メートルの喫水をもって、平成15年7月1日00時10分韓国釜山港を発し、関門海峡を経由する予定で広島港に向かった。
B船長は、船橋当直を、00時から04時及び12時から16時までを次席二等航海士、04時から08時及び16時から20時までを一等航海士、08時から12時及び20時から24時までをA指定海難関係人にそれぞれ入直させ、各直に甲板部員1人を補佐に付けた4時間3直制と定め、出入港、狭水道通峡及び船舶輻輳(ふくそう)時等には昇橋して操船の指揮を執ることとしていて、ナイトオーダーブックには、船長に対する昇橋の要請を躊躇(ちゅうちょ)しないように記載していた。
ところで、B船長は、蓋井島を左舷側に見て南東進し、六連島灯台の北北西約3海里の地点で右転したのち、六連島と藍島との間の水路を南下して関門海峡に向かう予定針路を使用海図に記載してあった上、六連島の北西方約1.5海里の地点で昇橋して、同海峡の操船に当たることとしていた。
A指定海難関係人は、前直の一等航海士から当直を引き継ぎ、08時00分大藻路岩灯標から324度(真方位、以下同じ。)4.5海里の地点で、針路を六連島灯台に向首する135度に定め、機関を回転数毎分175にかけ13.5ノットの速力(対地速力、以下同じ。)とし、自動操舵により進行した。
定針したとき、A指定海難関係人は、右舷後方に自船を追い越す態勢の同航船を認めたので、08時03分少し前大藻路岩灯標から325度3.9海里の地点に達したとき、同航船の船尾をかわすこととして、針路を150度に転じて続航した。
そして、08時08分A指定海難関係人は、前示同航船の船尾をかわし、大藻路岩灯標から323度2.7海里の地点に至ったとき、大藻路岩北西方約600メートルのところに拡延している沖ノトベタと称する浅礁に向首する状況となったが、レーダー映像の藍島を六連島と誤認したことから予定針路を航行していると思い、降雨によって視程が約1海里になったので、レーダーレンジの切替えや雨雪反射除去機能の調節などを行うことに気をとられ、GPS映像の地形と海図とを照合するなり、レーダーを活用するなりして船位の確認を十分に行わず、この状況に気付かなかった。
こうして、A指定海難関係人は、依然として船位を十分に確認しないまま、08時16分大藻路岩灯標から310度1.0海里の地点に達したとき、針路を135度に復して進行中、同時18分左舷船首至近に同灯標を視認し、急ぎ、左舵一杯を令したものの及ばず、08時19分大藻路岩灯標から307度640メートルの地点において、コリアンエキスプレスは、船首が090度を向いたとき、沖ノトベタに乗り揚げた。
当時、天候は雨で風はなく、潮候は上げ潮の中央期で視程は約1海里であった。
B船長は、衝撃を感じて直ちに昇橋し、乗揚を知って事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船首部船底外板に亀裂と破口を生じたが、サルベージ船によって離礁し、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、響灘を関門海峡西口に向けて南下中、自船を追い越す態勢の同航船の船尾を、針路を転じてかわした際、船位の確認が不十分で、大藻路岩北西方の沖ノトベタに向首進行したことによって発生したものである。
(指定海難関係人の所為)
A指定海難関係人が、響灘を関門海峡西口に向けて南下中、自船を追い越す態勢の同航船の船尾を、針路を転じてかわした際、GPSの映像の地形と海図を照合するなり、レーダーを活用するなりして船位の確認を十分に行わないまま、大藻路岩北西方の沖ノトベタに向首進行したことは、本件発生の原因となる。
A指定海難関係人に対しては、勧告するまでもない。
よって主文のとおり裁決する。