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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成15年長審第51号
件名

漁業取締船あまくさ乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年2月18日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(原 清澄、清重隆彦、寺戸和夫)

理事官
金城隆支

受審人
A 職名:あまくさ船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
両舷推進器翼に欠損及び曲損、左舷推進器軸等に曲損

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年4月10日23時10分
 熊本県本渡港
 
2 船舶の要目
船種船名 漁業取締船あまくさ
総トン数 19トン
全長 17.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,059キロワット

3 事実の経過
 あまくさは、船体中央部に自動操舵装置の設備を有しない操舵室を設けた、2機2軸の軽合金製漁業取締船で、一級小型船舶操縦士免許(昭和50年2月取得)を有するA受審人ほか4人が乗り組み、巡視の目的で、船首0.70メートル船尾1.10メートルの喫水をもって、平成15年4月10日20時30分熊本県三角港を発し、取締り海域である八代海に向かった。
 A受審人は、機関回転数を毎分1,840とし、24.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で南下し、熊本県津奈木湾北西方沖合から徐々に右転を始め、元ノ尻瀬戸を通る進路を採って巡視を行い、翌日の取締業務に備えて同県本渡港の大門で待機することとし、23時02分横島瀬戸を航過したのち、機関回転数を毎分1,500に下げ、速力を半速力前進の15.0ノットに減じ、本渡港に向けて航行を続けた。
 23時08分A受審人は、五色島灯標から153度(真方位、以下同じ。)1,280メートルの地点に達したとき、針路を350度に定め、原速力を保ったまま進行した。
 ところで、A受審人は、本渡港に南方から入港するにあたり、水域が狭く、浅所が多数あったから、速力を十分減じたり、前もって避険線を設定しておくこともせず、一瞥(いちべつ)したGPSプロッター画面上の自船の位置と五色島灯標からの目測の距離とで船位を見当付け、GPSプロッターを監視しているので大丈夫と思い、レーダーを活用するなどして船位を確認することなく続航した。
 あまくさは、A受審人が右舷方に存在する浅所に著しく接近する態勢となっていることに気付かず、原針路、原速力を保ったまま進行中、23時10分五色島灯標から119度480メートルの浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の東風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、月齢は8日であった。
 乗揚の結果、両舷推進器翼に欠損及び曲損を、左舷推進器軸等に曲損を生じたが、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、八代海から熊本県本渡港の大門に向けて北上中、船位の確認が不十分で、同港船場の西方に拡延した浅所に著しく接近したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、八代海から熊本県本渡港の大門に向けて北上する場合、浅所に著しく接近することのないよう、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、GPSプロッターを監視しているので大丈夫と思い、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、自船の船位が右偏して浅所に著しく接近する態勢となっていることに気付かず、原針路、原速力を保ったまま進行して乗揚を招き、両舷推進器翼及び左舷推進器軸などに欠損や曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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